表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5226/5232

第四話 『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』 その千百七十八


「うむ。貧乏性の結果もあったかもしれないが、猟兵はガルフに教え込まれているぞ。矢を盗めとな。兵士教育にも、この種の考えを徹底した方がいいかもしれん」

「ですね。教本に書いて、配るべきものがたくさんありますよ、医学だけでなく……いや、ついでに、医学書に書いておけばいいのか。帝国軍の敵の射撃術や、狙うべき点について」

「おお。それは正しいな。さすがに賢いぞ」

「い、いえいえ。まあ、その、具体的な内容までは、思いつけないのが、ボクらの限界ではありますが……」




「案ずるな。私がいるぞ。弓の戦術については、誰よりも詳しいはずだ。兵士が、どういったものを好むまでかは分からんのがアレだが……そこは」

「はい。ボクが、代わりに質問を。『敵の矢を効率的に回収する戦術』はありますか?」

「風を利用するべきだ。『追い風に乗せて一発だけ放て。そして、その直後、数歩だけ下がるのだ』。敵の矢が無数に落ちて来る。それを回収すればいい。一財産になるぞ」

「なる、ほど。敵との間合いを間違わなければ……間違わない方法とか、あります?」




「撃たせることだな。囮でもいい、軽騎兵でもなんでもいい。そいつに向けて、撃たせる。あるいは、あらかじめ『しるし』を戦場に立てておくことだ。旗とか、目印である。自軍の矢がそこまで届くという印があれば、敵の矢も似た距離で飛んでくるぞ」

「目印、それは、ボクたちのような練度の低い兵士にはありがたいです」

「狩人でも隊に混ぜておくべきではあるが、その種の対策でも有効だな。あとは、帝国軍は顔が見える距離で、個別の狙撃を狙いがちである。そして、白目が見える距離まで、必殺の射撃を温存しようとすることもある。これらも伝えておけばいいかもしれん。敵の戦闘への思想が読み解けるぞ」

「そ、それは、たしかに興味深い……敵の動きからも、色々と分かるものなのですね」




「うむ。敵が強く攻撃性が高いのであれば、反撃を誘い、ムダな矢を撃たせたいところだ。撃ち合いながら下がるのが、定石だな」

「間合いの管理が、必要そうですね……精確に距離が分かれば、いいのですが」

「感覚でおよそ分かる……というのは、戦士ではなく兵士には無理な注文か」

「ですね。そういう認識だと助かります」




「では。あれだ。算数の出番だろう。『星座時計』で、おぬしら敵との距離を精確に測る方法を作れないだろうか。矢は、だいたい、筋力と、角度であるからな」




―――我らが弓姫は、やはり弓術に対しては大陸で一番だったらしい。

知的な学生集団との対話も、その発明には影響しているだろうけれどね。

リエル単独では、きっと思いつけなかったとは思う。

戦士としての考えを捨てなければ、敵との距離など見て悟れと言い放つだろうから……。




―――兵士という、『戦士になれない弱者』のためのコツ。

それの一つに、我らが弓姫はとんでもない効率性をもたらそうとしている。

『星座時計』を使って、敵との距離を精確に測る方法を見つけろだって。

算数という言葉選びは、かなり可愛らしいものだったけれど……。




「やれるであろう。『星座時計』は、こういうものだぞ」

「これは、すごく……繊細ですね。えと、ボクらが使っているものは、天体観測用で、もう少し大きいのですが」

「『メルカ』製のものだ。彼女たちは、とても天体観測を好んでいたようだからな。『星』と呼ばれる、空より落ちて来た『ゼルアガ』を祀っていた……いや、支配されていたから。それとも研究するために……うむ、理由はよく知らないが、天体観測を好んで、これらを作っていた」

「これほど小型化できるのなら、使えますね……でも、『メルカ』という地域の名をボクは聞いたことがありません。大量生産とか、できますかね?」




「『メルカ・コルン』たちに言っても、成し遂げそうな気がするが。くだんのギンドウ。あいつに言えば、『必要な仕組みだけ抜き出して改良ぐらいはする』」

「天才発明家じゃないですか、ギンドウ・アーヴィング氏」

「調子に乗らせたくないから、そんな言葉をヤツに対して使うべきではない」

「そ、そうですか。その、でも、あの。すごいコトですよ、それ……」




「これを見るがいい。ギンドウ制作の、懐中時計である」

「う、うわ。これ、何ですか……めちゃくちゃ、精巧な仕掛け……」

「あいつは、まあ、たしかに。クソ。気に食わないが、天才発明家ではある。あいつに頼めば、創り上げるだろう。測量に必要な点だけ抜いてな。それで、やれるのか?角度と距離を」

「や、やれますよ。数学的には、別に難しくもありませんからね」




「だ、だと思ったぞっ!」




―――強がりだった、リエルにはその計算方法は思いつかなかったからね。

天才である戦士には、思いつくまでもないことだった。

風を読めとか音を聴けとか、敵の構えから悟れとか。

より難解なことばかりを考えるため、弱者の苦労は分からなかったのだよ……。




「その、星座時計の使い方は分かるな?」

「ええ。これ、すごすぎです。ミスリルで作られているんですね。剣の柄に固定して……この穴をのぞきながら、このつまみを動かすと……はい。あそこのオークの木のてっぺんまでの角度、出ました」

「距離は、分かるな?」

「はい。おそらく、180メートル前後。早見表を作っていれば、戦場でもすぐ、誰にでも、敵との距離が分かるようになる。つまり」




「とっても、兵士に向くではないか!」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ