表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/73

目撃情報

 俺たちは曖昧な記憶を頼りに一番近くの中学校を訪れていた。


 目的は勿論、鈴華の目撃情報を得ることだ。


 まあ、大した期待はしていないが、もしかしたらあるかもしれない。


 そんな一抹の期待を胸に門を叩いた。


 返答はない。


 しかし、確実に人の気配はある。


 今回は鈴華の情報を聞き出すことが目的であるため、前回のような『透明化』を使った侵入という手段は取れない。


 決して堅牢とは言えない極々普通の中学校の門。


 よじ登れない高さでもないし、魔法を使えば破壊できないこともない。


 でも、その手は使えない。


 厄介だな。


「おい、あんたら! ここに何の用だ!!」


 どうしようか……と思考に耽っていた俺と綾辻の背後から声をかけられる。


 若い男の声。


 振り向くと、十人程度で構成された恐らくは戦闘職だろう者達がいた。


 全員が武器も防具も良さそうなものを装備している。


 ガチャで当てたのだろうか、先頭に立つ男の装備は素人の俺が見ても高いランクの物だとわかるくらいには良いものだ。


「すまない……少し尋ねたいことがあってこちらに来た。ああ、戦うつもりは無いから武器は下ろしてもらえると助かる」


「偉そうガキだな……まあ、いい。お前ら武器は一先ず下ろしておけ」


 男の後ろに控えていた九人は警戒は解かないまま武器を下ろし、見定めるように俺たちを凝視している。


 あまり好ましいものでは無いが、俺たちが頼みごとをしているのだからそれについて何か言うのは違うだろう。


 男は苦笑を浮かべながら手を差し出してくる。


「まあ、兎に角よろしく。俺は後藤 英二、一応消防士……をやってたんだが、今はもう関係ないな」


 俺は差し出された手を恐る恐る手に取り、握る。


「えっと……俺は黒乃 新。この前まで高校生やってた。こっちは綾辻 姫菜だ」


「よろしく……」


 早速綾辻の人見知りが発動して、俺の体の後ろに隠れる。


 悪い人だという感じはしないが、あっち側もしているように俺たちも警戒はしておいた方がいいな。


 内心でそう独りごちる俺に後藤は口を開いた。


「ここじゃあなんだ……中で話そうか」


「分かった」


 後藤は俺の返答に満足そうに頷き、校門の鍵を開けた。


 ガラガラと音を立てながら門は開いていく。


 後藤以外の九人はそそくさと校舎に入って行った。


 それに続いて、後藤と俺たちも足を進める。


 お互い無言を貫く。


 まだまだ知り合ったばかりで話すことがないというのもあるが、俺たちもそしてこの後藤も今は人当たりの良さそうな笑みを浮かべはいるが、内心俺たちを警戒しているのだろう。


 数分校舎を歩き、会議室と書かれた教室札のつけられている場所まで連れてこられた。


 後藤はなんの躊躇もなくドアを開き、入っていった。


 俺たちもそれに続く。


 中には数人の大人たち。

 この中学校の教師達だろうか?


「後藤、ただ今帰りました」


「はい、ご苦労様。ところでその子たちは?」


 並べられた机のちょうど真ん中に座る、髪がほとんど白く染まった老齢の男性が後藤を労うと同時に質問してきた。


「ああ、この子たちなんですがね……どうも知りたいことがあるみたいで」


「ふむ……その前にまず自己紹介と行こうか。私の名前は白川 善。この学校の校長をしていたものだよ。君達は?」


「後藤……さんにはもう紹介させて頂きましたが、俺は黒乃 新。……でこっちが」


「綾辻 姫菜……です」


 何処と無く逆らえない雰囲気を発するこの老人にはタメ口で話そうとはとても思えなかった。


「新君に姫菜さんね……それで? 何が聞きたいんだい?」


「えっと……さっきまで一緒に行動してた仲間が何処かへ行ってしまって」


「その子を見ていないか聞きたい、と?」


「はい」


 うーむ、と頭を捻らせて俺たちの横で空気になっていた後藤に目を向ける。


「後藤君は何かしらないかい?」


「私ですか? とは言われても、特徴とかが分からないとなんとも……」


 後藤がそう言うと室内の視線が俺に集まった。


「ん……そうですね、高校一年生の女の子で髪は金髪、身長は大体160くらいで剣と盾を持っていた筈です」


「ふーん、随分と派手な子だね。それでどうだい、後藤君?」


 白川さんはニコニコとした表情を崩さずに後藤に問いかける。


「多分、帰りに見ましたね。かなり特徴的だったので覚えています」


「ど、何処にいたかは覚えていますか!?」


 俺は後藤の発言を無視することは出来ず、思わず声を荒げてしまった。


「あ、ああ。確かあれは……○○高校の近くだったかな? 魔物に襲われてたから助けようかとも思ったんだけど、余裕そうだったから余計なお世話かと思ってスルーしたんだ」


「そう……ですか。ありがとうございました! 俺たちはこれで失礼します」


「まあ、待ちなさいな」


 白川さんが慌てて出て行こうとする俺たちを引き止める。


 早く探しに行きたいという思いを押さえつけて、彼を見る。


「――情報には対価が必要だとは思わないかね?」


 白川さん、いや白川はそう言ってニヤリと口角を上げた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ