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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話 『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』 その千百七十七


―――リエルにとって、戦士とは崇高な存在であるし。

戦争は強さを示す、聖なる『お祭り』ですらある。

それは命を軽んじているわけでもなく、彼女が本質的に戦士なだけだった。

薬草医として多くを救ってもいるのも、命の軽視を否定してくれる事実だね……。




―――無駄に消費されるべきではないが、戦争でそれを捧げるのは尊い。

『森のエルフ』の王族らしい、戦士の哲学の体現者でもある。

ガルフの猟兵哲学に対して、わずかだが確実なズレでもあるけれど。

戦士という枠のなかでは無視していい誤差範囲であるよ、兵士哲学に比べればね……。




―――リエルは兵士を、それほど理解してやれなかったのさ。

帝国兵はまさにそうだよ、例外的な騎士はいくらかいたものの。

戦士とは階級であり、生まれもっての『敵を殺すべき存在』である。

王族や貴族や騎士の血筋には、その自覚が良くも悪くも最初からあった……。




「戦士には、お前たちは恐らくなれない」

「そ、そうかもしれません」

「悪いことではない。これは実力や才能であるよりも先に、生まれもったものだろう。おかしな言い方をすれば、猟兵のなかにさえ戦士と呼び難い者もいるのだ」

「最強の、猟兵が……ですか?」




「そう。明らかに無双の戦闘能力はあるものの、ギンドウ・アーヴィングというハーフ・エルフの男は戦士とは呼び難い。盗賊、クズ野郎、詐欺師……いや、やはり盗人」

「窃盗犯あつかいを、重ねておられますね」

「盗賊も優れた戦士ではあるからな。だから、それよりも、もっと低俗な何かにあいつの本質は近しいのだ。『雷』に関しては、私よりもはるかに才能があるほどの魔術師でもあるが、それを台無しにするに相応しいダメ人間成分があるのだ」

「すごいのか、ダメ人間なのか、よく分からない方なのですね」




「少なくとも、あいつを生粋の戦士などと呼ぶ日は来ないだろう。ただし、それを差し引いても猟兵だ。戦士としての性格や生まれであれば、あいつは誰にも負けなかったかもしれない。だが、ありえなかった道を妄想するなど、むなしいことだ」

「え、ええ」

「とにかく。戦士を大量に作るなどという試みには、難易度が高い。だが、兵士ならば作れる。そこで、兵士とは何だ?」

「リエルさんの戦士像と対比すれば、『義務や法律によって命令される戦闘要員』というところでしょうか」




「いい線だな。そんな気がする。少なくとも戦士は、法律に命じられたからではなく戦士だから戦っているのだ。敵と殺し合うために生まれてきたのだしな!」

「生まれは、変えられませんからね」

「そうだ。絶対とは言わんが、大量に作るとなれば難しい。現実的になれば、兵士をたくさん作るべきなのだ」

「法律を理解すれば、いい……という考えは、ちょっと違いますね」




「うむ。もっと露骨に、ただ命令に従ってくれるとありがたい、かもしれない」

「そう、ですね。自主的な判断をするよりも、きっと……気楽だ」

「殺すことは責任を伴うものだ。戦士は職業倫理に縛られるべきだが、帝国兵のそれを見ていると違っていることに気が付いた。あれらは、職業倫理をどこかに置き去りにしている。それゆえに、戦士的な迷いもないようだ。利益、報酬、ユアンダートの用意したそれらに、どこまでも盲目的に従えているからこその強さもある」

「それを、真似するべき、ですね。戦士を大量には作れない以上」




「十分な強さである。帝国兵と互角の強さならば、私のゼファー……竜がいるだけで、戦では必勝となるだろう」

「圧倒的な強さですからね、黒竜ゼファーは我々の希望ですよ」

「うむ。耳心地のいい言葉である。もっと言って欲しくもあるが、今は、戦について相談したいのだ。ゼファーの存在を、どうすれば……より『自由同盟』を有利に機能させられるだろうか?」

「戦闘面はもちろんですが。情報戦の時点で、素晴らしく機能しているように思えます。敵は、常に上空を警戒していますし……それに、その……これは、ボクの友人が『ペイルカ』から回収した帝国軍の情報なのですが……矢の数に、変化があったようです」




「ふむ。私の専門分野のニオイがするな。なれば、当ててやろう……ゼファー対策には、重たい矢を使っている。ゼファーの鱗を穿つには、攻城戦用の太い弓での、迎角射撃にて、重い矢を放つほかない。携行するには、少しばかり無理が出て来るな」

「はい。さすがは、リエルさまです。正解しておられます」

「マイク・クーガーは守りの戦いの天才だったと聞いた。ゼファーに対して、高い櫓も用意していたぞ。あの男が帝国軍の誉とされていたのならば、基本的な対処は似通うだろう」

「きっと、そうなると思います」




「矢じりに使う鋼が、増えるな。柄として使われる枝も、わずかに太くなる。うむ。これは、冬の決戦にも向く傾向だ」

「物資不足、木材を消費させるわけですね」

「鋭いな。帝国兵には、しゃべるなよ」

「は、はいっ。他言はしませんっ」




「まあ、帝国軍も気づくであろうが。連中は、止まらん。『より高く扱える武器』を、無意味に好みがちであるからな」

「なる、ほど。いい武器を選ぶ以前に、高級品志向なんですね。それは、そうか。帝国軍にとって、侵略戦争はビジネスですから」

「ゼファー対策もある以上、強く重い弓と矢が必要とされるのだ。言い訳は立つ。たくさん無駄遣いして、金を稼ごうとする者が帝国軍にはいるものだ」

「強さでもありますが、弱さでもある」





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