『強化狂化』
その後も鈴華による拷問じみた復讐は続いた。
[小治癒]の魔法で死なないレベルの傷を維持しながら次々と痛みを加えていき、遂には数分前にショックで死んでしまった。
だが、これはしようがないことでもあった。
寧ろよくあそこまで持ったものだと少しばかり感心すら覚えた。
「鈴華……もう、終わったのか?」
「……いいえ、まだ終わっていません。私の復讐対象はこの学校全てですから。でも、私一人じゃ無理そうです。だから先輩……手伝ってくれませんか?」
ハアッと俺は一つ嘆息する。
そういう彼女の瞳には先程までの強い憎悪の色は写ってはいなかった。
つまりこれは、彼女が今よりも前に進む為に必要なこと。完全に復讐を成したという結果が欲しいのだということだろう。
「分かった、手伝おう。そもそも、俺の復讐を手伝って貰う代わりにお前の復讐も手伝う。そういう約束だったしな」
「……ありがとう、ございます」
「……私も、手伝う……よ?」
横から綾辻も賛同の意を示す。
「でもその前に聞きたいことがある」
「なんです?」
これは俺の単純な疑問。
鈴華が知っていることなのかも分からない。
でも、聞かずにはいられない。
「校庭にいた奴ら。あれはお前がやったのか?」
呪いにかかっていたさっきまでの鈴華と同じような状態になって襲いかかってきた何人もの生徒たち。
鈴華がいうにはあの呪いをかけたのはコボルトジェネラルであるらしいが、あれもそうだというのならここまでコボルトジェネラルが襲撃に来たことになる。
流石にそれは無いだろう。とそういう意味も込めて俺は問いかける。
「あぁ、あれですか……あれは私がやったんですよ。なんでか新しい固有スキルが増えていまして、『強化狂化』っていうんですけど触れた相手を狂化状態にできるんです。しかも、物凄く身体能力が強化されます。あ、あとまだ使って無いんですけどこれ、自分にも使えるらしいんですよね。まあ、今のところ使うつもりはありませんけど」
「職業が聖騎士とは思えないスキルだな……」
寧ろ呪術師とか真逆の職業が使うやつだろと思わないでも無い。
「私だって職業もスキルも自分で決めたわけでも無いですし、そんなことを言われても困ります」
「え、あぁ、すまん」
困ったような顔でそう言われて咄嗟に謝る。
数分前まで怒りの形相で人を殺していたとは思えないような変わりよう。
だが、それに違和感を感じることはない。
「そんで、この後はどうするんだ?」
「そう……ですね、それじゃあ一つ一つ教室を回っていきましょう。校庭の方は勝手に死んでいくと思うので大丈夫だと思いますが、校舎に隠れている人とかも相当数いると思うので」
「了解だ」
「ん……わかった」
俺と綾辻が了承の声を上げた。
◆
教室を出てまず目指したのは鈴華がまだ行っていない、かつ人が多そうな場所。
体育館や食堂、後は屋上なんかもそれにはいるだろうか。
その中で最初に足を運んだのは体育館。
他の高校と比べてもそれなりの大きさを誇るらしいここの体育館にはやはり結構な人数の生徒が避難していた。
体育館の扉を俺の[闇槍]の魔法で派手にブチ抜いて侵入、ドヨドヨと戸惑いを隠せない生徒たちを他所に鈴華は近づいていき、『強化狂化』を発動させた。
次々と何人もの生徒たちを狂化状態に陥れ、暴れさせる。
それに抵抗しようとスキルを掛けていない生徒たちも連動するように動き出し、遂には狂化状態であるかなど関係なく乱闘騒ぎへと発展した。
そうしたら後は何をするわけでもなく体育館を去った。
次は食堂。
こちらは予想に反して人の気配はあまり感じられなかった。
まあ、想像より少なかっただけであっていないというわけでもなかった。
こんな状況になっているにも関わらず、自分は関係ないと呑気に飯を食らっていた阿呆どもは鈴華がその剣をもって八つ裂きに切り裂いた。
因みに、ガチャで折角当てたあの盾は何処かに行ってしまったみたいだ。
悲しんではいるようだったが、剣一本で戦う方が戦いやすかったと開き直っている部分もあった。
道中何人かの生徒とすれ違った。
もう情報は伝達しているのか俺たちを見るなり逃げ出した。
がしかし、綾辻がそれを狙い撃ち。
ヘッドショットで一発だった。
続いて向かう先は屋上。
普段は解放されていない場所のようだが、どれくらい人がいるものか?
なんて思っていたら、なんと一人もいないではないか。
驚愕、そして落胆が俺たちの心を支配する、が直ぐに意識を切り替える。
「ねぇ、あれ……」
袖をグイグイと引かれる。
そこには綾辻が。
そして、その綾辻の視線の先は校庭。
なんだなんだと俺も綾辻が指差す方向へ視線を向かわせる。
するとそこには――。
ここで鈴華の復讐は終わりです。
早く主人公の復讐を書きたい!!




