外伝 勇者なんてお断りだっ!
大変遅れていまい申し訳ございません。ちょっとWi-Fiが死んでまして……。
勇者(笑)視点の話です。
「もうヤダ……」
勇者だから、優遇される。勇者だから、強いに違いない。勇者だから、難しい依頼もこなせるだろう。勇者だから、無償で人助けをしてくれる。勇者だから、パーティーに入れたい。
みんなして勇者勇者勇者勇者!ぼくは好きで勇者に選ばれたワケじゃないんだぞ!友達が勇者選定の儀を見ようっていうから付き合っただけで、ただ作物と家畜達と戯れていれば十分だったんだ。彼は「これって誰にでもチャンスがあるんだよねつまりオレが勇者かもしれねえってことだぞヤバくねヤバくね?」とかはしゃいでたけど、ぼくは優柔不断だし、勇者なんて興味無かった。
「勇者は、兎獣人の少女。アセベドの、セリア・パレンネーロ!前へ!」
「は?」
「何故にっ!?」
その瞬間の友達のドスの効いた声。裏切り者を見るような光の無い瞳。ああ、彼は友達でしかなくて、親友にはなれなかったんだ。そう、他人事のように思う自分が居た。壇上に上げられる自分を冷めた目で見下ろしているぼくがいる。
「―――」
何も考えたくなくて、ぼーっと見下ろして、そして、ぼくは愛想笑いと逃げることを覚えた。
「勇者様!?どちらに……」
誰も知らないような田舎でのんびりと暮らしたい。それなのに、ついてないことに、ぼくの存在は世界中に轟いていた。人助けも、依頼をこなすことも、勇者セリアという私である為の仕事でしかない。勇者セリアという仮面の下には、諦めて閉じこもる泣き虫なぼくがいるだけ。その仮面は、決して剥がれない筈で。それなのに、王都に来て、銀色の少女が目の前を横切った時。フードで顔を隠していた私……いや、ぼくは、何かが変わったような気がした。ギルドで初めて自分の本音が出た。
「あ、あの、ぼくは勇者にはなりませんから…」
「ありがとうございます!今日が締切なんですよ、この依頼。今日はもうみんな仕事しないかなと絶望してたんですよ!」
「ついでに薬草とか諸々の常設依頼進めときます」
「神ですか」
「大げさですよ。じゃあ行ってきまーす」
「はい、上位種には気をつけてくださいねー」
足早に去っていく銀色の少女が酷く目に焼き付いた。勇者に興味が無くて、ただ毎日を過ごしているだけの普通の人。あの子は、ひょっとしたらぼくを色眼鏡で見ないんじゃないだろうか?ぼくは他の人から見たら鑑定できない、つまりは強い。そう思われる。でも、ぼく自身も自分が鑑定できないから強さは関係ないんじゃないか?そしてぼくのことをあの子は鑑定できたんじゃないか?
あの子は、特別かもしれない。そう思うと何故か少し嬉しくなった。あれ?どんどん人が増えてきてる気がするんだけど、ギルドから出れるのかなあ?
「もうヤダーっ!!」
ぼくは人垣を突き抜けて飛び出した。
「あーさっきの人!助けてくだしゃいいいいいいい!」
ユキネ「時々アリエントさんのとは違う悪寒を感じる……」




