47 山道
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
シトシトと囁く雨。
ピートアイランド王国に続く山道は馬車が快適に走れるように、しっかりと整備されていた。景色を眺めているとアリアドネは以前、森で迷った時のことを考えてしまう。
(最初からこの道を通っていたら、どうなっていたのかしら・・・)
生家に見切りをつけ、夜も明けぬうちに赤ずきんを被って森へ入った。
ブリシア家の所在も知らず、ただ、ピートアイランド王国の王都へ行くという勢いだけで・・・。パンをひとつ買ったら消えてしまうくらいのお金しか持ってなかったというのに・・・。
(改めて考えると恐ろしく無謀な行動だったわ)
ところが、森で銀狼と遭遇したことで、アリアドネの運命は大きく変わった。
それからは嘘みたいにアリアドネを苦しめていたことが消えていったのである。
(でも、まさか実家の全員が犯罪に手を染めていて、一気に逮捕されるなんて・・・。もう何が何だか・・・)
アリアドネは父親や継母の思考を一生理解出来ないだろう。
妊婦のパシャを地下牢に入れた父の気持ちや、後妻に迎えられて復讐に目覚めた継母の心など・・・。双子の異母妹については、もう未知の・・・。
「アリア、大丈夫か?」
向かいの席から優しく語り掛かけられ、窓の外を見ていたアリアドネは声の主の方へ振り返る。
「はい、大丈夫です」
「それならいい。ジッと外を見つめているから心配になっただけだ」
「ご心配をおかけしてすみません」
アリアドネはまずお詫びを口にした。そして、外を見ていた理由を話す。
「森の景色を眺めていました。残念ながら本日は雨模様ですが・・・、樹々の間から柔らかな光と穏やかな雨が降り注いでいる様子が、とても美しくて」
ライナスは彼女の話を聞きながら、うんうんと頷く。
『いや、風景よりも、アリアの方が美しいけどな~』と、心の中で呟きながら・・・。
事実、ミアたちの手でいつも以上に着飾れているアリアドネは美しかった。
サラサラの金髪はハーフアップスタイルにして、サイドの部分は銀色のリボンを髪と一緒に編み込み、後ろには大きなピンク色のダリアを一輪飾っている。
皇宮で保護されたばかりの時は指先もガザガザだったが、今はすべすべだ。
―――触りたいなんて口にしたら嫌われてしまいそうな気がする。でも、触れていいなら、是非・・・。
♢♢♢♢♢♢♢
順調に馬車は進んでいた。
二人は黙って外を見ている。
「―――ライナス殿下、一つお願いがあるのですが・・・」
アリアドネはボソボソと小声で彼に話し掛けた。
しかし、路面の状況が悪いのか、馬車がガタガタ音を立てていて、彼女の声が上手く聞き取れない。
「ちょっといいか?」
彼は思い切ってアリアドネの隣に移動した。
(わ、わわわ! 殿下が・・・)
「向かいの席だとあなたの声がよく聞こえないんだ。申し訳ないがもう一度話してくれ」
「―――ライナス殿下にお願いがあります」
「ああ、どんなお願いだ?」
「殿下の部下の銀狼さんに大変お世話になったので、お礼を言いたいです。会わせていただけませんか?」
「―――伝言しておこうか?」
「出来れば・・・直接会いたいです。お礼も渡したいので!!」
アリアドネは譲らない。
御礼のバンダナ(銀狼の刺繍付)がついに完成したからである。
「お礼?」
ライナスは怪訝そうな顔でアリアドネを見つめた。
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