第四話 『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』 その千百八十七
―――我らがカミラにとっては、なかなか難しいハナシだったようだけれど。
カミラも必死に、学ぼうと努力している。
彼女なりの自覚の芽生えだろう、ガルーナ王国の王妃の一人になる女性だ。
ビジネスについても詳しくならなければならない、勉強あるのみだった……。
「確実にお金になるための材料があるから、それに……銀行がお金を貸してくれるというわけっすね。ソルジェさまが、キュレネイちゃんと『モロー』の銀行に行ったときも思ったっすけど。銀行って、儲かりそうな話題に弱いっすよね」
「そうですね。とくに『モロー』の銀行は、かなり強気な取引をしていました。ライザ・ソナーズが、貿易関連の新規産業に金を貸せと脅していたと」
「ふむ。それは、つまり……彼女の支配できる新しい帝国系の企業を、援助しようとしていたということっすかね」
「ええ。正しい見方です」
「なるほど。彼女は、とっても賢い女性じゃあったみたいっすね」
「善悪を度外視したとき、彼女は素晴らしい政治家ではあったのでしょう」
「評価はあちこちで高かったみたいっす。でも、敵には容赦はなくて……いや、そういう人物のほうが、政治家とか王族としては正しいっすかね?」
「時と場合による、としか」
「……ドゥーニア姫は、ソルジェさまの特許に集まって来そうな銀行に、興味があるわけっすね?」
「ええ。彼女のような人物なら、食いつくでしょう。『プレイレス』の銀行網に、介入するチャンスだと思ってくれるはず……ああ、もちろん、それは別に悪いことじゃありません。むしろ、政治的・歴史的に仲良くなれるはずのない我々のあいだに、妥協点を作るためには有効なんです」
「お金儲けなら、歴史的な経緯を無視できる……っすか?」
「そうですね。露骨に言えば。農民の皆さんの年貢を減らすことと、各地の余剰生産物の売買で領主たちが利益を産むためにも……『プレイレス』の銀行網は、非常に強い武器になります。一番、儲かる方法としては、『プレイレス』の商社に余剰生産物を売り渡すことだから」
「文明が、いちばん進んでいる土地っすからね。どこの町も大きくて、お金持ちは多い。なるほど、ドゥーニア姫は実利を重んじるお方でもあられるので……食いついて来そうっすね」
「はい。交渉を有利に、というか。交渉を確実に飲んでいただくには悪くない方法だと思います。私という、ストラウス卿の『特許管理人』を経て、ストラウス卿が築けるはずのビジネスの輪に、ドゥーニア姫自身の……イルカルラの利益を、ねじ込むために」
「やっぱり、銀貨三十枚では安すぎるっすね」
「いいんです。ストラウス卿の特許管理人になれたなら、それはとてつもなく光栄なことです。かりそめの役目であったとしても」
「いやいや、きっとかりそめには終わらないっすよ。もちろん、あなたがガルーナを選んでくれるなら、道は開くはずっす」
「はい。今は、その」
「ええ。戦に集中したいっすよね」
「そうです。そのために、身に着けた知識を使いたい……ドゥーニア姫との和解が成立すれば、『プレイレス』も北部山脈を越える通商ルートを使えるんだ」




