36話 突きつけられる現実
三崎陽斗が合格し、
宇和島オレンジエクストリームは十一人になった。
練習後のグラウンドで、
岳は抑えきれない笑みを浮かべていた。
「……揃った。
ついに、十一人揃ったぞ……!」
颯が笑う。
「たけしさん、めっちゃ嬉しそうですね」
「そりゃそうだろ。
十一人揃ったら、もう“チーム”やけん!」
慎も肩をすくめる。
「まあ、人数が揃うのは大事ですからね」
直斗はボールを抱えながら言った。
「これで練習も幅広がるな!」
岳は胸を張った。
「よし!
これで本格的に動き出せる!
練習試合も組めるし、戦術も──」
そのとき。
「たけしさん」
背後から大畑悠斗の声がした。
岳が振り向くと、
大畑は腕を組んでこちらを見ていた。
「……何か、問題でも?」
大畑は短く言った。
「揃っていませんよ」
「え?」
「十一人では“揃った”とは言いません」
岳はきょとんとした。
「いや、でも……
フィールドプレーヤーは──」
「たけしさん」
大畑は静かに言った。
「GKがいません」
岳は固まった。
「……あ」
「GKがいないチームは、
チームではありません」
大畑の声は淡々としていたが、
その言葉は重かった。
「シュート練習もできない。
守備の連動もできない。
試合も組めない。
何もできないんです」
岳は頭を抱えた。
「完全に……見落としてました……」
大畑は責めるような口調ではなかった。
ただ、現実を突きつけているだけだった。
「たけしさん。
あなたは“覚悟”を持つと言いましたね」
「……はい」
「ならば、現実から目を逸らしてはいけません。
クラブとして前に進むためには──
“最後の一人”が必要です」
岳は深く頷いた。
「……分かりました。
すぐに動きます。
GKトライアウトを開催します」
大畑は小さく頷いた。
「それが、クラブの次の一歩です」
夕陽の中、
岳の浮かれた気持ちは完全に消えていた。
代わりに胸に残ったのは──
責任の重さだった。




