第四話 『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』 その千百七十一
「うーん。自信はすごい。詐欺の腕前でどうにかするってところは、ダメダメな人なんだけどね!」
「ガキには、分からんさ」
「そうかな?詐欺って、別にいいことじゃないもん。戦争だから、してもいいかなって思うけれどね
「戦争至上主義か何かか?クソガキめ」
「戦争は私たちの仕事だからね。傭兵稼業だもん。詐欺師は、お仕事になるのかな?」
「なるね。偉大な詐欺師は、芸術家みたいなものだ」
「うわあ。ひどいや。言うに事欠いて、芸術家って……ろくでなし!」
「うるさい。ちゃんと、証明してやる。私が戦争で死ぬヤツを減らすさ」
「うん。そこはありがたいよ。とってもね!」
「殺したがりの戦闘狂のくせに、矛盾が多い」
「ガルフおじいちゃんも言っていたけど、職業倫理は大切なんだ。猟兵もそうだし、きっと、あんたもだね!詐欺師でも、誰かを助けられるとすれば……見逃してあげたくなっちゃうもの」
「罪人だよ。お前たちもな。詐欺師は金を狙うだけ。本当に貧しい者からは、奪うこともない。お前らは、違うだろう」
「そうだね。貧乏な子でも戦士になれる。帝国軍はお金やら、『しみんけん』……っていうのが欲しくて入るんでしょ?」
「貧乏人どもを、お前らは殺しまくっている」
「そうかも。でも、貧乏でも武器を取って殺し合いに自分から参加したんだ。殺す覚悟をしたときは、ちゃんと殺される覚悟もしておかないとね」
「殺される覚悟だと?ソルジェ・ストラウス、お前は妹に何を吹き込んでいるんだ?」
「戦士としての価値観と、猟兵としての義務。職業倫理だよ。オレの妹は、誰よりも正しい」
「えへへ!そうだよね!あたま、なでなでしてー!」
「おうよ!よしよし。なでなで」
「はー。いい子じゃないかもしれないけど、いい戦士で良かったー!」
―――ボクたちは戦士であり、戦士は人殺しのために生きている。
職業倫理を持つことだけが、ボクたちを邪悪な道から救っているのさ。
詐欺師との違いは、騙してはいないこと。
戦争は殺し合いだからね、殺していい権利は殺されていい権利なんだ……。
「おぞましい連中だ。そうは思わないのか、プレイガスト?」
「まったく、思いませんな」
「お前も、復讐に憑りつかれている。マトモなのは、私だけみたいだ」
「その種の考えに至ったときは、何にせよ極端な見識に囚われているものだ。視野を広げる余地があるでしょう」
「知ったことか。いつか、お前は後悔するぞ。ソルジェ・ストラウスに、祭祀呪術や戦術的な呪術を教えたことを。こいつらは戦闘狂だ。最大限、それらを戦争に利用してくる」
「呪術は純粋な願望でもあるものだ。それはもちろん、人を狂わせてしまう。だが、純粋な願望の成就には達成感がある」
「皇帝を殺せれば、何でもいいと」
「姫さまを生き返せれば、たとえどんな存在に成り果ててでも、貴方自身の命や肉体を犠牲として差し出していたとしても、笑顔でいられたでしょうに」
「うるさい。本当に、嫌なヤツばかりだ」
「それでも、呪術については一流だと自負できる。伝授しておきましょう。たとえ、貴方が望まなくても……まあ、貴方は望むでしょうけれど。一番の願望が、消えてなくなることはない」
「知ったような顔をするな。ちゃんと、協力はしてやる」
「ノヴァーク、君も知識を身に着けておくことです。師である彼女を救えるのは、おそらく君だけだ。彼女は、基本的に、間違いを選べる女性だよ。倫理観が欠如しているんだ」
「それは、そうかもしれないね」
「失礼なガキだ。目をかけてやったのに」
「う、うん。それは、マジでありがたいけど……でも、だからこそだ」
「貴方を死なせたくないと願う者がいる。それは大きな財産だ」
「いいさ。いつか、取り込んでやる。お前たちも、文句はないだろう?帝国打倒に協力はしてやるんだ。レヴェータを神格化するリスクなんていう、おぞましい何かにも耐えて」
「嫌な道ではある。しかし、オレたちも勝たねばならんのだ」
「同じ言葉を、貴様に帰してやれる。私の願いを、忘れるな。邪魔は、するなよ」
「オレじゃなく、ノヴァークに止めてもらうさ。オレたちは、究極的なところでは君を止められないかもしれん。例えば、君が『帝国兵の命を生贄にして、ライザ・ソナーズの復活を望む』なんて真似をしようとすれば、つけ込んでしまうかもしれない。オレたちは、君の指摘をちょっとは受け入れるべきなんだろう。戦争に勝つためなら、邪悪な道ギリギリも選べる。君は基本的に悪人だ。救いたいと願えないときも、きっとオレたちにはあるさ」
「だ、だから、ノヴァーク。君も、がんばってね。お、応援するよ。どうにか、みんな納得のできる答えを得られるように」




