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鈴華の復讐

 鈴華はベットリと血に塗れた剣を片手に残った三人の生徒達へと歩み寄る。


「ヒッ」


 一人の女子が小さく悲鳴を漏らす。


 元々大したことが無いだろうその顔面に塗りたくられた化粧の数々がまた鬱陶しい。


「た、助けてっ! そこの貴方、何でもするから私を助けてよ!!」


 喚き散らすケバ子に俺は何をするでもなく無感情にそれを眺める。


「その汚らわしい口を開くな、ブス。貴女が死ぬのは決定事項なの。誰がどう言おうが私は貴女を殺す」


 鈴華はさっきよりも更に憎悪の篭った瞳をケバ子に向ける。


「貴女が私にやって来たこと……忘れたとは言わせないわよ」


 鈴華の剣を握る手に力が入る。


「貴女だけは直ぐには殺してやらない。苦しめて苦しめて絶望しながら死んでいきなさい!」


 影に拘束されたまま動けない三人の生徒達は目尻に涙を溜め、その顔面に恐怖を滲ませる。


 最初にケバ子の隣で震えていた女子が一刀の元に斬り捨てられた。


 その隣で気丈にも鈴華を睨みつけていた男子は返り血をベットリと浴び、その表情に怯えが現れた。


 鈴華は男子生徒に近づいていく。


 嫌だ嫌だ、殺さないでと懇願するが今更それを聞く彼女ではない。


 その首筋に刀身を当て、見せびらかすようにしながら剣を振りかざした。


 生首が宙を舞い、ケバ子の目の前まで吹き飛ばされる。


 血走った目と金魚のようにパクパクと動く口が恐怖を駆り立てる。


「あ、あぁ、あああああああぁぁぁ!!」


 恐怖に耐えることが出来なくなったケバ子は狂ったように叫び出す。


「うるさい」


 それをまるでゴキブリでも見るかのような蔑んだ瞳で睥睨し、右手首を切り落とす。


 更に絶叫が加速する。


「次は左ね」


 宣言通り身動きの取れないケバ子の左手首を淡々と切り落とす。


 ケバ子はボロボロと涙を流し、口からは吐瀉物が溢れ出す。


 鈴華はそれにも構うことなく、次は右足首を切断した。


 更に加えられた痛みに泣き叫びながら許しを請い願う。


 だがしかし、まだやめない。


 左足首を斬り落とし、それを口に咥えさせる。


 両手両足首から溢れ出る赤黒い液体が床を濡らす。


 数分もすれば出血多量で死んでもおかしくは無い所まで来ている。


 それを鈴華は心底楽しそうな表情で眺め、嗤う。


「もう、やめ……てぇ」


 瞳から滝のように流れる涙で厚く塗りたくられていた化粧は流れ落ちてしまっていた。


「やめないよ……私の中の恨みは憎しみはまだまだ消えてないんだから。だから、勝手に死んだりしないでね?」


 ニコリと微笑んむ鈴華だが、ケバ子はそれを見る余裕もなく蹲って啜り泣くしか出来ないでいた。


「じゃあ次はもっと趣向を変えていきましょうか」


 後ろに音符マークでもつきそうなくらい上機嫌に肩にかけられていた鞄から魔法書(火)を取り出す。


「火炙りの刑ってやつです」


 取り出した魔法書(火)からケバ子の胴体目掛けて火の球を放出し、着弾。


 瞬間、爆発が巻き起こりその体を黒く焦がした。


 更に火は服に燃え移り全てを灰へと帰す。


 さっきまで散々受けつづけた斬撃とは違う種類の痛みに、もう枯れ果てたと思っていた口から絶叫が響き渡る。


 ケバ子は何で死なないの? 何で殺してくれないの? と虚ろな目でつぶやき始める。


 だが、俺も綾辻もそして当たり前だが鈴華もそれを止めようとするそぶりすら見せない。


 そりゃあ当事者からすれば狂ってしまってもしょうがない状況だろう。


 例えそれが因果応報の結果だったとしても。


 鈴華は更にもう一度火の球を創り出す。


「燃えろ」


 今度はそれを顔面にぶち当てた。


 だがやはり、まだ死なない。死ねない。


 顔までも黒く焼け焦げ、呼吸するのも難しい状態にも関わらず死ぬことが出来ない。


「ね、ねぇ鈴華……もういいんじゃ……」


 流石に同情の念を抱いたのか綾辻がストップをかける。


 がしかし。


「何で止めるんですか?」


 鈴華は同情の念などカケラも抱いてはいなかった。

 むしろまだまだ足りないとばかりにその瞳を爛々と輝かせている。


「ふふっ、そういえば先輩方にはまだ言っていませんでしたね。……こいつらは私の両親を殺していたんですよ」


 楽しそうな顔から一瞬、その表情は無へと変貌した。


「コボルトジェネラルにかけられた呪いの赴くままに私はこの学校までたどり着きました。あれは私の負の感情を増幅する効果もあったみたいでして、無意識にここまで来ていました。そして……見つけました。もう息もしていない、お母さんとお父さんの遺体を」


 憎しみに彩られたその瞳を涙で濡らす。


 やり切れないその気持ちに顔を歪ませ、剣先を既に死にかけのケバ子へと向ける。


 勿論反応なんて帰っては来ない。


 でも、彼女にとってそんなものは必要としていない。


 怒りを向ける矛先が必要なのだ。


「私は聞きました。何で私のお母さんとお父さんが死んだんだって。どうして殺したんだって。そしたら、なんて言ったと思いますか?」


 悲痛に満ちたその声は狭いこの教室ではよく響いた。


「うざかったから魔物の餌にした。それ以外に特に理由は無い……ですって。あははっ、だったら私もこいつらをどうしようと勝手ですよね。……そうですよね?」


 零れ落ちて止まらない涙を拭うこともなく剣の柄を強く強く握りしめる。


「私はこいつもそれ以外の奴らも、苦しめて苦しめて苦しめて、そして絶対に……殺します」


 絶対に。そう自分に言い聞かせるように呟かれた一言は重く鋭く、俺の胸に突き刺さった。



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