綾辻 姫菜
最近サブタイトルのセンスがないのに気づきました。
もっと精進します。
「お腹が……すいた」
拠点に戻り、やっと一息ついたところで綾辻は開口一番にそう言った。
「もう丸一日……何も食べて……ない」
「あー、分かった……ちょっと待ってろ、なんか作ってきてやるから」
俺は綾辻と鈴華をリビングに残して台所に向かう。
まだ二人の仲に進展はないようで沈黙が続いている。
ここで俺が抜けるのは申し訳がない気もするが、いつまでもギスギスしているのは居心地が悪い。
この機会に仲良くなってくれればいいのだが……。
俺は腹が空いたと言う綾辻の要望に応えるため、早い、美味い、量が多いの三拍子揃った料理――パスタを作っていく。
「まずはお湯を沸かさないとな」
◆
一方その頃、リビングでは。
「え、えっとあの……綾辻、さん?」
「なに……」
私の質問に綾辻さんは素っ気なく返す。
先輩との会話を聞く限り人間不信、らしいけど目もまともに合わせてくれないのはちょっとキツイな。
「えっと、先輩とは……どういった関係なんですか?」
「さっきの話を聞いてたならわかるはず……元クラスメイト……」
「で、でも……本当にそれだけですか?」
「……あなたは……黒っちのこと、好き……なの?」
綾辻は唐突にとんでもないことを口走った。
「えっと……それは」
もちろん好き、異性としても、人間としても。
でも、それを会ったばかりのこの人に打ち明けるのは気がひける。
「……言いたくないなら別にいい……もう分かったから」
「え?」
しばらくの間沈黙が続く。
「私が黒っちと会ったのは……一年ぶりなの」
そして綾辻さんがそれを破る。
が、彼女の言葉に疑問が浮かぶ。
「どういうことですか? 元クラスメイト……なんですよね」
「そう……元。 一年前まではそうだった」
彼女は悲しげな表情を浮かべながら語り出す。
「私は……コミュニケーションが得意な方じゃ……なかった」
私はなんの話かわからなかったが、取り敢えず相槌をうっておく。
「そのせいで……私は……クラスではイジメられてた。みんな私とは話なんてしてくれないし、物を隠されたりとか、変な噂を流されたりとかも……あった」
この話に私はなんだか親近感を覚えた。
「でも、黒っちだけ……ちがった。私にも話しかけてくれた……それが、嬉しかった」
綾辻さんはここに来て初めて笑みをこぼす……が、それはすぐに悲哀の色に変わる。
「けど……いつの間にか虐めのターゲットは、私から黒っちに変わってた……それは多分、黒っちが私と一緒にいたから……私なんかと喋ってたから……だから私は……学校を辞めたの」
俯いてしまった彼女の今の表情は分からない。
でも、決して良いものではないのだろう。
「卑怯……だよね……私は一人だけ逃げちゃった……黒っちの事も考えないで。だから……私には黒っちを好きになる資格なんて……ないの」
「……そう、でしょうか? 先輩、綾辻さんに会えて嬉しそうでしたよ。それに、そんな事を言うってことはやっぱり好き……なんですよね、先輩のこと」
「う……ん。そうかもしれない。でも、駄目……私が黒っちを好きになっちゃ……それが私のせめてもの贖罪だから……」
綾辻さんは私の言葉に頬を染めて肯定するが、罪の意識からか先輩のことを好きになってはいけないと思い込んでしまっている。
先輩は、そんな贖罪望んでないと思うけど。
「それって贖罪になるんでしょうか?」
だから私は、それを否定する。
「綾辻さんのそれは贖罪じゃなくって自己満足です。それじゃあ罪を償うことなんて出来ませんよ!」
例え、先輩を狙うライバルが増えようとも。
私は彼女を放って置けなかった。
「じゃあ、どうすれば……」
「簡単です、先輩を不幸にした分だけ、幸せにしてあげるんです! それが、綾辻さんにできる最高の贖罪だと、私は思います」
「でも、そんなのが本当に私の贖罪になるの? それに、貴方だって……黒っちのこと……好きなんじゃないの? 」
「はい、好きですよ」
さっきまで、それを言うのを戸惑っていた私だけど、今この人にこの気持ちを教えるのに迷いはない。
「それに、いざとなったら二人一緒に付き合っちゃえばいいんです。こんな状況で倫理がなんだ……なんて言う人いませんよ……たぶん」
「でも……」
未だに綾辻さんは乗り気ではない。
さてどうしようか?
「じゃあ、私が先輩を貰ってもいいんですね……」
「そ、れは……やだ……」
「それは我儘ですよ……曖昧な気持ちは先輩の事も不幸にしますよ。自分の気持ちに素直になって下さい!」
「う……うぅ……」
「それに多分、先輩だって綾辻さんのこと憎からず思っているはずです。じゃないと一人でいる女の子に話しかけたりなんかしないと思いますよ?」
「そう……なの?」
「はい……そうです」
「う……ん。でも、そっかぁ……。なら、私は黒っちを幸せにしてあげる……勿論貴方よりもね、鈴華……」
「私の名前……初めて呼んでくれましたね」
「ん……私の事も、名前で呼んで……そっちの方が……いい」
「はい、わかりました。……姫菜さん」
お互い多少の照れがはいってしまったが、最初と比べると大きな進歩だ。
こうして女子二人の恋愛同盟が締結されたのだった。




