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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千百六十四


「……ふん。彼に会ったとて、何を語るべきだろうか」

「さあな。そこは分からん。だが、楽しい出会いになるはずだ」

「どうかな。姫さまとの思い出話を、彼は……もっていないのでは?」

「昔ならばともかく、帝国時代ではハーフ・エルフは肩身が狭いか」




―――ノヴァークは、そのとき落ち込んでいたらしい。

もしかして、自分はそいつの代わりなのではないかとか。

何とも自己中心的な世界観だろうか、まあ少年らしいというかね。

悔しい気持ちになってしまうのは、愛情と執着が深いからだろうか……。




―――シドニア・ジャンパーからすれば、自分は何であるべきなのか。

もっと主張したいらしいが、迷える思春期はアイデンティティを決めかねる。

恋人でもないはずだが、ただの部下やただの弟子でもない。

くやしい、そいつはただの部外者みたいなものだった……。




「彼にも、生きることが苦しい時代だな」

「オレの側に合流したぞ。オレの直々の部下ではない。今は、メイウェイの配下になる」

「メイウェイは、お前の手下だろう」

「違うさ。あいつは、いつか国を建てるような男だよ」




「厄介な火種である。とてつもなくな。『王なき土地』に、王を立てるとは。帝国でもやれなかったものだ」

「いいように考えろ。帝国以上の行いをする」

「うるさい。貴様は本当に、何を考えているのか」

「分からんか?分からんだろう。オレは君のように賢くないからな。とてつもない愚か者なのだ。ハナシが合わなくても自然なことだよ」




「それでー、シドニア・ジャンパー。あんたはさ、あの子に会いたいの?会いたくないの?私としては、会わせたくないかなって思うの。だって、あんた危険人物だもん」

「そう言われると、会ってやりたくなる」

「うわ。アマノジャクさんだ!」

「うるさい、ケットシー」




「ミア・マルー・ストラウス。覚えてくれるまで、何度だって言うつもり」

「やかましい兄妹だよ、ほんとうに」

「あはは。兄妹だって覚えてくれてるところは、普通に嬉しい」

「アマノジャクよ。アーベル・レイオーンに会いたいんだな。会わせてやるぞ」




―――ノヴァークは、不安と憤りを隠そうとした。

だが、挙動不審な視線と体の動きをソルジェに悟られている。

キュレネイにもね、でも二人は何も言ってやらなかった。

意地悪のためではなく、ノヴァークの苦悩はこの場では価値が乏しい……。




―――祭祀呪術の秘密と、最高の詐欺師の勧誘。

我々からすれば、それは思春期の恋愛だとか社会的な苦悩とか葛藤などよりも。

ずっと集中すべき題材であるのは、認めてくれても非人道性はないはずだ。

だった、ノヴァークのコンプレックスに人命は関わらないからね……。




「会うよ。そうだな。お前らに労力を使わせられるのは、嬉しいものだよ」

「性格悪いって、言われたことないかな?」

「ケットシー、私の性格はもちろん悪いぞ」

「すごい。珍しいタイプだ。自分が極悪人って認めてるなんて」




「お前らのような大量殺人者には、やれない芸当だろう」

「そうかも。その点は、少し感心すべきかもね!そこだけは、そうだ。あなたを認めてあげましょう!自分の邪悪さを認められるなんて、すごい!」

「ミアは聖なる存在だと、お兄ちゃんは知っているからな!」

「わーい!大好き、お兄ちゃん!」




―――山ほど殺人を犯したとしても、聖なる存在はブレないものさ。

これは、つまりは逆説的に正義の危なさを説けるかもしれないね。

世界で最も人を殺している概念は、どう転んでも正義だから。

ボクらはいつも正義を使って、戦争を起こして殺し合っている……。




「ろくでもない連中だ。自身を見返すべきだぞ」

「見返すと、すべきことは分かる。聖でもない邪でもない。猟兵は、正しい存在であるべきだからな」

「おぞましい理屈を、口にしている自覚を持っていろよ」

「戦士稼業はどう転んでも、確かに血に呪われている。だからこそ、多くを救う術があるなら飛びつく。プレイガスト、『村を隠遁させる呪術』についても教えてくれ。いい機会だ」





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