第四話 『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』 その千百七十二
―――ノヴァークには、返事のための言葉はない。
少なくとも打ちひしがれているし、これからの日々を肯定するわけにもいかない。
だが、あくまでもボクたちの側につくということは。
全力の切磋琢磨の運命の、一員となるということだった……。
「分かったよ。オレが、ちゃんとあんたらの要求に応えてみせる。だから、少尉を、殺さないでくれ」
「その言葉が聴けたなら、満足してやれるよ」
「甘いヤツめ。いつか、その甘さに足元をすくわれる」
「そうならないように、周りに頼るとしよう」
―――シドニア・ジャンパーは、また舌打ちしていた。
ソルジェの言葉を、気に入らないようにしないといけない。
一言一句、一挙手一投足。
ソルジェを否定し続けるのが、彼女なりの勝ちパターンだ……。
―――ちょっとでも嫌っていなければ、彼女は自分が許せない。
レヴェータを殺すのは、自分でなければならなかったはず。
それを成し遂げられなかった自分を、いつまでも許したりしないためにも。
彼女は負けないように、動いてくれることになる……。
―――まとまりは生まれているよ、シドニア・ジャンパーさえも。
ちゃんとボクらの側に立ち、嫌々ながらも仕事をしてくれそうだ。
プレイガストはますます、彼女も含めて呪術の知識を伝えていく。
自身の全てを伝えたがっているようだったらしいと、ソルジェは後に伝えた……。
―――それはあながち、大げさなことではなかっただろう。
プレイガストに、生きがいと呼べるものはほとんど残っていない。
復讐のためにも、自分の集大成を残すためにも。
知識の伝授というものは、どこまでも彼らしい選択であったのさ……。




