獣の軍勢②
《固有スキル:『復讐』が発動しました。対象から一つスキルを奪取できます。選択してください》
奪取可能スキル一覧
固有スキル
スキル
『痛覚倍加』Lv.3
『噛みつき』Lv.3
『爪撃』Lv.2
魔法
――
勿論、簒奪対象は『痛覚倍加』。
選択までの間は一瞬。
止まっている暇は無い。
今も俺の右側面からウォーウルフがぎらりと鋭い牙を光らせて襲いかかってきている。
「疾っ!」
右手に持った黒刀を遠心力でもって加速。
その喉笛に刀傷をつくる。
手応えはない。
浅く切っただけで致命傷とは成り得ない程度。
だが、怯ませるのには充分だった。
引け腰になったウォーウルフに追撃をかける。
腕に銀気を集める。
強化されたその豪腕を袈裟懸けに振り下ろす。
血が舞い、獣の悲鳴が虚空に消える。
次から次へと絶え間なく襲いかかるウォーウルフたちを捌きながら標的――ポイズンウルフを探す。
が――
「いない?」
その姿は見つからず。
ならどこに?
首を振って周囲を見渡す。
勿論この間、ウォーウルフたちへの対処も忘れない。
背後から突然の衝撃。
思わずたたらを踏む。
なんとか体勢を立て直して体を反転。
視界にその衝撃の正体を収める。
そこにいたのは毒々しい紫色の体毛を靡かせた一匹の狼。
大きさは成人男性並み。
牙を伝ってコンクリートの地面へと滴り落ちた唾液はジュッという音とともに蒸発。
溶解毒、といったところだろうか。
なるほどポイズンウルフとはよく言ったものだ。
――標的を捉えた。
そしてさっきの攻撃。
これで攻撃は受けたことに入るだろう。
条件は達成。
あとは殺すのみ。
なれば行動は迅速に。
身構えるポイズンウルフにしかし俺は余裕の表情で対面する。
身に纏う銀のオーラが激しさを増す。
刀を正眼に構え、切れかかっていた[帯電]の魔法をかけ直す。
両者ともに油断はなし。
場を静寂が支配。
先にそれを破ったのは相手方――ポイズンウルフ。
大口を開き、咆哮を轟かせるそいつに素早く左手を突きつけ、詠唱する。
「[闇弾]」
彼我の距離はそう離れているわけではない。
しかしながら、接近して刀で斬るよりも魔法を使った方が早い。
開かれた口内目掛けて放たれた[闇弾]はしかし、すんでのところで躱された。
だが意表はついた。
戸惑いと驚きがその顔面を埋め尽くしているのが見て取れる。
予想外の攻撃に対処しきれていない。
アドリブに弱いタイプか?
なら――
「これなら避けられないだろう? ――[闇弾]!」
動作は同じ。
けれどその数が違う。
四発。
逃げ道を塞ぐように放たれた闇で構成された四つの弾丸がポイズンウルフに迫る。
一つ目。
余裕を持って見切られる。
二つ目。
これも身軽な動作でステップ。躱される。
三つ目。
目で動きは追えてはいたようだが、体が思考に付いて行けずにその右前脚に直撃。
脚が縺れ、バランスを崩す。
四つ目。
チェックメイトだ。
闇の弾丸がその脳天を貫いた。
《固有スキル:『復讐』が発動しました。対象から一つスキルを奪取できます。選択してください》
奪取可能スキル一覧
固有スキル
スキル
『毒性体』Lv.5
『咆哮』Lv.2
魔法
――
予定通り『毒性体』のスキルを奪取するとすぐさま駆ける。
さっき横目で見た時、数十のコボルトが鈴華を襲っていた。
彼女のステータスでコボルト程度にそう簡単に負けるとは思えないし時折聞こえる銃音から綾辻の援護もあるというのはわかっているが、あれは数的不利が過ぎる。
見れば今も四方を囲まれている中、剣一本でなんとかしている状況だ。まだ余力はありそうだが最初と比べるとだいぶ動きが鈍り始めている。
さあ、俺も参戦。といきたいところだが、俺の技量じゃあ鈴華の邪魔をするだけだろうと即座に判断。
接近戦から魔法メインの遠距離支援にシフトチェンジ。
魔力の貯蔵は充分。
魔刀を鞘に納刀。
刀の代わりに右手を前方に突き出す。
まずは数を減らそうか。
「[影鞭]!」
俺の声に呼応して影が鞭を象り、コボルトの群れを薙ぎ払う。
だがまだまだ足りない。
もう一度、[影鞭]を発動。
数匹のコボルトをコンクリートの床に叩きつける。
グシャッと肉が潰れる音がするが、気にしない。
ゴミが減り、大分視界が開けてきた。
鈴華も俺の加勢に気づいて剣を振るうペースが上がる。
コボルトの死体を踏みつけながら前進。
更に魔法で追い討ちをかける。
[影縛]で行動を抑制。
[闇弾]で牽制、又は留目を。
時たま[加速]、[遅延]で鈴華を援護。
そうして数分。
いや、数十分ほどが経った頃この場で地に脚を着き、立っているのは俺たちだけだった。




