63 忠誠 中
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
騎士団は土砂崩れの全貌が見渡せる場所で、今後の補修方法について、同行した専門家の意見に耳を傾けていた。
馬車から間一髪で飛び降りた御者は少し離れた場所で、樹木の根元に背中を預けて座っている。彼の側には皇宮から駆けつけた騎士団所属の医師がいた。彼は険しい表情で御者の腕を確かめている。
診断の結果、御者は右足首の捻挫に加えて、右手首も骨折していた。医師は彼に『応急処置はしておくが、都へ戻ったら、すぐに手術をする必要がある』と告げた。
御者はうなだれる。そこまで酷いとは思ってなかったからだ。
そして、その横で、ライナスはミアに捕まっていた。
彼女は馬車を停めている場所(斜面の真ん中あたり)から、見ている方がハラハラとしてしまうような危ない足取りで、ライナスたちのところ(斜面の下の方)まで降りて来たのだ。
「ミア、どうしてその点(裸)にいつまでもこだわる?」
ライナスが『(裸になった)理由は答えられない』と突っぱねても、ミアは執拗に聞いて来る。
「(銀狼の件は国家機密だ。何度聞かれても、簡単に教えるわけにはいかない。しかし・・・、問題はミアが引き下がりそうにないということだ。これ以上、立ち向かってこられたら・・・、騎士団の目もあるだけに、罰を与えないといけなくなってしまう。あの時のように口に布を詰め込むわけにもいかないし・・・)」
―――遠巻きに様子を窺っている騎士団員たちは内心ヒヤヒヤしていた。
いつものライナスなら、もうキレていてもおかしくない状況だったからだ。
「分かった、どうしてもというのなら・・・。ミア、ここで忠誠を誓え」
ライナスは『皇家に命を捧げるほどの覚悟があるのか?』と、ミアに問う。
「(私に忠誠を誓えば、一介の侍女から皇太子専属の侍女に昇格したとして、銀狼の秘密も話してやれる。ミア、私の意図を汲み取ってくれ)」
「え、私が殿下に忠誠を誓うのですか!?」
『どうして、忠誠なんかが必要なのよ!?』と、ミアは手のひらをひたいに当てて、十秒ほど考える。そして・・・。
「嫌です」
彼女はキッパリと断った。
数名の騎士団員から『えっ!?』という声が漏れる。
「お前は・・・」
ライナスは呆れて言葉を失う。
「(助け舟のつもりだったのだが、見事に沈められてしまった・・・)」
一方、騎士たちは別の理由でシンと静まり返っていた。
―――ライナスから『忠誠を誓え』と求められることがどれくらい名誉なことなのか、皇帝に忠誠を誓っている騎士たちは知っているのだ。
ピリピリとした空気が漂い出す。
ミアは騎士たちの怒りを感じた。それでもミアはライナスのことを信用していないので、彼に忠誠を誓うつもりはない。
仕方なく、彼女は妥協案を申し出る。
「忠誠がどうしても必要というのなら、私はアリア様に誓います。殿下のお妃さまになられるのですから、忠誠を誓った侍女がいても問題ないですよね?」
最後まで読んで下さりありがとうございます。
面白いと思ったら評価、感想のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
ブックマーク登録もお忘れなく!!
誤字・脱字等ございましたらお知らせください。




