第四話 『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』 その千百五十九
―――ソルジェたちには、得難い知識の伝授になる。
学門として呪術を誰かから習えるなんて、非常に稀有な機会だからね。
キュレネイ、そしてククリとククルも聞いているのも大きかった。
三人とも魔術の使い手であり、双子たちは呪術の才も感じさせる……。
―――魔術としての出力以下で、仕組みとして稼働するのが呪術。
その極めて効率的な魔力の運用を、驚くほど大規模で行うのが祭祀呪術だ。
多くが伝統儀式に使用方法を隠しているけれど、プレイガストは異なる。
理論として祭祀呪術が何たるかを、しっかりと理解していた……。
「祭祀呪術を構成するために必要なものは、『世界の文脈』の把握です」
「だ、団長が言ってましたよね」
「そこら中に『流れているつながり』、みたいなものだ!!」
「……か、感覚的過ぎて、ちょっと分かりませんけど、そんなものなんですよね?」
「左様。あらゆる場所も、文脈でつながっている。これをより理解することで、祭祀呪術の性能はより上がる」
「み、見えるものですか?団長は、す、スペシャルな眼をお持ちですし」
「ジャン殿の場合であれば、嗅覚を使うべきでしょうな」
「た、確かに。『世界の文脈』って、ど、どんなニオイでしょうか?」
「動きだ。つながり、そんなもののはずだぞ!!オレも、どうも言葉にする賢さが足りてないが……」
「う、動き。ですか……」
「後々、ご理解すればいい。祭祀呪術を使わなくてはならない状況など、ないならなくてもいいのですから。敵が使ってきたとき、対応するための備えになってくれればいい」
「プレイガストは、帝国軍が祭祀呪術を使うと考えているでありますか?」
「もちろん。皇太子も使ったでしょう」
「イエス。イレギュラーな反応だと思いたいものであります。しかし、帝国軍は実利的。思えば、さっそくこのような女詐欺師も使ったわけだ」
「ふん。失敗したがな」
「彼女は『ギルガレア』に多くを頼っていた。各地の祭祀呪術や戦場で散った魂たちを導く術を組んだ。つまりは、『世界の文脈』を読み取っていたわけです」
「ふーん。つまり、『世界の文脈』を読解できると」
「祭祀呪術を構成するために必要な、莫大な魔力を呼び込む方法が見えるわけですね」
「左様。さすがは、ククリ殿にククル殿。ストラウス卿は賢い妹たちをお持ちだ」
「ミアは、別の分野でがんばるね!」
「神業を振るえば、呪術は壊せるもんだ」
「そっちを、がんばろう!」
「せ、『世界の文脈』は、つまりは道とか川とか水路みたいなものでしょうか?」
「いい比喩ですな。まさに、そのようなもの。それを見つけ出し、魔力の誘導を計画すべきです」
「こ、心がけてみますね。認識しがたい、ち、小さな魔力の流れ、みたいなものを……」
「それ以外のコツは、何でありますか?」
「『儀式の構造』を理解することです。祭祀呪術は、その名の通り神に捧げる儀式から成り立つものです。『ギルガレア』であれば、罰神としての法則性を有するもの。罰する力で、世界を捻じ曲げて『願いを叶える』。『願い通りの理想の世界に修正する』などの使い方もあるわけです」
「理想的ではない世界は、誰かにとっては罰するに値する罪深い出来損ないというわけか」
「その性質からすれば、あの罰神が起こした数々の事象も納得は行くでしょう」
「ぼ、ボクも……罰せられてのかも。ゆ、夢のなかで、過去の……悪事を、突きつけられました」
「じゃあ、神さまの種類や性質を把握していると」
「祭祀呪術の仕様が、見えてくるわけですね?」
「左様。『儀式の構造』は、流れてくる川の水をどう利用するか。ため込む、船を運ぶ、水車で穀物を砕く……力の方向性を理解するために必要なのです」




