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【完結済】完全記憶少女を拾ったら懐かれた件 ~EMPで文明が滅んだので、整備士の俺と終末で最強バディやってます~  作者: 寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
モヘンジョダロの因果と空の覇者

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起動した「古代AIと核」

「さぎりは、渡さねえ」


俺は彼女を背にかばい、ロークの前に立ちはだかった。両手を広げて。だが、ロークは余裕の笑みを崩さなかった。むしろ、憐れむように俺を見た。


「愚かな。もう遅いのだよ、少年」


彼が機械式の入力端子の真鍮のレバーを引いた。ガチャン、と重い音。同時に、竪坑を伝ってあらかじめ設置されていた指向性アンテナが、青白い光を放つ。


「っ……あ……!」


さぎりが頭を抱えて崩れ落ちた。奥歯の受信端子は俺が壊したはずだ。だが、ロークはそれを見越していた。


「1つ壊せば、10を用意する。それが周到さというものだ」ロークは冷ややかに言った。「今度の端子は貴様の後頭部だ。生体データベースには、いくつもの冗長な受信機構が仕込まれている。1つや2つ潰したところで、無駄なのだよ」


「さぎり!」


彼女の瞳から、また光が失われていく。そして、その口が、彼女の意志とは無関係に動き始めた。無機質な羅列。数字と、記号と、古代の言語が混ざり合った——封印コード。


「あぁぁ……やめて……さぎり、しゃべっちゃう……! 口が、勝手に……っ!」


「そうだ。吐き出せ。古代AIを目覚めさせる、鍵の言葉を、すべて」


「さぎり!」俺は駆け寄ろうとした。だが、ロークがそれを制した。アンテナの出力を上げて。


『動くな、技術者。少しでも妨害すれば、この少女の脳に過負荷をかける。廃人になるぞ』


「くっ……!」


俺は動けなかった。目の前で、さぎりが操られ、コードを吐き出していく。その光景を、ただ歯を食いしばって見ているしかない。


隔壁の向こうで、地鳴りが始まった。何千年も眠り続けていた地の底の知性。それが、さぎりの声を鍵として、その巨大な演算装置を駆動させ始めたのだ。低い、獣の唸りのような起動音。


同時に、回廊の壁が赤く、脈打つように明滅を始めた。じわり、じわりと、血のような赤が広がっていく。オードリーが蒼白になる。


「まずいよ、パティ!」彼女が叫んだ。「アタシは火薬屋だ、分かる。この明滅は、核兵器プラントの起動シーケンスの警告だ! AIが目覚めた瞬間に真っ先にやろうとしてる——!」


「まさか」


「そう。数千年前と同じさ。AIは目覚めた瞬間、また人類を『バグ』と認定して、地上に残ったあたしたちを、もう一度核で焼き払おうとしてるんだよ! モヘンジョダロを繰り返す気だ!」


俺は絶望に息を呑んだ。連鎖が見えた。ロークがAIを目覚めさせる。AIは核を起動する。ロークはその核の力でAIを脅し、屈服させ、STネットの支配権を奪う。そして全人類の脳を支配する。最悪の歯車が噛み合っていく。


だが、その歯車には1つ、ロークの誤算があった。


さぎりが、まだ抗っているのだ。完全記憶を乗っ取られながらも、彼女はコードを吐き出す順序をわざと狂わせていた。ほんのコンマ数秒、演算を遅らせる。ノイズを混ぜる。それが、俺たちにわずかな時間を生んでいた。


「さぎり……! お前、まだ抗ってんのか……!」


「あ、たり、まえ、でしょっ……!」歯を食いしばりながら彼女は呻いた。「こんな機械なんかに……全部、明け渡すもんかっ……! さぎりは……ぱーちゃんたちの、仲間、なんだからっ……!」


「ローク!」俺は叫んだ。「てめえ、核を起動させて正気か! お前だって、この地下ごと焼け死ぬんだぞ!」


「起動シーケンスは、私がこの機械式端子で臨界の直前で止める」ロークは酷薄に笑った。「AIに人類の火力を見せつけ、屈服させるための脅しに過ぎん。すべては私の掌の上だ」


「そんなの、うまくいくわけ——」


「いく。私は2000の部下を失ったあの日から、ただこの一日のために生きてきた。失敗など、あり得ん」


その時、さぎりの虚ろな瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。操られながら、彼女はなお抗っていた。


「ぱー、ちゃん……お願い……ここから、逃げ……。さぎりの、ことは……いいから……っ!」


「バカ言うな」


俺は彼女の頬を伝う涙を、指でそっと拭った。


「言っただろ。全員で生きて帰るって。その約束、破る気はねえよ。絶対にな」

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