64 忠誠 下
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
『お妃さま』という言葉に反応した騎士団員たちが、ライナスへ視線を向ける。
「(ミア、ワザと言っただろ。つっ~、本当に度胸がある奴だ。まぁ、今後もアリアの側仕えを任せるなら、これくらいの強者がちょうど良いのかも知れないが・・・。――――それよりもアリアがもうミアに妃の話を伝えていたことの方が気になる。最終的に無理強いしてしまったから、嫌がってなければいいのだが・・・)」
ライナスは周りにいる者たちをゆっくりと見回してから、口を開く。
「皇宮侍女ミアの発言は事実だ。私はアリアドネを妃にする。これは陛下の承諾も得ている決定事項だ」
陛下という言葉が出て来て、騎士団員たちの顔色が変わる。
「(皆、半信半疑だったのだろうが、私は事前にアリアを娶るつもりだと父上に打診し『アリア嬢が了承してくれたら可』という返事をもらっている。正直、私の過去の行いが悪かったせいで、父上のハードルが下がっていたのは幸運だった)」
ライナスは騎士団長のケヴィンを真っ直ぐに見据えた。彼も皇家の血を濃く引き継ぐ一人である。ハーネス公爵家の長男でライナスの左腕と言える存在だ。
腕を組んで仁王立ちしているケヴィンはライナスに向かって二回ほど大きく頷く。これは『(無事に話が進んで)良かったですね』という意味である。
「ミア、アリアドネに忠誠を誓うことを許す。私に付いてこい」
ライナスは馬車のある方へ向かって、斜面を登り始めた。今し方、そこを降りて来たばかりのミアは密かにため息を吐く。
♢♢♢♢♢♢♢
「はぁ、はぁ、はぁ・・・、殿下、はぁ・・・」
ミアは言葉が続かない。急斜面を登り切って息が上がっているからだ。一方、ライナスは涼しい顔で彼女を見降ろしている。
「化け物ですか・・・」
「いい加減にその軽口を控えろ。他の者に聞かれたら罰さないといけなくなる」
「誰も、いな、かったら、はぁ、はぁ・・・、いいんですか」
「それは別に構わない。というか、本当に大丈夫か!?」
「余計なお世話です。はぁ、はぁ・・・」
疲労困憊のミアは一先ず放っておいて、ライナスはアリアドネが乗っている馬車のドアをノックした。
「はい」
ライナスはアリアドネの返事と同時にドアを開く。
「えっ!?ライナス殿下」
(てっきりミアかと・・・)
毛布でグルグル巻きにされたアリアドネがライナスの目に入る。
「可愛い・・・」
「!!」
アリアドネは一瞬で耳まで真っ赤になってしまう。ライナスはステップを踏んで馬車へ乗り込んだ。
彼はアリアドネの前に跪き、彼女の手を取る。
「アリア、ひとつ頼みたいことがある」
「は、はい、何でしょうか?」
「ミアが君に忠誠を誓いたいそうだ。受けてくれないか?」
「忠誠!?」
ここでアリアドネは少しだけ身を乗り出して、ライナスの耳元へ囁き掛ける。
「――――これは何かの作戦ですか?」
ライナスは返事代わりに微笑む。
「分かりました。受けます」
ミアは息が整ったところでアリアドネに忠誠を誓った。そして、ライナスはその場でミアにアリアドネ専属侍女の任を与え、裸になった理由を説明したのである。
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