三人目
「大丈夫か、鈴華!?」
「は、はい。もう傷は塞いだので痛みはありません」
俺は残りのMPなんてものは考えずに周囲のコボルトを一掃し、鈴華に駆け寄る。
鈴華の服には血の滲んだ跡が残っているが、『光魔法』による治癒のおかげで傷は無くなったようだ。
ホッと胸をなで下ろすが安心したのも束の間、また更なるコボルトが特攻をかけてくる。
まるで死ぬ事に恐怖なんて感じていないかのような理性のない獣の瞳が俺達に向いている。
「くっそが、[影縛]! ……あれ?」
魔法が……発動しない。
なぜ? と言う疑問が頭に浮かんだがすぐにハッと思い出した。
「MP切れ……」
失策だ。考えなしに魔法を使いすぎた。
節約できるところはいっぱいあったはずなのに!
後悔も今となっては意味がない。
考えているうちにもコボルトは此方へ向かう足を止めることはない。
「先輩……私が」
鈴華は疲労が溜まって動かない足を叩いて喝を入れ、俺の前に立つ。
「絶対守ります」
コボルトは足を動かしながら剣を振るう。
勢いの乗ったその剣閃は鈴華の脳天目掛けて振るわれる。
あまりの疲労に体が思い通りに動かないのか、盾も構えられていない。
俺は彼女の死を幻視した。
が、その後に聞こえたのは肉を裂く音ではなくコボルトの体が崩れ落ち、倒れる音だった。
既に死体となったそれに目を向けると眉間に一つの風穴が開いていた。
誰がなんのためにやったのかという謎は残る。残るが、今はそれよりも此処から逃げ出すのが先決。
へたり込んでしまった鈴華に肩を貸し、移動する。
俺たちの周りのコボルト達は誰かは分からないが銃声の主が始末してくれている。
何が目的で俺達を助けたのかはわからないが、助かった。
あれが無かったら俺達、特に鈴華は確実に死んでいただろう。
◆
「助かった……」
「はい……運が良かったです」
命の危機から奇跡的に助かった俺たちは安堵の声を漏らした。
「大……丈夫、だった?」
俺の横から聞き覚えのない声が聞こえた。
「はぇ?」
あまりの突然な出来事に間抜けな声を晒してしまった。恥ずかしい。
いつのまにか俺たちの気づかない間にそこに立っていたのはゴッツい銃を肩に携えた黒髪ロングの巨乳少女だった。
というかこいつ、どっかで見たことがあるような。
「あっ……お前……もしかして綾辻か?」
「ん……覚えてたんだ……久しぶり……黒っち」
――そう、本当に久しぶりの、一年越しの再会。
「元気、だったか?」
「元気……と言えなくもない……かもしれない」
「どっちだよそれ」
お互いに軽口を言い合う。
ああ、久しぶりだな……この感じ。
「えっと、先輩……この方は?」
遠慮がちに鈴華がコソコソと尋ねてくる。
「あっと、そうだった。紹介する、こいつは綾辻 姫菜。元クラスメイトだ。んで、綾辻、こいつは護城 鈴華。今はこいつと一緒に行動してる」
「そう……よろしく」
「あ、はいこちらこそよろしくお願いします」
二人はお互いまだ遠慮があるのかどこからよそよそしい。
「そういや綾辻お前、今は一人なのか?」
「ん……見たらわかるはず」
そっけない言葉とジト目を向けられる。
これもまた、懐かしい。
「じゃあ、さ。俺たちと一緒に来ないか?」
「え……と、でも私は……」
「俺は、あいつらみたいなことはしない。それはお前だって分かってるはずだ」
「でも……」
「それともまだ、人が怖いのか?」
「ん……」
「そうか……」
俺は重い、重い息を吐く。
――これは……俺の責任だ。こいつがこうなったのは俺の責任だ。
だから――。
「それならなおのこと、俺たちと一緒の方がいい。頭のいいお前なら分かるはずだ、こんな状況で一人でいることの危険性を。お前が言うようにまだ人間が怖いなら、人に襲われた時どうするんだ……一人でいるって事はそんな状況になっても誰も助けてくれないって事だぞ」
「う……相変わらず、痛いとこ……ついてくる。……わかった、黒っち達と一緒にいく……でも条件が……ある」
「なんだ?」
相変わらず所々で途切れる声に耳を傾ける。
「私のご飯は一日四食、ご飯は大盛り……で」
「……大食漢は相変わらずか」
「む……健啖家と……言って」
俺と綾瀬は互いにふふっと笑いを漏らす。
「なんだか仲良さげですね、先輩」
「まあ、元クラスメイトだしな」
「本当にそれだけですか?」
鈴華は疑わしげな目を向けてくる。
俺は何も悪いことなんてしていないはずなのに何処か罪悪感を覚える目だ。
「まあ、何はともあれ、俺たち三人はこれで仲間? になったわけだから、喧嘩とかはすんなよ」
「あ、当たり前です」
「もちろん……しない。私は……そんな注意されるほど……子供じゃない」
「それならいいんだけどな……」
二人目のヒロイン登場!
さて、彼女の過去とは!?




