強盗?
「よぉ、兄ちゃんたち、昨日振りだな」
五人の中の一人、三十代くらいで剃られていない髭が不快な男がまるで友達と話をするような気軽さで話しかけてくる。
まるで昨日自分たちがやったことが悪いことだと思っていないかのように。
それがまた、俺たちの不快感を煽る。
「何の用だ」
俺の口からいつもより数段低い声が出ているのが分かった。
「おいおい、あんま怒んなよ……昨日のは悪かったよ」
パン、と両手を合わせて片目を閉じ笑顔を浮かべて謝罪をしてくるが、それはイケメンがやるから許されるのであって、こんな三十過ぎくらいのおっさんがやってもキモいだけだ。
「俺の質問に答えろ……何の用だ、と聞いたんだ」
俺はさっきよりもまた、更に低い声でもう一度質問を繰り返した。
「はぁ、やだやだ、これだから最近の若者は……まあ、いいや。あのさ、君らのポイント俺らにくれない?」
俺たちはこの男の言葉に疑問符を浮かべる。
「あれ、知らない? ポイントって譲渡できるんだよ。まあ、お互いの承認が無いと駄目らしいんだけどね」
初耳の情報が思わぬところで手に入った。
この情報には素直に感謝だか、だからといってこいつらに俺たちのポイントをやる義理はない。
そもそも。
「なんで俺たちがあんたらにポイントをやらなきゃなんないんだ。むしろ、昨日のことを考えれば俺たちが貰っても良いくらいだと思うんだが?」
「ん、ははは、なに、まだ分かってないの?これいま、脅してんだよ。俺たちは五人で君達は三人、どっちの方が有利かなんて聞くまでも無いだろ?」
男たちは余裕磔磔といった感じで、全員が全員その顔に薄っすらと笑みを張り付かせている。
「ポイントが無いんなら……そうだな、君ら二人を貰おうか」
そう言って男は下卑た笑みを浮かべながら鈴華と綾辻を見る。
「きもっ」
綾辻の口から軽い罵倒が漏れ出る。
俺も鈴華もこれには失笑しかない。
男の方を覗き見ると怒りからか、それとも羞恥心からか顔が真っ赤にそまっていた。
「殺す!」
男は腰に下げていた短剣を引き抜く。
それと同時に俺は『鑑識眼』を発動。
ステータス
――鈴木 健二郎
職業:狩人
レベル:3
スキル
『交渉』Lv.3
『短剣術』Lv.3
『弓術』Lv.1
魔法
――
ステータスを覗き見た。が、想像以上に弱い。
『鑑識眼』のレベルが足りないのか能力値までは見ることができないが、俺たちとこいつとでは明らかにレベル差がありすぎる。
もし、こいつら全員がこの程度のレベルであるなら対処するのは容易だろう。
そんなことはつゆ知らず、男は短剣片手に怒りの形相で突っ込んでくる。
そして俺の懐に入り込み、一閃。
斬られたのは胸あたり。
だか、高い耐性系スキルのお陰でそこまでの痛みは感じない。
さらに、直ぐに治るのだからこの程度の傷は大したことじゃない。
そんなことより――これでもう条件はクリアだ。
「[雷球]」
発動句を唱え、手を男に向けてかざす。
バチバチと迸る雷の球はその顔面を捕捉する。
「ぐ、ああぁぁぁ!」
短剣による一撃で俺を切り裂いたことでニヤつかせていた顔が黒く焼け焦げていく。
俺は更にもう一度[雷球]を発動させて、トドメをさす。
《固有スキル:『復讐』が発動しました。
対象から一つスキルを奪取出来ます。選択してください》
奪取可能スキル一覧
固有スキル
スキル
『交渉』Lv.3
『短剣術』Lv.3
『弓術』Lv.1
魔法
――
スキル発動のアナウンスが頭の中に鳴り響く。
特にめぼしいスキルもないが一応護身用として『短剣術』を貰っていくが、やはりこいつは固有スキルを持ってはいないか。
さっきまでこいつらが使っていた消える能力、あれは絶対に固有スキルの筈だ。
できることなら、手に入れたい。
しかしながら、俺の『鑑識眼』では固有スキルの事は分からない。
なら、どうするか――片っ端から奪えばいい。
俺は綾辻と鈴華に手出ししないように伝えると仲間の死に呆然としたまま固まっている残りの四人の男達を見据える。
「かかってこいよ」
あえて俺は指をちょいちょいと動かし、小馬鹿にするようにして挑発する。
「こっの、餓鬼が!」
「死ね!」
直情的な奴らなのか四人の中の二人が吐き捨てるようにそう言って武器を構える。
一人は長剣。もう一人は槍を手にする。
俺はまた『鑑識眼』を発動させる。
ステータス
――佐々木 亮治
職業:戦士
レベル:3
スキル
『家事』Lv.3
『剣術』Lv.2
『威圧』Lv.2
魔法
――
ステータス
――源 浩二
職業:槍士
レベル:3
スキル
『詐術』Lv.3
『槍術』Lv.2
『集中』Lv.2
魔法
――
やはり見立て通りさっきの奴と同程度。
長剣を持つ方の男がまず突っ込んできた。
人を攻撃するのに慣れていないのかスキルレベルは勝っているはずなのにコボルトの方がまだマシと言えるほどの酷い剣術。
本来なら躱すのが得策のはずの攻撃をしかし俺は真っ向から受ける。
そして攻撃受けたことを確認してから。
「[闇槍]」
[雷球]では一撃で倒せないことがわかったので[闇槍]に変えたのは正解だったのか、今度は一撃でその命を屠った。
「っ――佐々木!」
残った男達に更に動揺が走る。
槍士の男は二人の仇とばかりに何も考えず単身突っ込んでくる。
――学習しない奴らだな、三人で一緒に戦えばいいものを。
呆れを含んだ溜息を吐き、又もや構えもせずに攻撃を受ける。
槍で貫かれた腹からは多量の血が零れ落ちる。
男の顔が愉悦で歪む。
が、それも一瞬の出来事。
男の腹には大きな風穴が開く。
対して槍で貫かれた俺の腹は再生するかのようなスピードで治っていく。
やっぱりゼロ近距離での[闇槍]は強力過ぎるかもしれない。
使いどころをちゃんと考えなければならないな。




