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一対一

「鈴華!!」


 一匹のコボルトジェネラルが鈴華に向かって走り出す。


 俺は叫びを上げて鈴華にそれを知らせ、[影縛]を発動させてコボルトジェネラルの動きを止める。


 しかし、コボルトジェネラルはそれを物ともせずに引きちぎり、槍を構える。


 鈴華もそれと同時に剣と盾を構える。


 それを援護しようと綾辻は銃を構えるが、こちらにももう一匹のコボルトジェネラルが迫っている。


 俺はより危険度が高い綾辻の方に加勢しようとするが、俺の方にはコボルトキングが向かってきていた。


「なるほど、一対一がお望みって訳か……」


 ヤバイな。勝てる気がしない。


 特に綾辻が心配だ。


 あいつの戦闘スタイルだとこの中で一番危険だ。


 なら、俺か鈴華のどっちかがさっさと相手を蹴散らして綾辻の援護に行かなきゃ。


 鈴華も俺と同じ事を思ったのか焦った様子で綾辻の方を気にしている。


 だが綾辻は俺たちよりも冷静だった。


「私のことは気にしないで戦って!」


 普段出さないような大声を張り上げて心配入らないと少しの焦りも恐怖も無いような、そんな表情でコボルトジェネラルと向かい合っている。


 俺の不安はそれでも消えることはないが、どっちにしろ早く俺の相手を片付けて仕舞えばいいだけの話。


 俺も俺の相手――コボルトキングを睨みつける、戦闘態勢に入る。


 鈴華も同様に自分の戦いに集中することにしたらしい。


 そちらからはもう既に剣と槍が交わる音が聞こえてくる。


 俺は短期決戦とばかりに先手を打つ。


 まずは[影沼]で動きを封じる。


 MPのコスト面から考えると[影縛]のほうがいいのだが、さっきコボルトジェネラルに速攻で破られたことからこいつにも効かないだろうと言う判断だ。


 案の定、コボルトキングは影の沼から抜け出そうともがき出し、更に深く深く沈んでいく。


 俺はそれに追い打ちをかけるように[雷球]を射出。


 狙いは顔面。


 だったのだか、紙一重のところで顔を曲げることで躱された。


 お次は[闇槍]。


 現在俺が使える魔法の中で最も高い攻撃力を有しているだろう魔法だ。


 今度は顔面などという贅沢は考えず、確実に当てることを優先して胴体に発射。


 それは狙いと寸分も違うことなく命中。


 コボルトキングは悲痛な叫びを上げてその手に持つ巨大な剣を無茶苦茶に振りまわす。


 だかしかし、足は影の沼にはまったままであり俺には攻撃が届くことはない。


 そんな油断をしていたからだろうか、次の瞬間コボルトキングが起こした行動に俺は対応することができなかった。


 奴は、大剣を振り回するのやめると俺を鋭い目で睨みつけ、ニヤリと嗤い――その大剣を投げつけた。


 乱回転しながら俺めがけて飛んでくるそれに俺は避けることもできず、咄嗟に庇った左手に直撃。


 左腕はパックリと肉が裂け、白い骨が見えている。


 俺は痛みに耐えながら更に魔法を行使する。


「グッ……[闇槍]!」


 高レベル故の高い耐久力で俺の魔法を耐えしのぐコボルトキング。


 だが、投げる武器もないこいつに成す術はもうない……筈だった。


「グ……ガアァァァァァァァァ!」


 コボルトキングはさっきと同じ、鼓膜が破れんばかりの大音量の咆哮を放った。


 そして、その咆哮の所為なのか[影沼]の魔法が解けた。


 してやったりといった様子でこちらを睥睨してくる。


 俺は武器だけは拾わせまいと地面に落ちたまま放置されていた大剣を[収納]によって仕舞い込む。


 コボルトキングはそんなことは気にした様子もなく、ジリジリと少しずつ、少しずつ近寄ってくる。


 一歩こちらに進む毎にコボルトキングから発せられる威圧感が強く感じられるようになる。


 未だに十メートル以上の距離はあるはずにもかかわらず、気を抜けば気絶でもしてしまいそうなほどの威圧感。


 俺とキングとの距離が五メートルほどまで縮まったその時。


 キングは一足飛びに俺に迫る。


 だが、俺だって接近戦対策はしているんだ。


『身体強化』、[帯電]を発動させて鉄の短剣を鞘から引き抜く。


「グァァァァ!!」


 キングは更なる咆哮を上げながら拳を振り上げる。


 対して俺は短剣を片手にそれを待ち構える。


 そして、丸太の如き拳と少しだけ頼りない短剣が――衝突する。


 それと同時に俺の短剣はバキッという音と共にへし折れ、コボルトキングは[帯電]の効果によって感電する。


 その隙をついてバックステップで後退しながら[闇槍]によって追撃する。


 コボルトキングは痙攣したまま動くことは出来ず、三度目の[闇槍]が直撃。


 今度こそ顔面に風穴を開けた。


「やった……のか?」


 俺は恐る恐るコボルトキングに近づく。


 そして――。


「ガァァァァ……ア、ァァ……」


 油断を突こうとしたのだろう俺が近づくのに反応して襲いかかろうとしたが、途中で力尽きた。


 これでまた死んだふりだったら堪らない、と[闇弾]を撃ち込む。


 《レベルが上がりました》


 《固有スキル:『復讐』が発動しました。対象から一つスキルを奪取出来ます。選択してください》


 奪取可能スキル一覧


 固有スキル 

『王者の威圧』


 スキル

『咆哮』Lv.3

『統率』Lv.3

『カリスマ』Lv.2

『大剣術』Lv.5

『筋力増強』Lv.3


 魔法



 ――


 これらのアナウンスがコボルトキングの死亡を知らせる。



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