作戦開始
朝食を済ませた俺たちはもう既に行動を開始していた。
現在は昨日かっぱらった高級車の中でミーティングの最中だ。
「今日はさっき言った通り、俺たちの通っていた学校まで行く。その後『透明化』を使って潜入して何人かから情報を引き出すのが目的だ」
いいな。と念を押して注意換気する。
今日の行動で俺たちの存在がバレるわけにはいかない。
リスクは少しばかり高いが、情報を引き出した奴は殺すのが一番だろう。
その事も追加で説明すると二人は嫌な顔一つせずに了承してくれた。
打ちあわせるべき事はほとんど話し合った。
万が一にも作戦が失敗して危険な状況に陥ったら各自の判断で直ぐに逃げるという約束を最後に、ミーティングは終了となった。
「それじゃあ、行こうか」
俺の号令とともに今日もやはり綾辻がハンドルを握り、意気揚々と車を走らせる。
俺は以前まで考えられない程血にまみれた車道を走らせながら思考に耽る。
レベルも上がり、いくつもの強力な固有スキルだって手に入れた。
一文字やその他雑魚に負けるほど弱くは無い……はずだ。
だが、いざとなるとやはり少しの不安はある。
もし途中で『透明化』が解けてしまったら? もし俺たちよりも高レベルの人間がいたとしたら? もし、もし……そんなことを延々とかんがえてしまう。
けれど不思議なもので、いくらマイナスな考えが頭をよぎっても復讐をやめようなどとはカケラも思わない。
絶対に殺してやるというこの思いだけは変わらず俺の中で生き続けているし、この復讐を完遂するまで俺は死んでも死にきれそうに無い。
俺は自分の中の弱気を頬を叩いて気合いを入れ直し追い払う。と同時に車が停車した。
窓の外からは懐かしい風景が広がっている。
とは言ってもその景色も前とは様変わりして道は所々赤く染まり、目に見える範囲だけでも二人分の死体が転がっている。
まあ、変わったのは景色だけじゃなくて俺たちも……だが。
これだけ人の死体を見ても動じなくなってきたのだから人の適応力とは恐ろしいものだ。
「ここからは……歩きで……いく」
運転席から綾辻が声をかけてくる。
車が止まったのは学校から徒歩で十分程度の場所にあるコンビニだ。
しかし、この駐車場には一台の車も停まってはいない。
さらに言うと、コンビニのガラスで出来たドアと窓は全て割られている。
店内を見ると殆どの商品は運び込まれた後だった。
残っているものといえば数冊の雑誌やらこれは何に使うんだ、となるようなものばかりだった。
勿論俺たちはそんな物に興味を示すこともなく、コンビニを後にして学校への道のりを歩いていく。
そして十分。
魔物に遭遇する事もなく、安全に校門前まで辿り着いた。
ここにくるまでにも気配は出来るだけ消してはいたが、校舎に入った後は『透明化』を使うとはいえ更に気配には気を使う必要がある。
例えば気配に敏感になるスキルなんかを持っている奴がいた場合はその時点で計画が総崩れする可能性もあるのだから。
再度、三人で注意事項を確認してから俺は『透明化』を発動させた。
『透明化』のデメリットである互いの居場所がわからなくなると言う点の解決策として俺は紐を持ってきていた。
今回はこれを常に掴んで移動する。
「いくぞ。ここからは極力声は出さないようにな」
姿が見えない代わりに声を頼りにして同時に歩を進める。
校門はやはり閉じられていたが前回同様よじ登って楽々侵入出来た。
校庭には誰かいるだろうか、と少々の期待を胸に辺りを見渡すが人影一つ見当たらない。
まあ、これは想定の範囲内。
こんな朝っぱらから校庭で何かすると言う事もないだろう事は分かっていたことだ。
ということで、さっさと校舎内に侵入する。
因みに鍵はかかっていなかった。
下駄箱なんかもあったりはしたが、履き替える靴も無いのでそのまま土足で侵入していく。
俺の靴だけなら学校にあるはずだったのだが、ロッカーから俺の上履きは消え去っていた。
少しばかりイラッときたが、それだけだ。
気にせず廊下を足音を立てずに進んでいく。
すると――。
「おっしゃきたぁ!」
会議室として使われていた筈の一室からガヤガヤと喋る数人の男の野太い声と何やら喜色の篭った声が耳に入ってきた。
ドアをそっと少しだけ開けて中の様子を覗きみる。
そこには、一振りの剣を持ってはしゃぎ回る活発そうな男子生徒の姿があった。
成る程な……ガチャか。
『鑑識眼』を使った結果レベルは3とあったのでもしかしたらこれが最初のガチャという可能性もある。
あれは意外とポイントを持っていかれるからな。
それにしても……剣か。
確か綾辻の使っているのは唯の鉄剣だったな。
ならここで武器を新調するのも悪くはない。
室内にいる生徒は全員で4人。
総じてレベルは高くない。
精々が5レベルと言ったところ。
今の俺たちにとっては路傍の石も同然と言ってもいい。
ここで仕掛けるという意思を互いに掴みあった紐を通して伝えていく。
扉を開き、突撃と同時に『透明化』を解除した俺たちは慌てふためく男子生徒たちに襲いかかった。




