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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その千百四十六


―――キュレネイの言葉が、シドニア・ジャンパーには刺さっていた。

ノヴァークにはそれが分かっていたよ、彼女たちには共通点があるらしいと。

知的でクールで、どちらも主を失った地獄の痛みを持っている。

完全な説得は不可能かもしれないけれど、別にそれは問題にならないかも……。




―――猟犬の呪いで、自殺は出来ないわけだしね。

そもそもソルジェが嫌いかもしれないが、レヴェータはその十倍は嫌いなはず。

『世の中の流れ』というものは大きく、それに逆らう術は天才詐欺師にもない。

完全な自由を得られなかったとしても、復讐の機会だけは与えられる……。




「……ストラウス卿。祭祀呪術が、弱まっていますぞ」

「皆がいい戦いをしてくれているからな!当然だ!!」

「傭兵らの意地のおかげで、あれは作戦を変えつつあるように見えます」

「分かっている。オレたちに、集中しているようだな。つまり―――」




「イエス。ジャン、出番であります。さっきのプランを今度こそ。ゼファーに触手を引き付けておいて、ジャンが『呪いの中心』を攻めるであります」

「わ、分かりました。いつでも、やれます。あの触手には、二度と吞み込まれたりしません。だ、団長。信じてください」

「当然、信じる。猟兵がやれるというのなら、やれるのだ」

「は、はい!!」




「最接近した後、左右に分かれるぞ!!オレたちに食いついてくれるはずだが……逆の場合は、オレたちが本命を落とす!!」

「ジャン、単独行動であります。状況判断を間違わないように」

「わ、分かってます。やれます!あ、あいつに呑まれて、学んだことは多いんですから」

「ククク!ケガの功名というものが、あったらしい!!後で、詳しく聞かせてもらうぞ!!だが、今は……作戦、開始だ!!」




『せっきんするよ!!あいつを、ぼくにひきつける!!』

「ジャン!!今だ!!」

「『風』で援護してやるであります。降りたら、そのまま直進」

「は、はい!!』

「ご武運を、ジャン・レッドウッド殿」




―――ゼファーが飛翔の軌道を、左に向けて大きく変えた。

触手どもはその陽動に、疑いたくなるほど素直に誘導されてしまう。

突撃して来ると判断していたせいで、過度なまでの迎撃と追撃を行ったのさ。

おかげでゼファーの背から飛んだジャンに、反応するタイミングが遅れる……。




『て、敵の密度を、考えるんだよね!!いいカンジで、ぜ、ゼファーに誘われてる。いや、ゼファーの技巧だよ。脅しと、動きで、敵も含めて全部操ったんだ……ッ。さ、さすが過ぎて、嫉妬も出来ない』




―――『巨狼』の化けながら、ジャンは地上に着地する。

とてつもない衝撃が走ったけれど、まったく問題にならない。

くすぐったい程度のダメージしか、この落下にはないんだよね。

それゆえに、即座に突撃を開始するんだ……。




「ジャンさん、やっぱり、とんでもなく速いや」

「うらやましい速度です。馬よりも、はるかに速く走れるなんて」

「団長、こちらに敵の八割は食いついたであります。残りの二割が、ジャンに向かって戻っていく」

「二割なら、ジャンの邪魔にもなりそうにないな!!」




「イエス。敵の群れを、ストレッチ出来た」

「チーズみたいに伸ばしてやったぜ。密度は、すっかりと薄まっている」

『えんご、しよう!!のこりのにわりも、ぼくが、さそってやる!!』

「いいアイデアだ!!いくぞ、ゼファー!!」




―――ゼファーは青空のなかで、大きく右旋回をした。

それをしつつ高度も落とし、触手どもが自分に集まるように誘っている。

無数の触手どもは意志統一が取れ過ぎているかも、少なくとも軍隊よりは。

統率が取れ過ぎて、全員が似た反応をすることをゼファーは見破っている……。




―――敵の射程圏内に、自ら飛び込んでいくその姿に。

敵は狂喜乱舞の飛びつきを、最大限に加速させる。

まるでそれらは赤黒い影、地上を這うように走った後で。

天を衝くように伸び上がる軌道は、恐ろしく速かった……。




『もんだいない!!しょうめんから、ぶちぬいてやる!!』





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