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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千百九十六


「天才だが、マジメ過ぎたところはある。盗賊や『悪徳商人』さえも、上手く使うべきなのだ。政治が何のために腐敗という側面を持っていると思うんだ?」

「耳に痛くもある。私には、向いていない分野だ」

「公明正大な王は好まれる。それは王道ではあるが、理論だけでは世の中は回らない」

「……反省点は、多いよ。悪王になるつもりはないけれど」




「そうだ。それも民草を破滅から救う選択だろう。乱世でなければ、お前のような潔癖症の王は人々をおそらく豊かにするだろうさ。だが、実利も考えるべきだ」

「清濁併せ吞むのも、政治的な器ということかな」

「あくまで、私のような会計将校……いや、詐欺師の言い分ではある。無視してくれても構わないが、現状では最高の兵站ルートを提供してやれるだろう。そいつらに罰を与えないのならば」

「密輸仲間を守ってやればいいわけか。帝国軍との戦いに協力するのなら、オレは受け入れてやれるぜ」




―――ソルジェは乱世の王の器を、間違いなく持っている。

敵か味方か、それで全てを割り切れるような価値観は乱世においては強さがあった。

名君の質を有するメイウェイが、呑み込まれつつあるこの歴史の激流においてもね。

メイウェイの数少ない欠点は、善良さだということさ……。




―――大陸全土を支配する帝国と戦う、それはきれいごとだけでは成せない。

あらゆる要素を総動員して、ようやく五分の勝負となるものだ。

ソルジェは冒険の日々で、それを修得しつつある。

ボクからすればありがたく、メイウェイからすれば劣等感を刺激する事実だった……。




「勝つためだ。それに、死なせないためでもある。最良の兵站を掌握できれば、疲弊した負傷兵も死なずに済むぜ。それだけじゃなく、攻め込みやすくもなる」

「……ああ、それは私にも分かるよ」

「潔癖症の将軍殿には、私は邪悪に映るだろう。それは実のところ正しい。私は邪悪ではあるからな」

「そうだね。君は、間違いなく……悪ではあるんだ。でも、この乱世では誰しもが罪と血に呪われているようなものだ」




「詩的な表現をありがとう。居心地が良くなるよ」

「……情報の提供を、少尉」

「ああ。国境沿いの『悪徳商人』について教えよう。酒屋と小麦問屋が多い」

「『ペイルカ』の商人と、大昔から結びついていたわけか」




「その通りだよ、ソルジェ・ストラウス。侵略したとき、優先して取り込むべき商人というものがいるのだ。テストしてやろう。何がいる?」

「テストだって。めちゃくちゃ不得意な分野じゃある。だが……思うに、農民と関わりがある」

「そうだ。農民を敵に回すべきではないし、敵に回すのなら泣き所を押さえておくべきだ。虐殺するなよ、お前は」

「オレは農民に敬意を持っている。ストラウス家は貴族だが、ちゃんと農地を耕しにも出かけたぞ」




「それはいい性質だ。終生、全うするようにするがいい。で。続きだ」

「輸送能力がある。酒にしろ小麦にしろ、運ぶための馬や馬車がある」

「お前の好きな、そして最終的には捨てたがっている馬車だな」

「捨てたいわけじゃない。波状攻撃を仕掛けるためには必要だし、突撃のためにも拠点というものはいるんだ」




「それで。三つ目は?」

「オレならば鍛冶屋だ。君は違う意見を持つかもしれないが。優先順位は高いだろう」

「そうだな。私ならば、どこを狙うと思う?」

「銀行だ。オレも、今後はその方針をアタマにいれながら戦をしようと考えている。学びの多い日だよ」



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