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日が完全に沈んでしまう前に何とかミウチビイ木に戻ってくることができた。人間に戻ってから気に近づいていく。
毎回あの嫌な感じを受けながら近づく必要はない。人間になればあの嫌な感じはないし。ただ、洞の中に入ると狼になった。
洞の中は寝転がれるとはいえ刀を振るえるほど広くはない。なら、寝るときは素の身体能力が高い狼になった方が安全だ。
目を閉じて今日あったことを思い出す。まずは朝の行動から。朝は刀について少しだけ考えてみた。刀は間違いなく命綱だ。
俺がこうして狼になれるのはこの刀のおかげなのだから。刀には直接触れてなくても手が届く範囲にあれば変化できる。
ただ、どういう訳か分からないが、倒した相手にはなれないようだ。この狼も元は成体だったにもかかわらず変化できたのは幼体だった。
恐らくはこの刀が登録できるのはその種族の根源なのだろう。やり直すたびに初期状態に戻る育成ゲームのようなものかもしれない。
刀についてはこんなところか。次にしたのは腹が減ったから何かを狩りに行ったんだ。そこで初めて狼以外を見つけた。
兎だ。あぁそうだ、ここでも刀について分かったことがあったんだ。刀で止めを刺す必要はないけど、刀に登録するためには死体を刺す必要がある。
死んでからどこまでの時間が有効なのかは検証がいるけど。刀で止めを刺さなくてもいいのはありがたい。
一瞬の気も抜けない状態でわざわざ人間に戻って刀を振るというのは避けたかった。狼では刀を満足に扱えないからな。
それで、兎を殺したとき唐突に頭の中に流れてきたアナウンス。≪観測の神≫と≪スキルの神≫によるもの。
誰が何を倒して、何を獲得したのかを教えてくれるのが≪観測の神≫、レベルが上がった時に3つの中から1つのスキルを習得させてくれる≪スキルの神≫。
初めて頭の中に流れてきたときは困惑した。アレが最初の狼の群れに襲われているときじゃなくて本当に良かった。
≪観測の神≫は敵を倒したときに色々と教えてくれるだけだが、こんな周りに誰もいない状況で自分以外の声が聞こえるだけでありがたい。
地球にいたころは何年も一人で暮らしていたし、誰とも話さない日があっても特に何も思わなかった。
けど、それは話そうと思えば誰かと話せる状況だったからだと分かった。まだ数えるほどしか≪観測の神≫の声を聴いていないけど。
で、≪スキルの神≫はというと、こっちはこっちで大切な存在だ。なんて言ったって生死に直結するから。
スキルが有るのと無いのとでは生存率は変わってくるだろう。ま、あくまでも想像だけど。今のところスキルの恩恵は感じられない。
最初に取った【噛みつき】も次に取った【回転】も活躍の場が来ないことには、どれほど効果を発揮してくれるのか分からない。
それは追々確かめていくとして、レベルアップで獲得できるスキルにも注意をしなければいけない。
スキルは3つの内から選ぶが、2つは種族由来で1つは習慣由来だということが分かっている。今後はどのように過ごすのかも考えないと。
今日は一日で沢山のことを知れたが、知らなければならないことはまだまだある。この地上に俺以外の人間はいるのか、とか、食料の安定化、とか。
不安なことは山ほどあり安心して過ごすにはまだまだ何もかもが不足している。今日は不安で眠れない。
と思ったが、日中に動き回ったせいなのか意識は暗闇に溶け込んでいった。




