第四話 『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』 その千百五十三
―――復讐に駆られる者たちは、信じ難い暴走性を秘めているものだった。
合理的な判断よりも、自己破壊的な相手への攻撃を選びがちだしね。
だから全てを可能な限り監視していくのだ、ハーフ・エルフの感覚で。
ノヴァークは実に大人びた対応をしてくれる、良いチームワークだったよ……。
―――猟兵たちの連携魔術も、見事な『風』となっている。
ソルジェの考えをキュレネイとストレガの双子たちが、実現させたから。
猛烈に叩き落とすような『風』、切れ味そのものには劣ってはいるけど。
そもそも切れ味などではなく、ただ抑え込むためのものだから問題はない……。
―――地上にはジャンがいるからね、逃げ出そうとしていた獣たちを狙う狼が。
落下してくる獣たちへ、『巨狼』の姿で飛びかかって頭突きで潰す。
口のなかにある呪いの中心を、噛み潰してしまいながら。
獣たちがますますあふれたが、問題はないのさ……。
「一匹だって、逃がしたりしないよ!!」
「『風』で抑えつけるから、ジャンさん頼みます!!」
『は、はい!!お、お任せくださいっ!!』
『ぼくも、やるもーん!!』
―――空中にいる獣には、ゼファーの爪が襲い掛かった。
瞬時に切り裂き、バラバラにしてしまう。
その感触は実際の獣のそれに似ていたようで、血しぶきだって出ていたようだ。
空中を赤く染めながら、日差しに溶ける霧みたいに消えていったようだけどね……。
―――触手たちの動きは、劇的に悪くなりながらもゼファーを狙う。
それらの全てが、強烈な羽ばたきと連動するように動き爪の蹴りに刻まれた。
竜の本能的な反射を使った、鋭い動きの数々だ。
ノヴァークの体調に悪影響はあるかもしれないものの、ここが勝負所だからね……。
「ノヴァーク、死ぬなよ!!すぐに、決めてやるぞ!!」
「た、頼むぜ……ッ」
「団長、敵に動きがあるであります」
「おう。オレにも見えている。こいつは……」
「戦力の集中であります。触手の群れを、呼び込んだ」
―――無数の触手が、この決戦の場に集まってくる。
すべての包囲、傭兵らと交戦していた触手の群れが『逆流』していた。
もはや生贄を求めるための戦いすら、継続が困難だったわけだし。
向こうもやはり賢い戦術的判断があった、敵にも正念場なのさ……。
―――地面をボコボコと破壊しながら亀裂となって、それらは地下を走る。
地表に浮かび上がりながら、古木の地下茎と一体化した触手の群れが現れた。
それらは昆虫めいた羽根を持っていて、半ば不浄もしている。
既視感はあった、ギルガレアの眷属の一体に似ていた……。
―――肉厚なカマキリといったところか、古木の根を鎧代わりにまとっている。
不定形に躍動しているのは、こいつの本性が固体と言い難いからかもしれない。
あるいは急いで作り過ぎたせいで、まとまり方も与えてもらっていないのか。
古木の根の装甲の隙間からは、他の眷属の頭部が浮かび上がっては消える……。
「根っこの間から、動物たちの頭部で生えてるね!!」
「黒い泥沼で溺れているような……あの動物たちや、昆虫の頭部も……ギルガレアとやらの眷属でしょうか」
「その通りだ。あれ一体に、全てを集約しようとしている。楽しい判断だな!!」
『うん!!そらとぶつよいてきは、だいかんげいだー!!』
―――ゼファーの闘争本能を昂らせるのは、やはり空中の敵なのかも。
『耐久卵の仔/グレート・ドラゴン』の宿命かな、竜を倒すのが本質の竜だ。
空を飛ぶ強い敵に、本能的に焦がれてしまうのが我らのゼファーだった。
竜の鱗が悦びに震え、リエルが『愛しい』と表現する『笑顔』を浮かべる……。
『あのえものは、ぼくのものだ!!』




