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赤ずきんを被って森へ入ったら、銀狼が助けてくれました(継母と双子の妹にはもう懲り懲り)  作者: 風野うた
第一章 クロ―シェ伯爵家のアリアドネ

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33 クロ―シェ伯爵の思惑 上

ここからは一昨日、アリアドネが家を出た後のクロ―シェ家のお話です。


どうぞお楽しみくださいませ!!

 早朝、クロ―シェ伯爵家の裏口から赤ずきんを被った女が出て行った。誰にも気づかれることなく。


♢♢♢♢♢♢♢♢


 クロ―シェ伯爵はこの日、とある金融組合から呼び出しを受け、午前八時に屋敷を出発した。


 後妻のマティルデはまだベッドの中にいる。彼女は朝が苦手なのだ。


 また双子の娘たちは昨夜、夜会が盛り上がったといって真夜中に帰って来た。年若い娘を遅くまで帰さない仲間などロクな奴らではないだろう。


―――そろそろ注意すべきか・・・。


「ハァ~~~~」


 彼は車窓を眺めながら、深いため息を吐く。


 間違いなく、この呼び出しは支払いの催促だ。


 クロ―シェ伯爵領はこの十数年、幾度も凶作に見舞われ、経済状況が非常に厳しい。それに加えて、妻と娘たちの散財・・・。


 マティルデは事あるごとに昔、一度捨てられたという恨み言をクロ―シェ伯爵に吐き、それを免罪符にして自分の好きなように生きている。ただ、悲しませてしまったのは事実なので、こればかりは仕方がない。


「それもこれも・・・」


 親の決めた妻、パシャは子を産んで、あっけなく死んだ。


 前妻のパシャは土属性の魔力を持っていたのだという。


 父(前クロ―シェ伯爵)は『彼女を娶れば大地が潤う』と大喜びで彼女を隣国から連れて来て、息子(クロ―シェ伯爵)と結婚させた。


 だが、パシャはすぐに死んだため、土属性の恩恵など何も感じていない。そして、パシャの後を追うように父(前クローシュ伯爵)も病で天に召された。


 本当に無駄な結婚だったとしか言えない。それにパシャの残したあの娘・・・。


「何の役にも立たない娘だ。結局のところ、あの子の魔力属性は何だったんだ? こんなことなら・・・」


 アリアドネが産まれた時、クロ―シェ伯爵は彼女の魔力測定をスルーした。その理由はアリアドネがパシャと同じ土属性を持っていたら・・・と警戒したからである。


 この国は岩場ばかりで、農地に適した土地が少ない。そのため、土壌の改良を得意とする土属性魔法の使い手はとても人気がある。


 土属性をもつ女の子が産まれた家門は、婚約者に迎えたいという打診を方々から受けることになるはずだ。その際、伯爵家よりも格上の貴族から声が掛かってしまえば、こちら側から断る事も出来ない。


―――アリアドネを他家に取られ、クロ―シェ伯爵領の実りが悪くなっては困る。


 結局、クロ―シェ伯爵はマティルデを説得し、アリアドネを屋敷に置いておくことにした。


 彼女が逃げてしまわないよう『隣国の祖父母のことを決して口にしてはならぬ』と使用人たちに念書まで書かせて・・・。


 ところが彼の目論見は見事に外れ、伯爵領の作物が豊かに実る日は訪れなかった。


「仕方がない。あの子には他の方法で役に立ってもらおう」


――――クロ―シェ伯爵を乗せた馬車はラース子爵の経営するヴァルチャー金融組合の車止めに停車した。

最後まで読んで下さりありがとうございます。

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