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襲撃

 ゴトゴトと揺れる車内の雰囲気は今、最悪といっても良かった。


「うえぇぇぇぇ」


 その原因は鈴華が酔ったことにあった。


 顔色は青を通り越して白くなっている。

 さっきから何度も吐きそうになっては飲み込んでを繰り返している。


 可哀想ではあるのだが、薬もない今俺のしてやれることはほとんどない。


 綾辻は運転に集中していて、そもそも鈴華が酔っていることにも気づいていない。

 俺が何度か話しかけたが、無視されたからな。


「すみません、先輩……いつもはこんなに酔ったりしないんですけど……」


「まあ、そういう時もあるだろ。気にすんな」


 少しだけ慣れてきたのか幾分か余裕を取り戻した鈴華が恥ずかしさと申し訳なさが入り混じった様子で頭を下げる。


 そういえば酔った時は遠くを見ればいいという話を思い出した。


 早速教えてやろう、と後ろを振り返ると。


「おい、なんか後ろから追ってきてるぞ!」


 見た目からしてウォーウルフだろうか……五、六匹の群れが俺たちの乗る車を猛スピードで追いかけてきているのが目に入った。


「綾辻、スピード上げろ! 追いつかれる!!」


 俺は隣でハンドルを握る綾辻に向かって叫ぶ。


 さっきまでは集中していて無駄な話はスルーしていた彼女だったが、流石に緊急事態だということは分かっているようで、俺のいう通りにスピードをあげる。


 がしかし――。


「くそっ、こんな時に何で――」


 渋滞が起きて、そのまま放置された大量の車が俺たちの行く手を阻んだ。


 後ろからはまだウォーウルフたちが追いかけてきている。


「しょうがない……戦うか」


「いや……いい」


 綾辻は俺の言葉に被せるようにしてそう言い放ったと同時に車の向きを反転させ、ウォーウルフ目掛けて車体を進ませる。


 グングンと速度は上がり、約束であった限界速度の四十キロはとうに超えているだろうというほどに加速していた。


 ウォーウルフは自分たちが追っていた筈の車が突然突っ込んできたことに戸惑っていた。


 そして、逃げる間も無く――衝突。


 その瞬間鈍い音が聞こえた。


 相手が人であれば最悪死亡、軽くても重症といった感じにクリティカルヒットしていたように思う。


 俺たちは車を降りて確認する。


 車はボンネットがへこんでフロントガラスに少しヒビが入っていたが、まあこれ以上乱暴に使わなければまだ走れるだろう。


 問題は車にぶつかったウォーウルフ達だが……。


 流石に六匹全部にぶつかった訳ではないようだが、そのうち二匹はもう死にかけ。一匹は右前足が変な方向に曲がっていた。


 ということで、戦えるのはあと三匹ということになる。


 ウォーウルフが三匹。


 ぶっちゃけ話にもならないくらいの戦力差だ。


 さっきはあんなに慌てていたが、冷静になって考えると、ウォーウルフが六匹いたとしてもあまり脅威にはならないということにきづいた。


 そう考えると車の損害が大きい。


 まあ、今それは置いといて――。


「やるか……」


 ガルルゥゥと一丁前に威嚇の唸りをあげるウォーウルフ達を無視して、魔法を発動させる。


「[闇球]」


 俺は一直線に魔法を射出するが軽い身のこなしでそれは避けられる。


 が、一匹のウォーウルフが避けた先に――。


「ふっ!」


 剣を構えた鈴華が待ち構える。


 小さく息を吐いて、一閃。


 その剣閃はウォーウルフの顔面に直撃。


 即死、とは行かないまでももう動けないほどの重症を負わせた。


 あと二匹。


 今更ながらに自分たちとの圧倒的な戦力差に気づいたのか怯えるように後ずさる。


「逃がさねーよ[影縛]」


 足元から伸びた影がウォーウルフ達を縛り上げる。


 なんとか脱出を試みようとジタバタと暴れるが、そんなことは意味を成さない。


 その影はウォーウルフ達がどうあがいても千切れることはない。

 そもそもそれができるだけの力がないのだから当たり前だ。


 その場から動けなくなった二匹を[闇球]で仕留める。


 脳天を狙ったそれにウォーウルフ達は抵抗することもできずに直撃。


「終わった?」


 俺がウォーウルフ達の死亡を確認しているともしもの時に備えて銃を構えたまま待機していた綾辻が話しかけてくる。


「ん、ああ」


「じゃあ、そこに隠れてるやつら……撃ってもいい?」


「はい?」


 綾辻は何もないはずの場所に向かって銃口を向ける。


「もう……そこにいるの分かってる。さっさとでてきたら?」


 俺と鈴華は未だにどういうことかわからず困惑している。

 そんな俺たちを他所に綾辻は眼光鋭く虚空に向かって睨み続けている。


「……なんで、分かったのかな?」


 綾辻の脅しに屈したのか、俺が何も無いと思っていたところから突然人影が現れた。


 その数五。


「あれ? ……あんたらは」


 何処かで見覚えがある。


 そう、昨日の――。


「あんたら、俺たちに群れを擦りつけてきた奴らじゃねぇか!」


 あの男達だった。




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