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【完結済】完全記憶少女を拾ったら懐かれた件 ~EMPで文明が滅んだので、整備士の俺と終末で最強バディやってます~  作者: 寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
モヘンジョダロの因果と空の覇者

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ローク大佐の野望

『来るがいい。だが、貴様らが辿り着く頃には、すべては終わっている』


ロークの声が、勝利を確信したように竪坑に木霊した。


俺たちは降下用のゴンドラに飛び乗った。錆びたワイヤーと手動ウインチだけの頼りない代物。だが、これしかない。ルークがブレーキを握り、ゴンドラは地の底へゆっくり降りていく。


降下しながら、さぎりが蒼白な顔で呟いた。こめかみを押さえて。


「……分かった。ロークの本当の狙いが。今、彼がさぎりの記憶に干渉した瞬間に、意図の全体像が流れ込んできたの」


「なんだ?」


「彼はただ世界を支配したいんじゃない。もっと根本的で、恐ろしいことをしようとしてる」


彼女はぶるりと身を震わせた。


「ロークは、さぎりの完全記憶を使って、地下のAIを——『手動入力端子』で無理やり屈服させようとしてるの。物理的なケーブルで、AIの中枢に直接接続して」


「屈服? AIを?」


「そう。ロークは、AIを破壊するんじゃない。AIを『支配』するの。人間の脳に手を出せる唯一の強大な力。それを自分の道具にする」


俺はぞっとした。背筋が凍る。


「AIの演算能力と、STネットへの侵入能力。それをローク自身が握る。そうすれば彼は、生き残った全人類の脳に直接命令を書き込める。『機械に絶対服従せよ』と。『二度と電子を信じるな』と。『二度と争うな』と」


「そんな……それじゃ、AIがやろうとしたことと——」


「同じだよ」さぎりが俯いた。「全人類の脳の支配。ただ支配者がAIからロークに変わるだけ。彼はそれを『平和』と呼んでる。誰もが機械式の絶対的な秩序に従い、二度と裏切らず、二度と争わない世界。……歪んだ理想郷なの」


俺はゴンドラの錆びたワイヤーを見つめた。頼りない。でも、俺たちの体重を支えている。


「皮肉な話だな」俺は呟いた。「ロークの言う『アナログの尊厳』ってのは、本当なら、このワイヤーみたいなもんだ。頼りなくて、不完全で、でも人の手で信じて支え合える。なのにあいつは、それを『絶対的な支配』に履き違えちまった」


「そうだね」さぎりが頷いた。「彼は一番大事なことを見失ったの。アナログの心は、支配じゃなくて信頼、なのに」


「だったら」俺はゴンドラの底を踏みしめた。「俺たちが見せてやる。本物のアナログってやつを。信じ合う方の、な」


「ぱーちゃん」さぎりが、俺の袖をきゅっと握った。「もし、さぎりがまた操られたら」


「させねえ」


「もし、それでもさぎりがコードを全部吐き出しそうになったら——」


「さぎり」


「その時は、迷わないで。さぎりを——」


「言うな」


俺は彼女の口を、手でそっと塞いだ。彼女の覚悟を遮るように。ちいさな唇の感触が、手のひらに伝わる。震えている。


「その続きは聞かねえ。絶対にな」


「……んっ」


さぎりが、俺の手をそっと外した。潤んだ瞳で俺を見上げて。


「……でも、もし本当にどうしようもなくなったら」


「ならねえ」俺はきっぱり言った。「なるわけねえだろ。俺がここにいるんだから。お前がコードを吐き出しそうになったら、俺が何があっても止めてやる。その受信端子、何個あろうと全部ぶっ壊してやる。整備工を舐めるなよ」


さぎりが、ふ、と泣きそうな顔で笑った。


「……頼もしいね、ほんと」


「だろ? もっと頼れよ」


ゴンドラが、ごとん、と地の底に着いた。長い降下の果てに。


目の前に広がっていたのは——鈍く青白く光る、ガラスの回廊だった。俺たちの歪んだ影を、無数に映し出す。静寂の迷宮が。

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