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【完結済】完全記憶少女を拾ったら懐かれた件 ~EMPで文明が滅んだので、整備士の俺と終末で最強バディやってます~  作者: 寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
泥と実弾のアーク

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不燃ゴミの滑走路

夜襲は、ルークの警告のおかげで、間一髪で凌いだ。だが、燃料と弾薬は、じりじりと削られていた。


「補給が要るな」翌朝、モーリスが地図を睨んだ。「この先に旧世界の航空基地跡がある。運が良けりゃ、使える燃料か部品が残ってるかもしれん」


テクニカルは、その航空基地跡へと鋼鉄の巨体を運んだ。


滑走路には、無数の機影が墓標のように並んでいた。旧文明が誇った最新鋭のステルス戦闘機——F-35。かつては空の覇者だったはずの機体たちが、今はただ雨ざらしのまま朽ちていた。


「うわ……壮観だな」


俺は駆け寄って、1機のコクピットを覗き込んだ。滑らかな曲面。芸術品みたいだ。だが、計器盤は真っ黒に焼け焦げていた。


「電子基板、全滅だね」さぎりが、フードから顔を出して呟いた。「E1パルスが半導体を貫いた瞬間、この子たちは全部、ただの石になったの。FCSも、慣性航法も、エンジン制御も、ぜんぶコンピューター頼みだったから」


「じゃあ、これは……」


「動かないよ。永遠に。世界中の技術者が束になっても、この焼き切れたCPUは、もう二度と直せないの。設計図が完璧に残っててもね。微細化された半導体を作るには、EMPで焼ける前の巨大な工場が、まるごと必要だもん」


俺は機体の格納庫を漁って、使えそうな部品を探した。だが、めぼしいものは何もない。油圧系統もワイヤーも、この機体にはほとんど使われていなかった。全部、電気で動く設計だったのだ。


「くそ、掘り出し物ゼロか」俺は肩を落とした。「これだけデカい機体なのに、俺の手で直せる部分が1つもねえ」


「ぱーちゃんらしい感想だねっ」さぎりが、ふふっと笑った。「普通の人は、『この宝の山が使えないなんて』って思うのに」


「宝の山、ねえ。俺には鉄の墓場にしか見えねえよ」


俺は機体の翼を、そっと撫でた。冷たい複合素材の感触。


不思議な気分だった。俺が毎日いじってるじいさんの発電機は、50年前の骨董品だ。燃費は最悪で、始動には全体重をかけたクランクが要る。でも、ちゃんと動く。理由も原理も、全部この手で分かる。


なのに、こんなに美しく賢いはずのこの機体が、ここではただの不燃ゴミだ。


「皮肉なもんだな」俺は苦笑した。「賢すぎたやつから、先に死んでいく」


「……ぱーちゃん」さぎりが、いつもの明るさを消して、俺を見上げた。「あのね。さぎりも……旧時代の、賢すぎる遺物なの。頭の中身は、この滑走路のガラクタと同じ。誰かに『開けられる』ためだけに造られた、生きた記憶装置。……いつか、脳の容量が限界を超えて、動かなくなる日が来る。このF-35みたいに」


声が、少しだけ震えていた。強がりのフードの下から。


俺は少し考えて、それから、彼女の青い髪に、ぽんと手を置いた。


「バカ言え。お前は機械じゃねえよ」


「でも——」


「焼いた肉食って、ぼろぼろ泣くやつが、ストレージなわけあるか。栄養カプセルの方が合理的とか言っときながら、2本目に手ぇ伸ばすやつが、どこの世界に記憶装置だよ」


「っ……そ、それは……」


「それに、もし動かなくなったって、俺が直す。何度でもな。俺、そういうの得意なんだ。機械でも人間でも、諦めが悪いのが取り柄でな」


さぎりは、ぱくぱくと口を動かし、耳まで真っ赤になって、それから、ぽすっと俺の胸にフードごと顔を埋めた。


「……ばか。人の頭を、発電機扱いして……。でも」


「でも?」


「……ちょっとだけ、嬉しかったから。今の、いちばんいい場所に、保存しちゃった。えへへ」


俺はなんだかこそばゆくなって、頭を掻いた。


その束の間の柔らかな空気を、引き裂くように。


滑走路の彼方で、鈍い金属光がぎらりと閃いた。


さぎりの笑顔が凍りつく。彼女の完全記憶が、その影の輪郭を、大きさを、距離を、一瞬で照合した。


「……ぱーちゃん」彼女の声が掠れた。「あれ、追撃部隊じゃないよ。もっと大きい。24の車輪を持つ——移動する、要塞なの」

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