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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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5221/5232

第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千百七十三


―――プレイガストの呪術は、ソルジェに向いていたところもある。

難解ではあるものの、強烈な復讐者としての核が同じだったから。

冷静さや知性では取り繕えないほどの狂気も、彼の呪術にはにじむ。

『無理やりあらゆる物質に呪術を仕掛ける』、なんてことだってやれるわけだ……。




―――その種の呪術を使える者は、少し特殊な精神性が必要だからね。

怖がるべきだよ、どこまでその呪術が汚染してしまうのかとか。

ククリとククルは、その点を気にしてもいる。

『あらゆる物質を融かすような水の状態』を、呪術で固定できるなんて……。




―――『空白』なんていう可愛い目くらましならいいけれど、毒性のあるものなら?

錬金術師の知識のある二人は、『空白』の呪術ではなく猛毒を霧に乗せられる。

それは口を通じなくても、肌や目や耳からも染み入る猛毒の霧だ。

怖いから言えない、ソルジェが知ると使うかもしれないからね……。




―――今は、言えなかったんだよ。

それでもいいさ、実のところソルジェもそれには気づいていたからね。

『メルカ・コルン』たちは錬金薬を、その種の目隠しに使っていたと言ったのだから。

戦闘に関する知識について、ソルジェの嗅覚は『狼男』と同等なんだよ……。




―――『無限に人を殺せる毒呪術』、みたいなものだって思いつけるわけだ。

ただし、そんなものが魔術の『風』だとか自然の風に方向性を変えたなら?

対処にこまるのは確かで、下手すると味方に降りかかるかもしれない。

だから大量殺戮の毒呪術は、このときは完成しなかった……。




―――プレイガストも、なかなかの危険人物ではある。

彼はどこか呪いを刻むように、知識の継承をしている節があるからね。

ソルジェと相性は、全とか悪の領域じゃない部分で向いている。

容赦ない攻撃性について、ふたりは共有し合うと強いかもしれない……。




―――何にしても、生きた呪術の師匠を得られたことは大きいよ。

我らが『パンジャール猟兵団』の呪術師は、師匠がいないのが弱点だから。

心理や認知を書き換えるほど、高度な呪術を一から説明してくれる男。

プレイガストのおかげで、猟兵たちは大きな呪術能力を獲得していく……。




「祭祀呪術をより操るためには、儀式。演技を用いるといいのです。世界の文脈を嗅ぎ取り、文化に根差した儀式、祭祀を行う。それで、より広い場所に呪術は到達していく。似ている場所に、届きやすいのです。世界の文脈の場合は、その土地の記憶や歴史を共有する人々。『つながり』、そういうものに、呪術をかけて……大きな力を練り上げるのです」




「面白いな。近いうちに、オレも祭祀呪術を好き放題に使えるかもしれん」

「もちろん。ですが、代償がある。あまり、多用はしないように」

「分かっている。お前が、ずい分と弱っているしな」

「危険なものですが、それだけに。研究すべきです。ユアンダートもまた、祭祀呪術にはこだわるでしょうから」




「ああ。多くを学びたいところだな。平和な時代でヒマなら、何か月か」

「それだけでは足りません。教職であった私が、いくら優秀でも」

「だろうな。呪術も、奥深さがある。オレはアーレスの魔眼のおかげで、呪術を使えているだけだ。仕組みなど、それほど深く考えたこともない」

「直感的に呪術を使える者も、多いのです。体系化しやすいものとは限りません。種族や、ストラウス卿のように肉体的な特性に依存する場合も多い」




「お前は、それとは一線を画している」

「ええ。命そのものと、知識と用いて呪術を作る、没個性で才能の乏しい者です」

「さすがに、それは謙遜が過ぎるな」

「……そうかもしれません。私は、数学や知識、頭脳で呪術を、どうにか操れていますが。これは、何とも難しいものです。どんな数学の問題よりも、複雑な場合もあるし、単純なのに万能性があったりもする」




「本を書いておくといい。後世まで伝えるべきだぞ」

「それをする時間は、おそらくありません」

「いいや。そうとも限らん。リエルの薬は、長寿を呼ぶかもしれん。養生しろ。長く生きてくれるほど、オレたちは助かる」

「……ありがたいお言葉です。善処、いたします」




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