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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千百七十九


「ええ。ほんと、安全な距離とか分かれば、覚悟もしやすいというか。無意味に怯えなくて済むというか」

「ふむ。殺せる距離が明確になり、ワクワクするとはならんのだな」

「兵士は、そうみたいです。戦士に比べて、ちょっと、『基礎的勇気の量』が低いものだと思っていただければ」

「まあ、そんなことはどうでもいい。指揮官の考え通りの距離を、新兵に過ぎないおぬしらでも撃てるのであれば、とてつもなく有益である」




「はい。そうだと思います。この時計が、量産できるのであれば……」

「フクロウを飛ばす。遠からず、ヤツが量産を始めるであろう」

「ギンドウ・アーヴィング氏、兵士の味方ですね」

「ああ。うむ。そうなのかもしれん。スケベなクズだがな」




「スケベなんですね、ギンドウ・アーヴィング氏。我らが兵士の守護者かもしれない方」

「そうだぞ。私とソルジェの逢瀬を……いや、何でもない!」

「は、はい。人妻と旦那様の逢瀬……」

「さっさと、弓矢についての考えに戻るのだ」




「そ、そうですね。矢を、より多く用意できれば強さがありますよね」

「うむ。当然である。戦場の花は、やはり弓矢であるからな!」

「製造方法を増やすために、各国が努力をしているとは思うんです」

「それは当然である。敵から奪うことに、執着するほどには……矢羽根輸出を巡っての戦争すら、あったのだぞ、北の土地では」




「意外と、複合素材ですよね」

「ああ。鋼の柄となる木も、接着剤もいるし、弦の製造についても様々ある。『森のエルフ』の弓など、完成するまで二年はかかる高級品であるぞ」

「だからこその高性能なのですね。軽くて、強くて、構成している部品がブレない」

「安物とは違う。弓はな。しかし、矢については……工夫次第で、早く作れるかも」




「……『プレイレス』人としては、少し、言いにくいのですが」

「ふむ。聞いてやるぞ。何でも言え」

「『イルカルラ』を経由するようにして、北と南の素材の交流をすればいいんじゃないでしょうかね」

「……ふ、む。すでに、諸々と物資の融通は、してはいるのだが……」




「矢については、おそらくどこの勢力も提供しにくいと思います。自分たちの、メインの兵器ですし」

「それは、そうであるな」

「でも、国や地域によって、産出される物資には違いがあります。ドワーフの国あたりは、鋼や金属……まあ、矢じりの製造能力が高いでしょうし……エルフの地域って、木々が豊富。矢の柄の原材料方法ですよね。ケットシーの地域は、ガチョウ産業が豊富です」

「『プレイレス』のケットシーは、ガチョウが好きなのか?」




「え、ええ。大陸全土なのかは分かりません。でも、『十大大学』に通っていたケットシーの知人、友人の大半は、ガチョウ料理が好きでしたね。食べられるし、卵も……それに何より」

「風切り羽根が、矢羽根となるな」

「『中海』の西部沿岸地域だと、つまり、このあたりだとチョウザメが採れるんです」

「浮袋膠が採れるな!最も強い接着剤……っ。『森のエルフ』の漆と小麦粉を混ぜた接着剤よりも強く、矢の部品をくっつけるのだ……っ」




「高級品ですけど。まあ、その。思うんですけれど。各地から、ご当地では余っている矢の素材を集めるんです。矢の製法は、土地において、ちょっと違っているみたいですし」

「うむ。昔、漆と小麦粉の接着剤の強さを知らんかったギンドウに笑われた記憶があるな。忌々しい。だが、性能を知らせてやれば、ヤツすら黙った」

「設計思想や、素材が多少違ったとしても……製造技法が伝わっていれば、職人ならば作りあげるのではないでしょうか」

「ああ。おそらく、容易いだろう。矢の違いも、まあ、射手ならば使えば慣れる。何というか、その、おぬし……とてつもなくいいアイデアを口にしたような気がするぞ。『各地の余りもの』で大量の矢を作ろうと言うのだからな!」




「は、はい。我ながら、上手くいけば……かなりのものになるかなって」

「さすがは、学生!賢い!」

「ま、まあ。『イルカルラ』の協力が必要ですけれどね。あの土地を経由できれば、各地の素材を合わせることも可能です。今までは、無理でしたが」

「政治的な対立があったものな。今でも、わだかまりはあるようだが」




「『プレイレス』が奴隷として酷使してきた巨人族によって、生まれた国ですから。許してくれと言っても、許してもらえるはずもなく……あちらも、ボクらを憎み、襲撃をしてきたことも多々あって……歴史的な因縁というものは、とても厄介でして」

「だが、今では仲間である」

「そうです。だからこそ、こういうルートも使えるんです。『余りもの』は、より広い土地で交換したほうが強いでしょう?北部の山脈を越えれば、より北方と……融通が利くんです」

「ああ。帝国には作れぬ、組み合わせだな。各地の亜人種が好み、『余るほど量産していたもの』。帝国軍に侵略されたとき、いちばんに隠すものでもある。武器の材料を奪われるほど、間抜けたことはないからな」




「いいアイデアだと思います。『プレイレス』では、持ち掛けられないでしょうけれど。『自由同盟』……というか、ストラウス卿なら、やれるでしょう。『プレイレス』でも、『イルカルラ』でも英雄なんですからね」





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