34話 三崎の覚悟
オレンジエクストリームに監督と選手が続々加入
そんな噂は、宇和島をまだ賑わせていた。
「本気やな、あのクラブ」
「監督まで決まったんやって」
「追加で誰か入るらしいで」
その噂は、
ゆっくりと、しかし確実に──
三崎陽斗の耳にも届いた。
夕方。
旧三間中の裏手のベンチ。
陽斗は、
グラウンドから聞こえる声をじっと聞いていた。
「そこ半歩内側!」
「ナイス、今の判断いいよ!」
「切り替え早く!」
十人の選手たちが走り、
大畑の声が響く。
陽斗の胸が熱くなった。
「……すげぇな、みんな」
スマホには、
トライアウトの切り抜き動画が流れていた。
颯の突破。
慎の指示。
直斗の声。
そして──
大畑の鋭いコーチング。
陽斗は拳を握った。
──自分も、あの輪の中にいたかった。
だが、あの日。
応募ボタンを押せなかった。
怖かった。
挑んで落ちることが。
夢を追って傷つくことが。
逃げた。
その結果、残ったのは後悔だけだった。
「……俺は、何してんだよ」
そのとき──
グラウンドの中央で、
大畑が選手たちに言った。
「いいか。
“覚悟”があるやつだけが、ここに立てる」
陽斗の胸に、
その言葉が突き刺さった。
覚悟。
岳も、大畑も、
あの十人も持っているもの。
自分には、まだない。
だが──
逃げたままでは、
何も変わらない。
陽斗は立ち上げた。
足が震えても、前に出た。
フェンスを開け、
グラウンドの中央へ歩く。
大畑が気づき、振り向いた。
「……三崎?」
陽斗は深く頭を下げた。
「俺を……ここで挑戦させてください!」
大畑は静かに問う。
「理由は?」
「後悔したくないんです。
逃げた自分のままでいたくない。
ここで走りたい。
このチームで、サッカーがしたい!」
「覚悟はあるか」
「あります!」
「落ちるかもしれない」
「それでもやりたいです!」
大畑はゆっくりと頷いた。
「……分かった。
明日、個別審査をする」
「……はい。必ず来ます!」
陽斗の声は震えていたが、
その目は強かった。
夕陽の中、
三崎陽斗はついに一歩を踏み出した。




