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ナナイロシチヘンゲ  作者: タイヘイタ
1章:生存権の確保
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肉を冷やし始めてからそれなりの時間が経った。幸いにも近くには何も来なかった。今日はもう戦いたくなかったから素直に嬉しい。


肉も十分に冷えただろう。木に戻るか。日はちょうど真上に来た所だが、食料が手に入った今、無闇に出歩く必要はない。


川から肉を引き上げる。来たときと同じように肉を背負った。水を吸った毛皮の感触を背中いっぱいに感じる。最悪だ。


なんとか我慢して歩き出す。明らかに足取りが重い。感触に萎えた事もあるが、単純に水を吸って重量が増えたからだ。


今誰かに襲われたら碌な抵抗も出来ないままに殺されるだろうな、ハハッ・・・笑い事じゃない。足を速めた。誰にも会いませんように・・・


俺の祈りが届いたのか無事に木へと帰ってきた。もう見えるだけでも実家のような安心感がある。そんなに過ごしていないけど。


木の洞に肉を放り込む。あ~重かった・・・肩を回しコリをほぐす。ついでに辺りを軽く見回す。近くに何かが潜んでいる事はなさそうだ。


洞の中に入った。ピチャ・・・足裏が濡れた。見ると洞の中に水溜まりが出来ていた。それもそうか。乾かさずに入れたんだから当然だ。


やってしまった物は仕方がない。肉を取り出し手頃な枝と幹の間に挟む。暫く観察して枝が折れないのを確認し、洞に溜まった水を掻き出す。


完全には掻き出せなかったが大きな水溜まりは無くなったから良しとする。これからはもう少し考えてから行動しよう。うん。


枝に挟んでいた肉に触ってみる。毛皮がしっとりとしているが、零れるほどの水分は含んでなさそうだ。


今度こそ肉を中に入れる。俺も入り狼になった。横になるのは躊躇われたが思い切って横になった。


毛皮から濃い獣臭が漂ってきた。急いで反対を向くがそんなに効果は無かった。この時ばかりは狼の嗅覚が恨めしい。


できるだけ鼻に意識がいかないように別の事を考える。それは今後の事だ。いつまでもこの森で過ごす訳にはいかない。


いくら木によってある程度の安全が確保できているとは言え、食料が安定して手に入らないのは問題だ。


ズバリ目標は森を抜け人里に行く事だ。最低限でも人間らしい暮らしがしたい。生肉をそのまま食べる生活は辛い。


この目標は達成できると思っている。その根拠は俺がさっきまでいた川だ。あの川はかなりの大きさをしていた。


あれ程の川があれば近くに国があってもおかしくは無い。むしろ無いとおかしい。地球でも大河の周辺で文明が栄えていたはずだ。


明日から人里を探しに遠出しよう。思い立ったが吉日。だけど今日はもう半日以上経っている。今から行動したってすぐに夜になる。


だから、明日から。決して問題を先送りにした訳では無い。それに戦闘で体力を使ったし、遠出できるまでには回復してないし・・・


誰に聞かせる訳でも無い言い訳を考える。こちらに来てからこういった事が増えたような気がする。誰とも話せなくて寂しいからなのだろうか。


意思疎通できる他人は想像以上に大切な存在だったのかもしれない。失って初めて気づくなんてこと本当に起こるんだな・・・

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