表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サッカークラブメイキング 〜ど素人社長、丸投げされる?〜  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/55

28話 二次審査 判断の速さを見る



 一次審査が終わり、校庭には一度静けさが戻っていた。

 選手たちは水を飲み、膝に手をつきながら呼吸を整えている。

 だが、その目はまだ死んでいなかった。

 むしろ、次の審査を待つ光が宿っていた。


 観衆も帰らない。

 むしろ人数が増えていた。

 公開トライアウトという言葉が、街に広がり始めているのだろう。

 校庭の外には、腕を組んで見つめる大人たち、

 スマホを構える若者、

 そしてサッカー経験者らしい男たちの姿があった。


 岳は、その光景を見て胸が熱くなった。

 この街が、クラブの最初の一歩を見届けようとしている。


「たけしさん」


 大畑が歩いてきた。

 汗ひとつかいていない。

 一次審査を40分見続けたとは思えない落ち着きだった。


「二次審査に入ります。判断速度です」


「お願いします」


「ええ。ここからが本質です」


 大畑は校庭の中央へ歩き、選手たちを集めた。


「二次審査は、判断の速さを見ます。

 3対2、4対3の数的優位と劣位を繰り返します。

 ボールを持った瞬間に、選択肢を三つ以上持てるかどうか。

 迷ったら終わりです」


 選手たちの表情が引き締まる。


「宇和島商業の選手がサポートに入ります。

 彼らは普段から動きの質を意識している。

 その中で、どれだけ判断できるかを見ます」


 サポートの高校生たちが前に出た。

 緊張しながらも、誇らしげな顔をしている。


「では、始めます」


 大畑の声で、二次審査が動き出した。


 最初は3対2。

 攻撃側3人、守備側2人。

 攻撃側は数的優位をどう使うかが問われる。


 ボールが動く。

 パスが通る。

 だが、そこで終わりではない。

 次の動きが問われる。


 大畑は、選手の視線を見ていた。

 ボールを持つ前にどこを見ているか。

 味方の動きをどう捉えているか。

 守備のズレをどう感じているか。


 岳は、ただただ圧倒されていた。

 サッカーがこんなにも思考のスポーツだと、

 今日初めて実感していた。


 観衆も息を呑んでいた。

 ただのミニゲームではない。

 判断の速さが、目に見えて差となって現れる。


 ある選手は、ボールを持った瞬間に迷った。

 その一瞬の迷いで、守備が寄せてきてボールを奪われた。


 別の選手は、味方の動きを見ずに突っ込んだ。

 数的優位を活かせず、攻撃が止まった。


 逆に、ある選手は違った。

 ボールを受ける前に周囲を見ていた。

 味方の位置、守備のズレ、スペース。

 すべてを把握した上で、ワンタッチで展開した。


 観衆から小さなどよめきが起きた。


 大畑は、その選手をじっと見ていた。

 目の奥に、わずかな光が宿った。


 次は4対3。

 より複雑な判断が求められる。


 高校生サポート組が守備に入り、

 応募選手たちが攻撃を組み立てる。


 スピードが上がる。

 判断の速さが、さらに露骨に差となる。


 岳は、胸が締めつけられるような感覚を覚えていた。

 この17名の中に、

 クラブの未来を担う選手がいるかもしれない。

 その思いが、心臓を強く打たせた。


 大畑は、動かない。

 声も出さない。

 ただ、見ている。

 その姿は、嵐の中心に立つような静けさだった。


 やがて、大畑が手を挙げた。


「二次審査はここまでです」


 選手たちが一斉に止まる。

 肩で息をしながら、大畑の言葉を待つ。


「このあと、いよいよ三次審査に進みます。

 水分を取って、待機してください」


 校庭に静寂が落ちた。


 二次審査が終わった。

 判断速度という、最も残酷な審査が。


 そして、次はいよいよ三次審査だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ