104 君がいいんだ
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
賢者ゴールのふたつ目の提案を聞き、アリアドネは素朴な疑問を持つ。
「時間を巻き戻しても、何も変わらないのではないでしょうか?」
(明け方、この建物の中で警備兵には出会わなかったし、もし、私が寝室から出なくても、あれだけの力を持っているフォリー嬢なら、向こうからこちらへ仕掛けて来そうだもの)
「あの時、私は執務室にいて、アリアのことを観察していなかった。だから、未然に防げといわれても、自信はない。但し、事前に事件が起こると分かっていたら、どんな手を使ってでも、フォリーを捕まえる」
「お二人とも、話を最後まで聞いて下さい。私が何の策もなく、時間だけ巻き戻すとお思いなのですか」
ゴールは少し拗ねた声だ。
見た目が大人になっている分、少し違和感がある。
「では、その策を聞いてから、判断をしよう」
ライナスはゴールに詳しい説明を求めた。
彼の目論見はこうだ。
先ず、ゴールはアリアドネに現在の記憶を保持するための魔法をかける。そして、アリアドネの力を使って、フォリーが皇宮に入り来んだ時間まで遡っていく。
ゴールの情報では皇宮へフォリーが入ったのは午前三時半過ぎ。また妖精の力を借りて、皇帝の張った結界に少し細工を施しているため、結界内の時間をいじっても他の地域に影響は出ないとのこと。
時間が止まったら、アリアドネはライナスのところに行って、これから起こることを彼に伝える。
―――というものだった。
話を聞き終えたライナスはアリアドネに告げる。
「三時半過ぎなら、まだ寝室に居る」
「分かりました。寝室に行きます」
「皇子、アリアドネ様に何か書いてお渡ししておいたらいいと思いますよ。一目で真実を言っていると信じられるようなものを……」
「ああ、それなら丁度いいものがある」
ライナスは懐から一通の手紙を出した。
「これは早朝に伝書鳥が運んできた手紙だ。アリア、これを私に渡してくれ。すぐ後に現れる伝書鳥の手紙と同じものだから、良い証拠になるだろう」
アリアドネはライナスから手紙を受け取る。
「ゴール、用意が出来たら、すぐに行おう」
「はい、承知いたしました」
賢者ゴールは必要な準備を整えて来るといって、部屋を後にした。
「アリア、本当なら、フォリーを逮捕して終わりなのに無理をさせてすまない」
ライナスは深々と頭を下げる。アリアドネは慌てて手を伸ばした。
「ライナス殿下、頭をあげて下さい!! アシュレイ様はライナス殿下にとって大切な御方です。それにライナス殿下は今まで私をずっと助けてくれたじゃないですか。これは小さな恩返しです」
アリアドネはニコッと微笑む。
(一人で森に入って倒れた時は皇宮で保護してくれたし、実家で酷い目にあっていたことを知って、解決してくれたし、無実の罪で牢に入れられた時は心配して見に来てくれて、甘いキャンディーもいただいて・・・。そして、殿下はいつも私の話を真剣に聞いて信じてくれた・・・)
「この事件が解決したら、ゴール様にもっと魔法の使い方を習いたいです。私も殿下をお助け出来るように・・・」
気持ちが高ぶって、アリアドネは鼻の奥がツンとした。
「美しく気高いフォリー嬢のようにはなれませんが、私もライナス殿下の隣に堂々と立ちたい・・・です」
頬を一筋の涙が伝っていく。
「アリア、君は誰よりも美しい。見た目だけではなく、心も・・・。君の命を奪おうとした者のことなど気にしなくていい。私は君がいいんだ! アリアだけが・・・」
ライナスはアリアドネの両頬を包み込んで、少し長い口づけをした。
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