第四話 『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』 その千百六十五
―――相変わらずソルジェは戦闘に関しては、とても賢くなれる人物だった。
エルフの漁村の隠し方を知れば、どれだけ有益なのか。
帝国軍から見つからずに、補給の拠点を作れるかもしれない。
使い道は実に多く、とてつもなく実用的なものだった……。
「あの漁村でしか使えないわけでは、ないのだろう?」
「たしかに。秘術のひとつではありますが……ストラウス卿のお役に立てるのならば、伝えておきましょう。あの呪術は、エルフの住民たち自身の魔力を消費しているものです」
「ほう。では、戦士たちでも使えるのか?エルフでなければマズイ?呪術の魔力消費そのものは、魔術に比べれば多くないはずだよな?」
「結論から言えば、人間族の戦士であっても使えます。土地とそれなりの因縁がある者の方が、強くはなるのですが」
「何が、必要なんだ?」
「その土地で育った、穀物です。主食でもいい。あの漁村の場合は、小麦と網にかかった魚を使っていますね」
「そんなので、村ごと隠せちゃうの?すごく、便利だね!」
「それなりに有能な呪術師がいれば、難しいものではありません」
「ソルジェ兄さん、その」
「じつは、メルカも」
「ああ。存在を隠す呪術を、使っていたんだな」
「そうなんだ。たぶん、似てる呪術だよ。私たちの場合は、花だったけど」
「メルカのそれが私には察しがつかなくもないですな。とにかく。土地に因縁の深い供物、それを使う身を隠す呪術は、かなり古くからあるものです」
「これも、祭祀を使うのか?」
「左様。土地と村人の絆を、まずは強める。これがなければ、村人たちさえ村に戻ってはこれませんからな」
「選ばれた者でなければ、基本的に近づけなくなる呪術か」
「ストラウス卿の魔眼には、効きが悪いかもしれませんがね。主に視覚を狙う呪術なのです。三大属性で言えば、『風』を多く使った『空白化』の呪術……霧を、呼び出すのです。水、あるいは雲をもとにすることが多い」
「あの漁村では、海か」
「メルカでは、雲ですね。丘陵を走る雲海に、都市を隠すための呪術の霧を、それで作っていました」




