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まさかの再会

 俺たちはコボルトジェネラルを引き連れて外へと出た。

 移動手段は徒歩。


 いくらコボルトジェネラルとはいえどもさすがに車の速度にはついてこれないだろうという優しい優しい配慮だ。


 肩を震わせるコボルトジェネラルを更に威圧していなければ……の話だろうが。


 歩いていると時折チラチラと視線を向けてくるのが鬱陶しいが個体としての性能はいいので雑魚散らしには丁度いい。


 二時間ほど歩いていると街並みは様変わりして薄暗い路地裏に入っていく。

 烏が食い荒らしたのかゴミが散乱し、目につく範囲に数人分の死体がゴロゴロと転がっている。


 あまり長く居たい場所ではないが、コボルトジェネラルは躊躇もなくずんずん奥へと進んでいく。


 そしてその足を止めたのは一軒の雑居ビル。

 なんてことない普通の建物だが……


 いったいどんな奴が待っているのか。


 少しばかりの緊張を胸に侵入。

 勿論、先頭はコボルトジェネラル。


 何か罠でも仕掛けられていたりでもしたらたまったものではないからな。

 そんな俺たちの思惑も徒労に終わりとある一室の前まで辿り着いた。


 扉の向こうからは複数の人の気配。

 うっすらと会話の音が聞こえてくる。


 けどこれは――


「この声、聞いたことがある」


 そして数瞬の逡巡の末、該当。

 声の主に思い至った。


「……そうか……あんただったか……なら、ちょうどいい」


 もうこの時点で俺の理性は蒸発。

 迷いも恐れも緊張もない。

 あるのは燃え滾る復讐の炎のみ。


「ウラァァ!!」


 気合の入った声と共に薄いアルミ製の扉を銀気を纏わせた拳でぶち破る。


 吹き飛んだ扉が派手に音を立て、中にいた野郎どもは慌てふためく。


 俺の視界は捉えた。

 十人ほどのガラの悪い筋骨隆々な黒服を着用した男たち。

 そしてその奥。

 一際大きい椅子に足を組んでふん反り返る中年の男とそれに身を擦り寄せる女。


「よぉ、久しぶりだな……粗大ゴミども」


 空気が……凍った。


「あ、あんた……」


 女が口を開く。

 瞳孔は開き、口をパクパクと動かしながらその震える声が鼓膜を揺らした。


「口を開くな……空気が穢れる」


 冷たい眼光。

 冷たい口調。

 それが俺の拒絶の意思を如実に表す。


「お前……新、か?」


「だとしたら、なんだ」


 俺がこいつらにどう思われていようと構わない。

 ただ俺は……殺すのみ。


「あの……先輩、この人たちは?」


 背後から声。

 凛とした耳に残る声。

 ああ、鈴華か……


「こいつらは……」


「この子の親だよ、お嬢さん」


 俺の声を遮ってニコリと微笑みかける男、もといクソオヤジ。

 因みにその横で固まっている女は一応母親、というものに分類される。


「なっ……!」


 臨戦態勢をとる鈴華と綾辻。


 同時に向こう側のカタギじゃなさそうな男たちも身構える……のだが。


「そこにいる奴らも見覚えがあるな……」


 黒服の男たち。

 その中の数人の顔が俺の頭の中に記憶されている。


「闇金業者の奴ら……のはず、だったな。なんでこいつらとここにいる」


 いや、正確にはマフィアの一員だったか?

 どっちにしても謎だ。


 見た限りではクソオヤジがこの中で一番権力が強いように見受けられた。


 恐らくは強力なスキルを所持しているか単純にレベルが高いのか……単純に力があるのだろう。


「ふふっ……彼らの組は魔物の群れに壊滅させられてね。僕が彼らの主人となる代わりに助けてあげたんだよ」


 物腰柔らかな雰囲気。

 今までのこの男からは考えられないくらい余裕がある。

 しかも……敵意を、感じない?


「ふん……そうかよ。けどそれも無駄になるな。お前たちは、俺が殺す」


 魔刀を抜刀。

 銀気をその体に纏わせ威勢良く啖呵をきる。


 が、しかし――


「新……今まで本当に済まなかった。これでも、反省しているんだ。僕も彼女も、お前を一杯傷つけてしまったと……後悔している」


 哀しげに目を伏せ、目には涙が溜まっている。


 ――まさか、本当に?


 そんなことを一瞬でも思ってしまったのが間違いだった。


「なんて、言うと思ったかよぉ!!」


 今まで全く感じなかった敵意が膨れ上がる。


 不意をつかれた。


 黒服の男たちが一斉に襲いかかる。


「ちっ! やっぱりテメェらは粗大ゴミだよ!」


『鑑識眼』で瞬時に戦力を解析。

 黒服たちに俺らの脅威になるようなステータスを持つ者はいない。


「はっ!」


 銀気を腕に集中。

 魔刀を振る……おうとしたところで体に違和感。


「お……もい!?」


 体に何十キロ、いや何百キロもの重りをつけられたような感覚。


「どうだ。これが僕の魔法『重力魔法』の力だ! 凄いだろう!!」


 変わらず椅子の上でふんぞり返りながら高笑いするクソオヤジ。

 胸の中からフツフツとマグマのような憎しみが、恨みが再び湧き出る。


 憎しみを原動力に体を地面に縫い付けてくる超重力に逆らう。


「し……ね、クソが!」




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