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【完結保証】婚約辞退された皇女は冠を掴む【第2章開始】~繋ぎなおす。必ず~  作者: はるてん
学院入学編

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1章18話 きっとこれが恋、だったのに


 頷いて見せるアルバートに意図が伝わったと勘違いしたアイリーンは安堵した。

 アルバートに任せておけば安心だ、と肩の荷をおろして、紅茶が入ったティーカップを手に取る。

 優雅に一口飲んで、はたと思い出した。


「そういえば、リリアナとグレースを護衛に選んだのはアルバート様だと聞いたのですが」

「げふっ」


 貴族らしからぬ音が、プライベートサロンに響いた。


 口元を抑えるアルバートを、アイリーンは目の前で起こっていることを理解できずに

 見つめることしかできない。


 あのアルバート様が、むせた?


「あ、の……」

「失礼しました」


 居住まいを正したアルバートは、ちらりとアイリーンの背後に冷たい視線を向ける。


「そんなことを、話したのか」


 背後からくすくすと聞こえてくる笑い声が気になりながらもアイリーンは目の前のアルバートから視線を外せなかった。


「まいったな」


 前髪をかき上げるアルバートはアイリーンがこれまで見たことがないほど困った顔をしていた。

 視線は明後日の方向を向いていて、アイリーンを見ようともしない。

 なんとなく、耳が赤いような気もする。


「その、ですね。騎士団の大人に周りをうろつかれては、

 皇女殿下も落ち着いて学院生活が送れないだろうと思いまして」


 少しの沈黙の後にアルバートの口から出てきたのは言い訳だった。

 自分の執着が本人にばれるのはさすがに恥ずかしくて、考えつくまま口を動かす。


「学院自体がしっかり警備されておりますし、

 学院内の護衛が彼女たち二人だけでも、身辺警護に支障はないと考えております。

 陛下にも事前にご説明させていただき、承認をいただきました。

 過去にも護衛をご学友で固めて登校されていた皇族がいらっしゃったので、

 前例的にも問題はありません。

 選考落ちした派閥から少しばかり苦情がきておりますが、お気になさらないでください。

 機会は平等に設けておりました」


 アルバートはアイリーンから目を反らしながら早口で次々に言葉を重ねる。

 顔の前に添えられた手は落ち着きなく形を変える。

 その様子をアイリーンはじっと見つめていた。


 恥じている。

 あの、いつもそつなく、スマートなアルバート様が。

 耳を赤くして、視線をさまよわせて、恥じている。


 ぶわっと、アイリーンの中で感情が爆発する。


 なぜ? そんな。私なんかに恥じる必要ないのに。

 私の護衛選出はそんなに秘密裏に行われていたことだったのですか?

 私のためを思って行ってくれたことなのでしょう?

 それとも、なにか言えない別の理由でもあるのかしら?

 とにかくもう、なんなのですかその顔は!

 そんなお顔、物心ついた時からお会いしてきて私初めて見ました!

 恥じらうといつもより饒舌になるのも初めて知りました!!

 いつも澄ましていらっしゃるのに。


 ――そんな顔見せられたら!

 好きに! なってしまうでしょう!!!!


「アルバート様の采配のおかげで、私は楽しい学院生活を過ごせているのですね。

 ありがとうございます」


 暴れる心情を押し隠してアイリーンは優雅に微笑んだ。

 静かに紅茶を飲みながら、アルバートの様子を盗み見る。

 アルバートは一見、もう落ち着きを取り戻したように見えたが、

 襟元を直すその手先に少しせわしなさが残っていて、アイリーンの心は震えた。


「ゆっくりお話できて嬉しかったですわ。

 アルバート様、今日はお忙しいのにお時間をとってくださってありがとうございました」

「いえ。皇女殿下のお呼びであればいつでも駆けつけます。またぜひお呼びください」


 アイリーンが終わりをほのかに示唆すると、アルバートは調子を合わせた。

 もう少し普段と違うアルバートを見ていたい気持ちをぐっと抑えてアイリーンは立ち上がる。

 同じように立ち上がったアルバートを正面から見つめた。

 目が合うと紅い瞳にはまだ気まずさが残っているようで、

 少しばかり落ち着かない様子が見て取れた。


 初めて見る同世代らしい姿にアイリーンの胸が熱くなる。


 私、アルバート様が本当に好きだわ。

 かっこいいからだけじゃなくて、褒め言葉にほだされているからでもなくて。

 少しかっこ悪いところも含めて、アルバート様が好き。


 これまでで一番自信のある答えだった。





 アルバートはこれが最後のエスコートだと悟った。

 彼女の隣をあいつに渡すのであれば、これからは奴の仕事になる。

 考えるだけで内臓がひっくり返りそうだったが、自業自得の結果を受け入れるしかなかった。

 先ほどの気まずさがまだある中、廊下までの短い距離を、

 彼は最大級に丁寧に彼女をエスコートする。


「アルバート様、またいらしてくださいね」


 名残惜しさを感じながら、開いた扉の前でアイリーンは微笑む。

 アルバートも一礼して答えた。


 自分から離した手を、最後まで遠ざけねば。彼女を守るために。

 繋ぎなおす。必ず。

 だから今は。


「なにか気になることがございましたら遠慮なくお知らせください。

 アセンダント伯爵令息とのお話の場も、すぐに整えさせていただきます。

 彼であれば、アイリーン様をしっかりお守りしてくれるでしょう」



「は?」



きっとこれが恋ね。アイリーンはそう思ったはずです。

それなのに。

最後の最後、アルバート様が特大の地雷を踏み抜きました。


【第1章最終話:一番近くて、一番遠い人】

本日21:00頃に更新予定。


※【祝】ランキング入り!

5/4の[日間]異世界〔恋愛〕と総合のランキングに載せていただけたようです!

載せていただけるだけでもありがたいのに、かなり良い順位で、感謝感謝です。


続きが気になる!と思ってくださったら、下にある【☆☆☆☆☆】を色付きにしたり、

ブックマークで応援いただけると、執筆の大きな励みになります。


本日21時、第一章完結です。

よろしくお願いいたします。

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