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黒乃 新の復讐劇④

 俺が下した命令。

 それは正常な人間であれば本来は嫌悪、忌避するものであることに間違いはない。


 だがしかし――


「はい。承知致しました」


 それは[暗示]によって改変された思考を持つこいつらには関係のないことだ。


 無機質な声が鼓膜を揺らし、返事からの行動は早かった。


 一歩。

 北島が足を踏み出すと一文字は恐怖で硬直した下半身を縺れさせ、尻餅をついた。


 無様に、下品に情けなく必死で足を動かす一文字。


 もう逃げ場はない。


 そんな考えは頭に浮かぶこともないのだろう。


 生きるために、死なないために。

 種としての生存本能が彼を動かす。


 無駄な足掻きだというのにもかかわらず。


「まずは指だ。一本一本、味わって食べるんだ」


 俺の声に呼応した北島の手が、逃げ惑う一文字の手を掴む。


「や、やめ、やめろぉぉぉ!!」


 絶叫。

 平時であれば有用であったはずの人寄せ手段はこの現状では使い物にはならない。


「お願っ、や、やめ……ぎゃ、ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 容赦なく噛み付く北島。

 それを髪を掴んで引き剥がそうと苦心する一文字。


 滑稽。

 実に滑稽だ。


 表情一つ変えずに人差し指に歯を立てる北島とは対照的に額には大粒の汗、顔面は蒼白に変色してボロボロと涙を流す一文字を見ると身体中に爽快感が広がっていくのが感じられる。


「ふふっ」


 思わず笑みがこぼれる。

 狂気的な笑み。


 狂った笑みをチラリと一瞬視界に入れた一文字の顔が目に見えて青さを増す。


「もう……やめ」


 ぐちゃぐちゃになった汚い顔で懇願する。


 しかして俺は命ずる。


「……噛みちぎれ」


 ごりゅっという音と共に一文字の右の人差し指。

 その付け根から鮮血が溢れ出る。


 北島は俺の命を忠実に果たしてみせた。

 彼女の口には現在一本の人差し指が。


「食え」


 加えて命じる。

 そして北島は一変の感情の起伏も見せることなくそれを遂行する。


「あ……ぁぁ、お、俺の指……がぁ」


 咽び泣く声。

 限りなく鬱陶しい雑音が鼻に付く。

 さっきまでの爽快感が全て不快感へと変換される。


「次は……あぁ、やっぱり一本ずつは面倒だな。……もういいや」


 はぁ、と一つ溜息を吐く俺に一文字は勢いよく顔を上げる。

 そこには満面の安堵。


 だが、それも儚く崩れ去る。


「稲垣と……そこと、そこと……あとそこのやつもこっちに来い――一緒にお食事と行こうか」


 稲垣は勿論として俺が招集したのは比較的一文字と仲が良かったと記憶している生徒たち。


 北島も入れて5人。


 これで――


「一人二本は食べられるな。さあ、遠慮はいらない。存分に――喰らえ」


 一気に殺到する五人の少年少女ら。


 みんながみんな競い合うように一文字の指に食らいつく。


 空いた手で各々体を押さえつけられて、一文字は遂に完全に身動きを封じられた。


 一人の少女は右腕を掴んで、右の親指に噛り付いた。

 一人の少年は胴に袴って右の中指に歯を立てた。

 一人の少年は肩を抑えて左の小指を噛みちぎった。

 北島はべっとりと血に染まった口を大きく開けて右薬指を咥え、稲垣は右の小指に口をつけた。


 一人一人好き勝手に喰らっていく。

 一本づつ、指が無くなっていく。


 右手の指が無くなった。


 恐怖と痛みで塗れた一文字は絶望でその顔を埋め尽くされていた。


 嗚咽と悲鳴。

 血に濡れた床に一人、一文字が倒れ伏す。


「う……ぁ……あぁ……も、やめでぇ……ぐれぇ」


 ぐちゃぐちゃ、くちゃくちゃと咀嚼音が部屋中を包み込み、支配する。


 静止の懇願も意味はない。


 彼ら彼女らは俺の命令に機械的に従う下僕。

 何を言おうと無意味。


 時折聞こえるバリボリ、ゴリゴリという音は骨を噛む音だろうか。


 噛み砕けるわけもないので止めさせる。


 さあ、休んでいる暇はないぞ。

 残りの指も美味しく頂くといい。


 残りは四本。


 ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ。

 ただただ血肉を貪る。


 もう一文字は言葉も発してはいなかった。


 放心状態。


 ショック死、とはならなかったようで安心だ。


 さて、次は……


「鈴華、こいつに[小治癒]をかけてくれないか?」


「え? ……わざわざ傷を治すんですか?」


 疑問符を浮かべる鈴華。

 だが、それは違う。


「治すんじゃない、下手に死なないように傷を塞ぐだけ。だから治すのは最低限でいい」


「えっと……はい」


 結構ショッキングなことをしたからだろうか、鈴華の顔色が若干悪いように見える。


 申し訳なさもあるが、回復手段を持つのは彼女だけなので頼らざるを得ない。


 ポーションもあるにはあるが、わざわざこいつに使ってやるのも勿体ない。


「[小治癒]」


 魔法の起動句を呟く。

 それと同時に一文字の両手が淡く光りだす。


 モコモコと肉が傷口を塞ぎ、ドクドクと流れて止まらなかった血が一瞬で止まった。


 俺は一言、感謝。そして謝罪を述べると鈴華を下がらせ、未だに放心する一文字の顔に[収納]から水をぶちまける。


「がっ……ゴホッ! ゲボッ、ゲホッゲホッ!」


 急に振りかけられたそれに対応できずに一文字は口と鼻に水を詰まらせ、盛大にむせる。


「やぁ、おはよう。一文字君?」


「あ……」


「もう指に痛みはないだろう? じゃあ次に行こうか」















もうちょいでこの話は終わらせたいですね。

復讐終わらせた後どうするかで迷ってるんですけど……どうしよ。

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