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運転

 俺は鈴華に魔鋼の鎧を贈呈し、鈴華が手に入れたウイングブーツを代わりに貰うことになった。


 鈴華は奪い取るように俺から魔鋼の鎧を受け取り、視姦でもするかのようにじっくりと見つめる。


 十分程眺めて満足したのか、やっと鎧を装着する。


「もういいのか?」


 俺は手早くウイングブーツを履くと既に準備を済ませて暇そうにしていた綾辻と共に鈴華を待っていた。


「あ、はい。すみません、待たせてしまって……」


「いや、別にいい」


「私も……気にしてない……」


 我を取り戻した鈴華は顔を赤面させ、俺と綾辻に向けて頭を下げる。


「それよりも、もうそろそろ出た方がいいんじゃないか?」


「ん……」


「あ……あの、そのことなんですけど……私、行きたいところがあるんです……」


 珍しく、鈴華からの提案だ。


 俺は体を鈴華の方へ向けて続きを促す。


「えと、今更なんですけど、避難場所の方に……両親がいないかだけ確認しておきたいんです。一度、先輩と会う前に家に行った時はもう誰もいなかったので……」


「そう……か、じゃあ今日は避難場になってるとこを回ってみるか。綾辻もそれでいいか?」


「無問題」


 俺も綾辻も鈴華の提案を迷うことなく承諾した。


「そういや、綾辻んとこの親はいいのか? 探さなくて」


「別にいい……元々、仲が良かった訳でもないし、どうせ仕事があったから東京にいる筈……」


「そうか……」


 なんでもない風にそういう綾辻だが、多少は心配しているのだろう、俺の目には若干体が強張ったのが見て取れた。


「黒っちこそ、どうなの?」


「俺は別に……」


 見つけたら殺そうと思っている……という言葉は飲み込んでおく。


 こんなことは今言うべきじゃないだろう。


「はい、もうこの話は終わりだ。時間もない事だし、さっさと出よう」


 俺はさっさとマンションを出る。


 二人も俺に続いて出てくるが、ここで綾辻がおもむろに口を開いた。


「歩いて行くのは……ちょっと面倒……体力の無駄……」


「そうは言ってもなあ……自転車でも使うか?」


 俺の記憶が正しければ、このマンションの下には駐輪場があった筈だ。


 そこからいくつか拝借すればなんとかなるだろうけど……。


「車……使えばいい……ここにはいっぱいあるでしょ?」


「正気か?」


「ん……」


 綾辻の真剣な表情で、ふざけているようには見えないが……流石に無理がある。


「そもそも、誰が運転するんだ? 俺は無理だぞ」


 というか、高校生で車を運転できるやつなんてほとんどいないだろ。


「大丈夫……私が運転……する」


 グッと拳を握ってやる気をアピールしている。


 可愛いじゃねぇかちくしょう。

 普段あんま表情が変わんない奴がこういうことやるとギャップで萌えるよな。


 一瞬、いいぞと言いそうになったが自制する。


「……お前、運転なんかできんの?」


「大丈夫」


 綾辻は自信があるのか胸を張って答える。


 その時、めっちゃ胸が揺れたけど気にしないことにした。


「その自信はどこからくるんだ……」


「ゲームセンターで鍛えたから大丈夫。心配無用……」


「むしろ心配しか無いんだが」


 結局、綾辻の熱意に押されて車で行くことになった。但し、危ない運転をしない超安全運転という条件付きで。


 鈴華も家族に会う前に死ぬのを防ぐ為、時速四十キロ以上は出さないという条件をだしていた。


 やっぱ、ちょっと怖いよな……。


 でも、今更ワクワクしているのだろう綾辻を止めることはできそうに無い。



 ということで、来ました――駐車場。


 綾辻はどの車にするか物色しているが、そもそも鍵がないと車を動かせないのを忘れているんじゃ無いか?


 と、思っていると。


 一台の軽自動車の前で立ち止まった。


「ん……これに決めた……」


 そう言って、小さな鉄の塊を取り出してグネグネと変形させて行く。


 やがてそれは鍵へと姿を変えた。


 車に鍵を差し込み、回す。


 ガチャリという音が施錠が解除されたことを表している。


「早く……乗って」


 綾辻はもう既に運転席に座ってエンジンを入れていた。


 綾辻に言われて俺は助手席に、鈴華は後部座席に座る。


 この席のつき方についてはどういう意図があるのかは分からない。


 まあ、正直どこに座るのかなんてどうでもいいんだが、綾辻には綾辻なりのこだわり見たいのがあるんだろう。


「それじゃ……いくよ」


 その言葉と共に車が発進する。


 俺たちが出した条件を守る為なのか、速度自体は大して出てはいない。


 それにあれだけ自信満々だっただけあって運転も上手く出来ているように思える。


 まあ、素人目だから詳しいことはよく分からないんだが……。



 車を進めて数分。


 道に転がる死体の数が多い。


 しかも、腐りかけているものもあるのか車の中にいても腐敗臭が鼻を刺激する。


 綾辻は少しくらいの異臭なんて気にならないとばかりに運転に集中している。


 迂闊に話しかけるのも戸惑われるほどだ。


 道はまだまだ長い。


 ここから一番近い避難場所でも車で十分くらいはかかるだろう。


 もう少し肩の力を抜いた方がいいと思うが……。


 これもまた経験ってね。

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