第四話 『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』 その千百六十三
「だが。お前も嫌だろう。レヴェータが神になど祭り上げられるのは」
「そうだな。しかし、ヤツを使うには……」
「なるほど。リスクであります。レヴェータを使った詐欺は、祭祀呪術の片棒を担ぐかもしれない」
「でも。レヴェータを祭祀呪術で神さまにするって、決まってはいないよね?」
「左様。あくまでも可能性ではある。しかし、やりかねないのは確か」
「ソルジェ・ストラウスよ、お前はそのリスクがあっても、私に詐欺をさせるか?」
「……ふむ。考えるべきところはある。だが、してもうおう」
「即決とはな。祭祀呪術で作られた神々と、殺し合いを楽しもうというのか?」
「それは楽しそうだがな。レヴェータはごめんだ」
「弱気ではないか?臆したと?」
「ヤツは飛び切りのクズ野郎だからな。オレを狙おうとはしない。何人巻き込んだとしても、一切気にしないヤツでもある。残骸だろうが、何だろうが、復活はさせたくはない」
「で、では。シャーロンさんに、う、ウワサ話を流してもらえば?その、い、今まで以上に。レヴェータを祭祀呪術で復活させれば、どんな残酷な被害が起きるか……お、おそらくですけど、ユアンダート自身も望まないのでは?」
「それぐらい、邪悪な男だったな。私が、殺してやりたかったのに。おのれ、奪った」
「ライザ・ソナーズを殺したことを恨むべきだよね。お兄ちゃんは、悪くない!」
「私はそこまで、素直に物事を判断しないんだ」
「八つ当たりだと、分かっているのに。意固地な呪術師であります」
「だが、ジャンの作戦は意外といいかもしれん。レヴェータのリスクを、ユアンダートに伝える……」
「耐えがたい屈辱でしょうか、ストラウス卿よ」
「耐えるさ。オレは、いい王を目指している。戦士たちを、無駄に死なせるつもりはない」
「ならば、ジャン・レッドウッド殿の作戦も有効でしょうな。ユアンダートとて、息子の暴走は好まない。確実にとは言えませんが、抑止にはなる」
「殺したりないヤツだが、二度と出会いたくもない」
「……プレイガスト、祭祀呪術についてのハナシを聞かせろ」
「シドニア・ジャンパー少尉、勉強熱心で嬉しくなる」
「悪用してやるつもりだからな。どいつもこいつも、殺してやる」
「しょ、少尉。やけくそにならないでってば」
「うるさい。黙っていろ、お前は師匠である私に呪いをかけた裏切り者だ」
「う、うう。それは、そうなんだけどさ……」
「皇帝ユアンダートが自身を神格化する、その方法にはどんなものがあるであります?」
「すでに多くの人々に認識され、一種の……軍事的な英雄という事実もある」
「おっちゃん、敵を認められるのはすごいことだよ」
「そうかな。そうかも、しれないね。まあ、私は……凡庸だよ。認め切れてはいない。さて、神格化について最も象徴的なものは、神殿や聖像を建てることだ」
「ああ、そうか。それはオレも、アリーチェでやっているな」
「神の作り方の、基礎ではあります。ストラウス卿ほどの呪術師がそれを指示したのであれば、アリーチェ殿も、神としての力を多く得たでしょう」
「そうだとすれば、嬉しいもんだぜ。ハーフ・エルフの女神だ。強くなってくれれば、この世界をオレの望む形で守ってくれるかもしれない」
「……悪神となるものだ。お前は、その認識をしているはずでは?」
「辛辣だが、おそらく正しいのかもしれんな。だが、オレは彼女が善良な女神だと信じる。お前も信じるべきだぞ、ライザ・ソナーズの騎士の愛娘だ」
「アリーチェ・レイオーン。バハル・レイオーン卿の、亡くなられた娘」
「知っていたか?息子もいるぞ、会いたいなら会わせてやれる」




