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違和感

「……きったなっ!」


 玄関を開けて最初に出た言葉がこれだ。


 あの地震が起きた日。

 俺はいつものように家を掃除してから出たはずだった。

 家の外見は見ての通り元々汚いものだ、しかしながら自身の生活空間である家の中は清潔な状態を保てるようにしていた。


 それが、今はどうだ。

 数日ぶりに家に入るとまず目に入ったのが散乱したゴミの数々。

 玄関は泥で塗れ、廊下にはいたるところに服が脱ぎ散らかっている汚部屋と化しているではないか。


 更に恐る恐る覗いたリビングはそれの比ではなかった。

 食い散らかしてそのままの冷凍食品にカップラーメンの残骸。

 汚れた皿は一切洗われることなく放置。


 何かを作ろうとしたのだろう、台所にあった謎の物体は腐っているのか異臭を放っている。


「これは……酷いですね」


 と鈴華が苦言を呈してしまうのも無理はない。

 物心ついてから親が家事をしている姿はあまり見たことはなかったが、まさかここまで何もできないとは思ってもいなかった。


「まあ、それもそうなんだが……このゴミの量を見る限り最近まではこの家は使われてたみたいだな」


「じゃあ……今は?」


「……どう、だろう。物の形跡を見る限りではここ数日は帰ってきてないみたいだからもしかしたら別の場所に移動したのかもしれないな」


 散らかった部屋を掃除しながら受け答える。

 そして、違和感を感じ取る。


「何か、おかしい」


 そこらへんに脱ぎ散らかった服は見慣れない物が多数。両親二人では食べきれない量の食料。そして――


「なんでこんなものが、この家にあるんだ?」


 普通考えられないような高級品がゴミに紛れてそこら中に転がっている。

 どれもこれも貧乏人の俺でも知っているような有名ブランドのもの。

 だが、家にそんな金はなかったはず。


「せ、先輩っ! これ見てください、これ!」


 鈴華の慌てた声。

 何事か、と振り向くと何やらその手には金色に輝く物体が。


「これ……金塊ですよ!」


 金塊。金の塊。

 は……なんで?

 いや、偽物だろう。

 そう思って『鑑識眼』を発動。

 結果として出たのは本物だ、という判定結果のみ。


「どう、なってるんだ?」


 脳内が疑問で埋め尽くされる。

 鈴華は本物の金塊を見てテンションが上がっているが、ぶっちゃけ今金の塊に大した価値はない。

 そんなものより武器でも売った方が儲けられるだろう。


 頭を必死で回転。

 思考していると背後から足音。


 俺たちしかいないはずの家の中から、だ。


 素早く陣形を整える。

 前衛を鈴華、俺はそれに続くように中衛へ。そして後衛には綾辻。

 各々剣に、刀に、銃に手をかける。


 しかし、姿が見えない。

 どこかに隠れている?


 なら、どこに?

『集中』まで使って神経を尖らせる。


「そこかっ!」


 手を翳し、[闇弾]を射出。

 リビングからは死角となる廊下。

 そこから微かに視線を感じた。


 しかしこれは――


「コボルト、それもジェネラルじゃねぇか」


 二本足で立つ人型の獣の魔物、コボルト。

 それの上位種。


 ガッチリとした体格に鋭い眼光。その手には二振りの短剣。


 数日前までは苦戦した相手ではある、が。

 それも過去の話。


 余裕の表情で姿を見せたコボルトジェネラルに間髪容れず[雷槍]を放つ。

 バチバチと雷光で構築された大槍が一直線に飛来する。


 ジェネラルの余裕は一変、慌てて回避行動に移る。

 が、高速で放たれた[雷槍]を完全に躱すことはできずに左手が抉り取られた。

 幸いにも雷の高熱で傷口が焼かれ、出血による失血死はなさそうだが、戦力は大幅に減少したことだろう。


 しかも見た限り、仲間はいない。


 グルル、と唸りながらも腰が引けてしまっているのが見て取れた。


 だが、撤退の意思は見せない。


 なぜだと首を捻っていると鈴華から声がかかる。


「先輩……あれ、あの首に着いてるのって……」


 首? そう思ってよく目を凝らすとジェネラルの首には黒い、無骨な首輪。


 それはついさっき見た記憶のあるそれだった。


「……隷属の首輪」


 犯人は俺たちはよっぽど殺したいらしい。

 でも――


「こいつくらいじゃあ俺たちは殺せねぇぞ」


 殺害対象の追加だ。


「テメェもついでに……殺してやるよ」


 親への復讐。

 そのついでに、舐めた真似してくれたこのコボルトジェネラルの主人も――殺してやる。


「その前に」


 俺は鈴華と綾辻を下がらせる。

 こいつ一匹くらいなら俺一人で充分。


 それに、いい案を思いついた。


『王者の威圧』

 コボルトキングから奪取したこのスキルを使う。


 元々軽く恐慌状態に陥っていたジェネラルは直ぐに膝をついて動きを止めた。

 でも死んだわけじゃない。


 この内に首輪を取り外し、隷属状態から解放。


 そんでもって、またもう一度首輪を俺の手で着けてやる。

 これでコボルトジェネラルは俺の奴隷になったわけだ。


「さあ、起きろ」


 震えるコボルトジェネラルに[収納]から水をぶちまける。

 家は汚れるが、今更気にしない。

 もうここを訪れるつもりもないしな。


 怯えながらも俺の命令に忠実に従う。

 そして重ねて命令を。


「お前の前の主人のところまで俺たちを案内しろ」


今月25日に新作小説を投稿しようと思います。

よかったら見て頂けると嬉しいです。

もしかしたらいつものように0時00分にとはいかないかもしれませんが25日中には投稿するつもりです。

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