フィデル 9歳
リリアナ 8歳と続いています。あちらを読んでからお読みください。
彼は代々騎士を輩出する名門一家の三男坊だった。
兄が二人いた彼は、幼い頃から頑張っても上には上がいる現実を噛みしめて育つ。
兄にお前の役目だと小突かれて、フィデルは部屋を飛び出したリリアナを追った。
ここは城の中で、入ってはいけないところがたくさんある。子供が一人で好きに歩いていい場所ではなかった。
なんでいつも僕なんだ。
わがままばかりでちっとも周りの言うことを聞かない二つ年下の妹が、彼は大嫌いだった。
自分は散々我慢しろと言われてきたことが、妹はリリアナはこれがいい!と言うだけで通るのだ。
言うことを聞かないのに怒られず、両親にも兄たちにもいつもかわいいかわいいと褒められる妹が彼は全く面白くなかった。
面白くないのに、年が近いことを理由に勝手に世話役を押し付けられて、尚更彼は彼女が嫌いになる。
どこ行ったんだ、あいつ。
全く見当たらない妹にイラつきながら曲がり角を曲がると、小柄な少女にぶつかった。
「すみません!」
赤毛の少女が自分の体に弾かれて床に尻もちをつく。
先ほど謁見したばかりの姿に、フィデルは息を呑んで凍りついた。
アイリーン皇女殿下!!
皇族にぶつかって弾きとばすなんていう無礼を働いてしまったことに彼が震えていると、アイリーンは心配する侍女を宥めながら立ち上がった。
「私も考え事をしていたから、ごめんなさい……あら? 貴方、オースウェル騎士団長の息子さん?」
こうして一対一で会うのは初めてなのに、皇女が自分のことを認識していることに、フィデルはとても驚いた。
「そ、うです」
「さっき、向こうに妹さんがいらっしゃったの。よかった、お兄様が迎えに来てくださったのね」
にこやかに少女は笑う。
「もしかして、迷子だったんじゃないかと心配になっていたところだったの。お迎えに来てくださるなんて、素敵な騎士のお兄様ね」
素敵な騎士のお兄様。その言葉はフィデルの心を貫いた。
帰り道、フィデルは誓った。
もう一度皇女殿下にお会いする時には、「もっと素敵な騎士のお兄様」になっていようと。
短くなってしまいましたすみません。
単細胞フィデルは単純でした笑




