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サッカークラブメイキング 〜ど素人社長、丸投げされる?〜  作者: 双鶴


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33/55

33話 揺れる三崎

 大畑悠斗が正式に監督に就任した──

 その知らせは、翌日には宇和島中に広がっていた。


「本気やな、あのクラブ」

「監督まで決まったんやって」

「動画見た? あの人、指導めっちゃ的確やったで」


 商店街でも、学校でも、会社でも。

 人々は自然とその話題を口にしていた。


 そして、噂はもう一つあった。


「十人も受かったらしい」

「まだ一人足りんらしいけどな」

「追加で誰か入るんちゃう?」


 その噂は、

 ゆっくりと、しかし確実に──

 三崎陽斗の耳にも届いた。


 夕方。

 旧三間中の裏手のベンチ。


 陽斗はスマホを握りしめたまま、

 動けずにいた。


 SNSには、

 トライアウトの動画が切り抜きで流れていた。


 颯の突破。

 慎の指示。

 直斗の声。

 そして──

 大畑の鋭いコーチング。


 陽斗の胸が締めつけられた。


「……すげぇな、みんな」


 グラウンドからは、

 選手たちの声が聞こえてくる。


「そこ半歩内側!」

「ナイス、今の判断いいよ!」

「切り替え早く!」


 陽斗は目を閉じた。


 ──自分も、あの輪の中にいたかった。


 だが、あの日。

 応募ボタンを押せなかった。


 怖かった。

 挑んで落ちることが。

 夢を追って傷つくことが。


 逃げた。

 その結果、残ったのは後悔だけだった。


 風が吹き、

 陽斗の髪を揺らした。


「……監督まで決まったのに、

 俺は何してんだよ」


 胸の奥が痛い。

 でも、足はまだ前に出ない。


 噂はさらに陽斗を追い詰める。


「あと一人、誰が入るんやろな」

「追加で受けるやつ、おるんかな」


 陽斗は顔を覆った。


「……俺のことじゃねぇよな」


 だが、心のどこかで分かっていた。


 ──自分が行かなきゃ、何も始まらない。


 夕陽が沈みかけるグラウンドを見つめながら、

 陽斗は小さくつぶやいた。


「……どうすりゃいいんだよ、俺」


 その声は、

 誰にも届かないほど弱かった。


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