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黒乃 新の復讐劇②

「小太郎様、ご無事ですか!?」


荒々しく、校長室のドアが開かれた。


声の主は鈴華と綾辻を拉致していった闇魔法の使い手。

どうやらこいつも一文字のことを小太郎様と呼んでいるらしい。


そしてこいつの背後には数十という学生たちとなにやらロープで縛られた鈴華と綾辻の姿が。


「あ、あぁ、よ、ようやく来たか稲垣!」


稲垣、というのは闇魔法使いの男子生徒のことだろう。

さっきまで顔を青くしながら尻餅をついてブルブルと震えていたのが嘘のように晴れやかな顔になった一文字はスクッと立ち上がって駆け寄った稲垣の背後に回った。


「や、やれお前ら! こ、こ、こいつを殺せ!」


未だに恐怖で足も声も震えたままの一文字。

けれども自分に圧倒的に有利な状況となった今、強気な発言をするくらいの余裕は取り戻したようだ。


「し、しかし……」


稲垣、と呼ばれた彼は戸惑い、困惑の色を隠せていない。


「殺せといっているんだ! 俺の言うことが聞けないのか!!」


一文字はさっきまでの調子を取り戻し激昂する。


グダグダと続くこいつらのやり取りをまざまざと見ているだけと言うわけにもいかず、俺は『王者の威圧』を発動させる。


ビクリと一文字とその他大勢の肩が跳ね上がった。その顔には恐怖が張り付き、一歩無意識に足が退いたのが見えた。


その隙を見逃すまいと魔法を――いや、止めておこう。

ここで無闇矢鱈に魔法を使えばせっかく考えた()()が無駄になってしまう。


そうして俺が逡巡しているうちに一文字は俺を鋭い目つきで捉えてこう言い放った。


「黒乃……テメェの女が殺されたくなかったら大人しく――死ね」


「ハッ! 雑魚ばっかで頭数揃えたからって調子に乗んなよ」


「状況も理解できないのか、黒乃。お前のレベルがいくら高くても数はこっちの方が圧倒的に有利、それに加えて人質まである。お前に勝機なんてないんだよ」


さっきまで無様に喚いていたとは思えないほどの冷静な対応だ。


だがしかし――


「甘いな」


発動させたままだったスキル『銀気解放』。


この銀のオーラを一瞬だけ脚に集めて強化、一足で一文字のもとまで飛ぶ。


そして、あと少し、間一髪のところでそれは防がれた。


黒髪で地味目の闇魔法使い、稲垣君の[影縛]によって俺の体は拘束されていた。


「くっ……ははっ! 甘いのはどっちだよ、なぁ、黒乃君よぉ!!」


嘲笑を浮かべる一文字。


俺はそれを軽く流してこの魔法を放った稲垣を睨みつける。


対する彼は何でもないような涼しい顔で佇むだけだった。


「さて、じゃあ黒乃……そろそろ死のっか」


ニコリと冷酷な笑みを浮かべた一文字は部屋の隅にあった一振りの刀を持ち出してきた。


鐺から柄頭まで全て黒で染め上げられた刀。


無機物であるはずにもかかわらずそれは言い知れぬ妖艶さと優美さを兼ね備えているように感じ取れた。


スラリと鞘から抜き放たれた剣身もやはり真っ黒に染め上げられていた。


「どうだよ黒乃こいつはなぁ、俺の全ポイントを注ぎ込んでやっと手に入れたランク6の武器だ。お前にはこいつの初めてになってもらうぞ!」


光栄に思えだなんだと独り言を延々と続けて数分。


やっと話を切り上げ、刀を構える一文字。

しかし残念なことに構えがめちゃくちゃで筋力値が足りていないのか剣先もプルプルと震えている。


とはいえ、あんな刀で斬られれば死にはせずとも相当な痛みが襲ってくることだろう。


「じゃあな黒乃……テメェの女たちは後で俺が美味しく頂いてやるからからよぉ!!」


一文字は上段に構えた刀を振り下ろし、そして――


「さっきも言っただろうが……甘いんだよ、お前」


俺は勢いに任せて振るわれた黒塗りの刀を銀色のオーラでコーティングされた両手で掴んで止めた。

所謂真剣白刃取りというやつだ。


この時、俺の拘束はもう既に解かれていたのだ。


「なっなんで!」


戸惑いを顔に浮かべ、稲垣を睨みつける一文字。


「テメェ、稲垣ぃ! 何してやがる、もう一回だ。もう一回捕まえておけ!」


「――無駄だよ、一文字。こいつらはもう、お前の部下じゃあないんだから」


一文字のセリフに被せるように俺は言葉を紡いでいく。


「なぁ、お前たち?」


この部屋に集結していた一文字の部下たちは鈴華と綾辻を縛るロープを引き千切ると一斉に武装を解除した。


稲垣もさっきまで小太郎様と慕っていたはずの一文字を跳ね除け、俺に向かって片膝をつく。


「ど、どういう……ことだ?」


「さあ、どういうことだろうなぁ」







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