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麗剣ニンファ

 なるべく殺さないように手加減して少しの間気絶してもらった。


 その間にロープで体が動かないよう固定しておく。


 [影縛]を使ってもよかったのだが、いつ魔法が必要になるか分からない今、MPはなるべく温存しておくに限る。


 縛り上げた男達の内、さっきまで特に狂喜乱舞して騒がしかった男子の傍には見るからにランクの高そうな剣が。


「鈴華……これは貰っておけ」


 それを物欲しげに眺めていた鈴華に投げ渡す。


「え、えっと……いいんでしょうか?」


「別にいいだろ。どうせこいつらも殺すんだから」


 困惑する鈴華にきっぱりと言い放つ。

 少しの迷いはまだ残っているようだったが、それでも剣を受け取ることは拒まなかった。


「ところでその剣は何か効果があるのか?」


 ランクが高い武器であれば俺の“死神の礼装”よろしく何かしらの特殊な効果があっても不思議ではない。


 期待を込めた目で鈴華に目を向ける。


「ちょ、ちょっと待ってください調べるので……えーと、銘は“麗剣ニンファ”ランク6の武器ですね。効果は……水を自由に操る力、だそうです」


 鈴華はその剣の説明を読み進めるごとに目を見開いていく。


 水を作り出すことはできないらしいが自由に操れるというのは相当な能力だろう。

 特に『水魔法』を使う相手との相性は抜群と言ってもいい。


「こ、これ本当に私が使っていいんですか?」


 あまりの高性能に気後れしてしまっているようだが。


「この中で剣を使うのはお前だけだろ。それに、今使っている鉄剣だって少し皹が入ってきているだろ? 戦いの最中に剣が折れて作戦失敗……なんて事にはなりたくないからな。鈴華が使うのが適切な判断だと思うが」


 嫌か? と尋ねるとブンブンと頭を激しく横に振り回して屈託無い笑顔を浮かべる。


「あ、ありがとうございます」


 そんな風に三人で談笑を続けていると、男達が続々と目を覚まし始めた。


「なにが起こって……ってなんじゃこりゃ!」


 ロープグルグル巻きに体を拘束されているのに気づいて驚愕の声を上げる……が。


「五月蝿いぞ」


 これ以上無駄に騒がせるわけにもいかないのでさっさと予定通りに[暗示]の魔法をかけさせてもらう。


 魔法発動と同時に男達は目を虚ろにして口を紡いだ。


「俺たちはお前達の仲間だ。親友だ。だからなんでも話してくれるよな?」


 そう耳元で囁く。


 すると彼らの目には光が戻り、そして――。


「おお! 当たり前だろ。何が知りたいんだよ!」


 成る程な、これが[暗示]か。

 思った通り便利な魔法だ。


 特に今回みたいな状況では頼りになる事は間違いない。


「じゃあまずは、一文字が今どこにいるか知ってるか?」


 まずはジャブとして一文字の現在位置でも教えて貰おうか……と思ったのだが。


「お、おい。呼び捨てはマズイって……もし他の奴らに聞かれたらどうなるかわかんないんだぞ」


 どんな恐怖政治を敷いているのかこの慌てようだ。

 しかも、この反応を見る限りでは……。


「一文字ってもしかして強いのか?」


 という疑問がでてしまう。


 そもそもあいつは裏でこそこそやるイメージばかりで大した力は持っていない七光りのバカ坊っちゃまって感じだと思っていたんだが。


「そりゃあ強いさ。特にあの固有スキルはエゲツないって有名だろう?」


 成る程……そういうことか。


「その話、詳しく聞かせてくれ」


 俺は食い気味に未だ名前も知らない男子生徒――親友(笑)の肩を捕まえて迫る。


「お、おう……別にいいけどよ」


 ◆


「って感じか……後は、そういえば一文字さんのいる場所ってまだ言ってなかったよな。

 あの人はこの時間は大体校長室で寛いでるぜ」


「ふむ……分かった、ありがとう。それじゃあ死んでくれ」


「へ?」


 『身体強化』を発動。

 それと同時に腰に下げた新品の短剣を取り出し、漲る力でこれを振るう。

 この前までは素人だったはずの俺の短剣の扱いはしかし『短剣術』Lv.3のお陰で相当なものだ。


 俺は狙いの素っ首を寸分違わず断ち切り辺りに赤い雨を降らせる。


 鈴華達も俺の一連の行動を合図に次々と男達の首を刎ねあげていく。


「取り敢えずここから出るか。少し臭いがキツくなってしまったからな」


 男達を全員始末した後もう用はないとさっさと部屋を出て行く。


「次はどこに行くんですか?」


「ああ、次はさっきのが言っていたように本当に一文字の奴が校長室にいるのか調べに行こうと思うんだが」


「分かりました」


「ん……わかった」


 いいか? と聞く前に即答された。

 今回の判断は全て俺に委ねる、ということだろうか。


 まあ、何はともあれ人が寄ってくる前に移動を開始しようと再度『透明化』を発動させる。


「行くぞ」


 校長室は一階の端の方にあった筈だ。


 ここからなら大した距離ではない。


 一歩一歩と足を進め、その距離を縮める毎に俺の心にあった復讐心が膨れ上がって行くのが感じられる。


 ――ああ、もう少し、もう少しであいつに会える。あいつを……殺せる。





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