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サッカークラブメイキング 〜ど素人社長、丸投げされる?〜  作者: 双鶴


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37/55

37話 慌ただしい準備

 大畑が正式に監督を引き受けた翌日。

 宇和島オレンジエクストリームは、

 初めての地域イベント──

 「サッカーを楽しむ会」の準備に追われていた。


 対象は小学生。

 クラブとして地域に開く“最初の一歩”だ。


「たけしさん、これボール何個必要ですか?」

 颯が倉庫から顔を出す。


「んー……二十個あれば十分か?」

「いや、三十はいるでしょ」

 直斗が即座にツッコむ。


「子どもって一個ずつ持ちたがるしな」

 慎が冷静に補足する。


 岳はメモ帳を見ながら、

 慌ただしく動き回っていた。


「ビブスは……小学生サイズが足りん!

 あとコーンも追加で……」


「たけしさん、落ち着いてください」

 大畑が静かに声をかけた。


「イベントは“楽しむ”ことが目的です。

 完璧である必要はありませんよ」


「いや、でも……

 初めての地域イベントですし……」


「だからこそ、

 “クラブの空気”を感じてもらうことが大事なんです」


 大畑は片付け途中のグラウンドを見渡した。


「子どもたちが笑って帰れば、それで成功です」


 岳は少し肩の力を抜いた。


「……そうですね」


 そのとき、三崎陽斗が声を上げた。


「岳さん、これ見てください!」


 陽斗が持ってきたのは、

 手書きの“ミニゲーム案”だった。


「ドリブル鬼ごっこ、

 パス回しリレー、

 あと……“キーパーに挑戦!”ってやつも考えました」


「キーパーに挑戦……?」


 岳が読み上げた瞬間、

 大畑がわずかに目を細めた。


「……面白いですね。

 子どもたちが楽しめる内容です」


 だが、その裏で──

 GKがいない現実が静かにのしかかる。


 慎がぽつりと言った。


「……キーパー役、どうします?」


 岳は固まった。


「……あ」


「たけしさん」

 大畑が静かに言う。


「イベントはイベント。

 しかし、GK問題は現実です」


 岳は深く頷いた。


「……分かってます。

 でも、まずはこのイベントを成功させます。

 地域に“クラブがある”って知ってもらうために」


 大畑は微笑んだ。


「それでいい。

 順番を間違えなければ、道は開けます」


 夕方。

 準備を終えたグラウンドには、

 コーンとミニゴールが並び、

 明日の賑わいを待っていた。


 岳は空を見上げた。


「よし……やるぞ。

 明日は、クラブの“初めての一歩”や」


 その声に、

 十一人の選手たちが力強く頷いた。


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