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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千百五十五


―――ゼファーがカマキリの巨体に、噛みついた。

首をしならせながら、背負うようにそいつをぶん投げていく。

背負い投げの要領で、見事な体術だった。

空中で投げ技を完璧に行えるのは、竜と一部の鳥だけだろうね……。




―――カマキリの巨体が通り過ぎるとき、夏の太陽は遮られていた。

ソルジェは笑い、キュレネイはもちろん冷静なる無表情。

ノヴァークはそんなときでさえ、愛する少尉と信じられない呪術師を警戒する。

ククリとククルは、魔術による迎撃も想像しながら備え……。




―――ミアはキュレネイの片手に固定されたまま、目を覚ました。

魔力の回復に成功したらしい、竜騎士は竜から魔力をもらえるとか。

それは専属の契約者だけじゃないのかも、竜騎士という質の結果なのかも。

とにかくミアは目覚め、ぼーっとしながらも横目で戦況を観察し始めた……。




―――ゼファーに投げられたカマキリは、強烈な遠心力に揺さぶられつつ。

落下軌道に吸い込まれていく、一直線に地上へと向かって堕ちるのさ。

墜落はとてつもない威力、ソルジェも幼い頃から知っている。

偉大なるアーレスに、何度も竜の背から振り落とされたからね……。




―――カマキリは羽根を広げようとしたが、勢いと自身の重量に負けていた。

あの羽根が持つ特性についても、ソルジェは見抜いたようだしね。

あれは直進と上昇には優れているが、その他の方向には欠陥があるらしいよ。

竜騎士にしか分からない情報だし、ボクが言語化するのも門外漢すぎる……。




―――カンタンに言えば、『逆さまにしてぶん投げたときはほぼ浮上できない』。

竜騎士と空中戦なんて、やるものじゃないという結論に至るだろう。

飛び方の弱点なんて、もしかしたらあのカマキリ本人だって知らなかったかも。

ソルジェはそれに気づいていたよ、北方野蛮人の知性らしくないよね……。




―――しかし、どこまでも竜騎士らしくはある。

センスが知性の欠如を乗り越えて、答えを用意してしまうなんて日常茶飯事だ。

天才はバカでも務まるよ、優等生はバカじゃ無理だけどね。

地上に巨体が堕ちていく、ミアも落下について考えていたらしい……。




―――ルルーシロアに乗っていて、逆さまにされたらどうすべきか。

くるっと横回転、高さがあるなら前に回転。

最悪なのは、おそらく明確な答えを見失うことだろうと考える。

どちらでもいいから動けばいい、最悪なのは動けなくなること……。




―――カマキリは、最悪をその身で示すことになった。

飛ぼうとして羽根を動かしても、墜落の速度が増しただけ。

思考停止になってしまう、そもそも逃げ場はなかったと気づいてしまったから。

地面に恐ろしい速さで激突し、地上にその音が響いて渡る……。




―――傭兵らが早とちりして、勝利を宣言した。

だが、戦闘現場にいる誰もが敵をにらみつけたままだった。

あのカマキリは大きくへしゃげたが、それでも立ち上がっている。

飛び跳ねるような俊敏さは、ヤツの健全さを伝えるには余りある……。




「頑丈であります。壊れては、いるでありますが」

「……こっち、見れなくなってるね。アタマが、くるくる回ってる」

「ミア、目覚めたのか」

「うん。お兄ちゃん、何秒か前に……まだ、眠いけど」




―――ミアはいつものように神業を放ったよ、スリングショットの一撃さ。

カマキリの壊れた巨体が反応し、脚のひとつでそれを迎撃する。

見事なものだ、さすがは我らがミア・マルー・ストラウス。

何故そうなるのかって、それはもちろん見事な陽動になったからだよ……。




―――カマキリはしなくてもいい防御を成功させ、大きな失敗を迎える。

我らは攻撃の戦術の要を何とするか、もちろん『連携』だよ。

カマキリの巨体に、『巨狼』が飛びかかった。

噛みついて、その胴体はさらに破壊が促進していく……。




―――カマキリが怒りと、苦しみを叫び声に変えた。

だとしても、攻撃は連携を止めることなんてしない。

カマキリが破れかぶれの蹴りをジャンに放ち、完璧にかわされた次の瞬間。

ゼファーが空から降り注ぎ、左右の足爪で引き裂いた……。




「歌え!!ゼファーああああああああああああああああああッッッ!!!」

『GHAAOOOOHHHHHHHHHHHHHHHHHHッッッ!!!』




―――足元にいる分断された敵目掛け、ゼファーは『火球』を放つ。

爆発よりも、穿つ質を高めたものだ。

爆風の反射で、自分と背中にいる仲間たちを傷つける気はないからね。

触手の根が這い回ったせいで穴だらけの地下、そこに激震が走ったよ……。




『く、崩れる!!ゼファー、と、飛ぶんだ!!』

『らじゃー!!おちちゃえ、ぎるがれあのにせものめえ!!』




―――敵の残骸を蹴りつぶしながら、ゼファーは空へと戻る。

地上はその衝撃でさらに壊れて、地下への崩落が加速した。

触手の穴、トンネルだらけのそこはあまりにも弱かった。

『火球』で破壊された直後に、蹴りつけられたら大穴ぐらい開くってものさ……。




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