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銀のコボルト

 そいつ――コボルトは見た目からして普通のコボルトとは違っていた。


 まずは色。

 通常、コボルトは茶色の体毛で覆われている。

 しかし、こいつの体毛はキラキラとした銀色に輝いていた。


 これだけ見ても異質だが、それよりも目を引くのがその肉体だ。


 基本、コボルトの身長は150センチ程度で線が細い。

 だが、こいつはどうだ。

 180センチ程の長身に鍛え上げられた筋肉。


 その肉体からは押し潰すようなプレッシャーを感じる。


 俺はこちらを観察するように見つめるガチムチコボルトに警戒しながら何とか立ち上がろうとする、がやはり激痛が襲う。

 俺、お得意のやせ我慢を発動させながら立ち上がる。

 この時もうすでに『自己治癒』が働いているのに気づいた。


 鈴華の飛ばされた方を見ると、よろめきながらも剣を杖代わりに立ち上がっていた。


 なんのつもりかまだ襲って来ようとしないガチムチコボルトに内心感謝しながら『鑑識眼』を使用する。



 ステータス

 ――シルバリーコボルト


 職業:――

 レベル:28


 スキル

『体術』Lv.12

『縮地』Lv.10

『咆哮』Lv.10

『威圧』Lv.9

『剛力』Lv.6

『人語理解』Lv.5


 魔法



 ――


「つよ……過ぎだろぉが」


 思わず声に出る。


 絶望感が俺を襲う。


 今の俺が、倒せるか? こいつを。


 無理だ。


 ならどうする? 逃げるか?


 ――いや、それも無理。


 じゃあどうする。

 そんなの決まってる。


「逃げろ、鈴華! 俺がなんとか時間を稼いでやる!!」


 顔は向けずに、叫ぶ。


 俺だって死ぬのは怖い。


 これまでに何度も死にそうになったことはあった。自殺しようと思ったこともあった。


 でも今は、何故かそれ以上に……怖い。


 復讐を果たすことができないまま、死んでしまうのが、悔しいし怖い。


 足がガクガクと震えて止まらない。


 けど、逃げても戦ってもダメなら俺は精々抗ってから死にたい。


 でも、それに鈴華を付き合わせるわけにはいかない。


 俺がここで少しでも踏ん張れば鈴華が生き残る可能性が増えることになる。


 震える足に喝を入れる。


「早く逃げろ、鈴華!」


 再度、俺は彼女に叫ぶ。


 しかし、彼女は立ち去ろうとはしない。


「なにやってん――」


「先輩!」


 彼女は叫ぶ。

 俺に対抗するように。


「私は逃げません!!」


 絶対に、と強調する。


 少しだけ首を動かして彼女を見ると、決意の篭った瞳を宿しているように感じた。


「私は、先輩にご恩を返すまで死にません!

 そして先輩も殺させません! 私が、私が先輩を守ります!!」


 啖呵を切った鈴華は眼光鋭く敵を見据える。


「わかったよ……死んでも知らねぇぞ」


 何を言っても聞きそうにない鈴華に呆れながら俺はハァと重く溜息をつく。


「俺が援護する、好きに動け」


「はい!」


 俺の言葉に鈴華は威勢良く返事すると同時に走り出す。


 対するシルバリーコボルトはニヤリと口角を上げると拳を構えた。


 鈴華の剣の間合いに入った。


 その瞬間。


「[影縛]!」


 俺は魔法を発動させる。


 決まった、と思ったその時、奴は一瞬で姿を消した。


 ――どこだ!


 二人してあたりをキョロキョロと見渡す。


「っ!? 先輩!」


 鈴華が声を上げる。


 俺の頭上に黒い影が現れる。


「上!?」


 シルバリーコボルトは上から降ってきた。


 恐らくはその強靭な脚力でもって超長距離をジャンプして俺の頭上まで飛んできたのだろう。


 何て奴だ。


 奴は空中で拳を握りしめてその豪腕が俺の脳天をかち割ろうとする。


 がしかし、それは失敗に終わる。


「『守護障壁』!!」


 どんな攻撃も一日に一度だけ完全に守ってくれる鈴華の固有スキルだ。


 でも、使えるのはこれっきり。


 もう頼れない。

 

 俺は障壁のノックバックで尻餅をついたシルバリーコボルトを無視して後退する。


 その隙に鈴華もこちらに寄ってくる。


 のそり、と立ち上がったシルバリーコボルトはやはりまたニヤリと口角を上げた。


 それがまた、俺たちに恐怖を掻き立たせる。


 ゆっくり、一歩ずつ、奴は歩いてくる。


 鈴華は左手に持った盾を前に、右手の剣を後ろにして構えた。


 今度は消えたわけではなかった。


 俺でも目に見える程度のゆっくりとした攻撃。


 だが、強烈。


 ガコンという音と共に鈴華はまた吹き飛ばされる。


 よく見ると盾が歪にヘコんでいる。

 

 あの盾は一応鉄で出来ていたはず。

 それを素手で、しかも本気も出さずまるで軽く殴っただけで行うというのは余りにも衝撃的だった。


 次の獲物として俺を捉えたのかまたゆっくりと歩き出す。


 俺はせめてもの抵抗としてひたすらに魔法を打ち込む。


 さっき取ったばかりの魔法もぶっつけ本番で使っていく。


 [闇球]、[影縛]、[闇弾]、[闇槍]、[影鞭]、[雷球]と攻撃系の魔法を使いまくる。


 しかし、どれもこれも全く当たる気配がしない。


『この程度か?』


 どこからか声が聞こえる。


 幻聴? 何て思っていると……気づいた。


「い、今の声は……もしかしてお前か?」


 俺はシルバリーコボルトを指差しながらそう尋ねた。



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